この記事の流れ(全5章)
11 歳で買った 3 株を、値上がりの途中で手放した。少年は悔しがった。それから 84 年、ウォーレン・バフェットは二度と急がなかった。
1965 年に彼が経営権を握ったバークシャー・ハサウェイは、つぶれかけの繊維会社だった。
そこから 2025 年までの 60 年で、株主のお金は年率 19.7% で増えた。米国を代表する株価指数である S&P 500 は、同じ期間で年率 10.5% だった。
元手は、保険料の預り金
バークシャーの正体は投資信託ではない。保険会社の集まりである。
自動車保険のガイコ、保険会社向けの保険を引き受けるジェネラル・リー、そしてナショナル・インデムニティ。1967 年に最初の保険会社を買ってから、この骨格は変わっていない。
保険料は、事故が起きて支払うその日まで手元に残る。バフェットはこの待ち時間に目をつけた。預かったお金で株や会社を買い、しかも利息は払わない。
2025 年末で、この預り金は $176B ある。10 年前の $88B から倍に増えた。
普通の投資家は、自分の貯金の範囲でしか買えない。バフェットは「返す期限のない元手」を毎年ふくらませながら買ってきた。
3 株の少年が、95 歳の会長になるまで
1930 年、ネブラスカ州オマハに生まれる。父は株式仲買人で、のちに下院議員になった。
1942 年 3 月、11 歳で初めて株を買う。シティ・サービスという会社の株を、1 株 $38 で 3 株。配当が先に受け取れる優先株だった。
下げに耐えたあと、少し戻ったところで売った。その株はのちに $202 まで上がる。待てなかった記憶が原点になった。
コロンビア大学ではベンジャミン・グレアムに学ぶ。価値より安く買って余裕を残す考え方を、ここで身につけた。
1956 年にオマハで自分の運用組合を作り、1965 年にバークシャーの経営権を握る。
- 1930ネブラスカ州オマハで生まれる
- 194211 歳で初めて株を買う(シティ・サービス優先株を 3 株)
- 1951コロンビア大学でベンジャミン・グレアムに師事
- 1956オマハで自分の運用組合を立ち上げる
- 1965繊維会社バークシャー・ハサウェイの経営権を握る
- 1967保険会社ナショナル・インデムニティを買収預かったお金で投資する形が始まる
- 1972シーズキャンディーズを $25M で買い、ブランドの値打ちに気づく
- 1988コカ・コーラ株を買い始める
- 2008金融危機のさなかにゴールドマン・サックスへ $5B 出資
- 2016アップル株を買い始める長く避けてきたハイテクへ
- 2020日本の総合商社 5 社に出資
- 2023相棒チャーリー・マンガーが 99 歳で死去
- 202560 年で経営を退き、グレッグ・アベルへ引き継ぐ
- 202695 歳、会長として株主に手紙を書き続ける
価格はあなたが払うもの。価値はあなたが受け取るもの
暮らしは今も地味だ。1958 年に買ったオマハの家に住み続け、朝はマクドナルドで済ませる。
長年の相棒だったチャーリー・マンガーは、2023 年に 99 歳で亡くなった。「安い会社より、いい会社を妥当な値段で」と説き続けたのはこの人である。
買い方は、三度変わっている
最初は「吸い殻拾い」と呼ばれる買い方だった。潰れかけでも、解散して資産を売れば時価総額を上回る会社を選ぶ。
マンガーに説得されて方針が変わる。ブランドと稼ぐ力のある会社を、そこそこの値段で買って持ち続ける形へ移った。
1972 年のシーズキャンディーズが転機になる。値上げしても客が離れない会社は、安さより価値があると分かった。
三度目は 2016 年。長く避けてきたハイテク株で、アップルを買い始めた。
2025 年末でもアップルは最大の持ち株で、2 位はアメリカン・エキスプレスだ。
日本の総合商社 5 社への出資も、この時期の判断である。買い増しを重ねた取得額が、5 年で 2 倍以上の値打ちになった。
積み上がった現金と、次の経営者
2025 年末、手元の現金と短期国債は $373B になった。1 年前の $334B からさらに積み上がっている。
理由は単純で、買いたい値段の会社が見つからなかったからだ。バフェットは高い買い物を嫌う。
ただし現金は利息しか生まない。株主から見れば「働いていないお金」でもある。
2026 年 1 月、経営はグレッグ・アベルに渡った。エネルギー子会社を率いてきた人で、バフェットは会長として残る。
アベルは最初の株主宛の手紙で、自腹で $15M 分の株を買ったと明かした。2026 年の自分の報酬は自社株買いに充てるという。21 か月止めていた自社株買いも再開させた。
現金は動き始めている。2026 年 3 月末に過去最大の $397.4B まで積み上がった後、6 月末には $365.5B へ減った。4〜6 月だけで自社株買いに $4.5B、海外企業への出資は累計約 $43B に達した。
市場はカジノのようになっている
株を選ぶ判断そのものは、まだバフェットとテッド・ウェシュラーの手に残っているとみられている。会長は高いと言い、CEO は買い増す。同じ会社の中に、二つの判断が並んでいる。
株主として、どこを見るか
バフェットが 60 年やったことは、突き詰めると二つしかない。返す期限のないお金を集めること。値段が価値を下回るときだけ買うこと。
派手な賭けは一度もない。毎回「動くのが遅い」と言われ、数年後に正しかったと分かる形が続いた。
だからこの会社を見るときは、四半期の利益より現金の残高を追うとよい。減っていれば、アベルが何かを買った合図になる。
そしてもう一つ。バフェットの最後の仕事は、投資ではなく引き継ぎだった。その答え合わせは、彼がいなくなった後に始まる。
出典:
- Berkshire Hathaway Inc. 2025 Annual Report — https://www.berkshirehathaway.com/2025ar/2025ar.pdf
- Berkshire Hathaway Inc. 2025 年 株主への手紙(グレッグ・アベル) — https://www.berkshirehathaway.com/letters/2025ltr.pdf
- SEC EDGAR: Berkshire Hathaway Inc. (CIK 0001067983) — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001067983&type=10-K
- CNBC「All the highlights from Berkshire CEO Abel's first shareholder letter」 — https://www.cnbc.com/2026/03/01/all-the-highlights-from-berkshire-ceo-abels-first-shareholder-letter.html
- CNBC「Warren Buffett, not Greg Abel, appears to still be calling the shots on stocks」(2026 年 8 月 22 日) — https://www.cnbc.com/2026/08/22/warren-buffett-not-greg-abel-appears-to-still-be-calling-the-shots-on-stocks.html
- CNBC「Abel puts a big chunk of Berkshire's cash to work」(2026 年 8 月 9 日) — https://www.cnbc.com/2026/08/09/abel-puts-a-big-chunk-of-berkshires-cash-to-work.html





