本文へ移動
ジョージ・カーツ
George Kurtz
CrowdStrike[CRWD]
時価総額 $57.8B創業者

世界を止めた、守る側の人

ジョージ・カーツGeorge Kurtz

共同創業者・CEO生年 1970米国・ニュージャージー州パーシッパニー
2026.07.146 分で読める内容確認 2026.08.26

会計士から出発し、企業を守るクラウドストライクを起こした。2024年、自社が配った更新が世界のパソコンを止める。詫びと作り直しを経て、売上は障害の前後で一度も減っていない。

サイバーセキュリティ連続起業耐久レース

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
46
成長優先派

売上は伸ばせるが、利益率は揺れる。

直近 8 年の数字より
売上の伸び90
利益率の規律0
資本配分の規律48
売上 平均伸び
+54.6%±25.0pp
営業利益率
-15.5%±17.1pp

ジョージ・カーツ 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01その朝、無い場所に手を伸ばした
  2. 02客が逃げなかった理由
  3. 03会計士が、追う側に回るまで
  4. 04赤字のまま、現金が積み上がる
  5. 0524時間、車を降りない

守る側の人間が、ある朝、世界を止めた。ジョージ・カーツが起こした会社の見張り役は、社会の配管の奥深くに埋まっていた。だから一度の食い違いだけで、空港も銀行も病院も同時に詰まった。

数字で読む
年間の売上
$4.81B
2026年1月期
契約が続く収入
$5.51B
2026年4月末、1年で +24%超
止まった端末
約850万台
2024年7月19日
本業で入った現金
$1.61B
会計上は赤字のまま
01

その朝、無い場所に手を伸ばした

2024年7月19日の早朝、クラウドストライクは自社ソフトに小さな更新を配った。その名をチャネルファイル291という。

食い違いは、たった1つ分だった。中身を点検する仕組みは21個の欄を数えていた。実際に読み取る側は、20個しか用意していなかった。

21個目を読もうとした瞬間、ソフトは無い場所へ手を伸ばす。ウィンドウズは自分を守るために停止する。青い画面のまま、二度と立ち上がらない。

あの朝の連鎖は、たった4段だった
更新を配る
全端末へ一度に
欄の数が合わない
点検は21個、読み取りは20個
無い場所を読む
端末が自分を止める
社会が詰まる
空港・銀行・病院・放送
会社が公表した原因分析より。マックとリナックスの端末は影響を受けていない

止まった端末は約850万台。マイクロソフトの集計では、世界のウィンドウズ端末の1%にも満たない数だった。

それでも搭乗手続きが止まり、送金が止まり、病院の受付が止まった。ごく一部の端末が、社会の要のところに座っていたからだ。

カーツは非を認め、原因の分析を外に公開した。配り方も作り直した。全員へ一度に配るのをやめ、少しずつ広げ、受け取る時期を顧客が選べるようにした。

もちろん全員が許したわけではない。デルタ航空は $500M の損害を主張して提訴し、審理は今も続いている。

02

客が逃げなかった理由

普通なら、ここで顧客は去る。だが去らなかった。売上は障害の前後で、一度も減っていない。

障害をまたいでも、売上は折れなかった
2024年1月期$3.06B
2025年1月期$3.95B
この期の7月に障害
2026年1月期$4.81B
障害から1年半後
米国の証券当局へ出した年次報告より。この会社の決算期は1月末で締める

理由は売り方にある。客が入れるのは、端末に住み着く小さな見張り役ひとつだけだ。集めた情報は一度で済み、あとは機能を足すたびに使い回される。

まずパソコンの防御から入り、クラウド、社員の身元確認、攻撃者の情報へと広げていく。使う機能が増えるほど、引き剥がす手間も増える。

契約社の半数が6つ以上の機能を使っている。8つ以上も24%にのぼる(小規模向けの簡易版を除いた数字)。この積み上がりが、2026年1月期末の契約額を $5.25B まで押し上げた(4月末では $5.51B)。

障害を大きくしたのも、客を引き止めたのも、同じ性質である。深いところに入り込んでいる、ということだ。

詫びとして、会社は割引の詰め合わせを配った。新しく積み上がるはずの契約額を、およそ $60M 削る見込みだと自ら公表している。

03

会計士が、追う側に回るまで

1970年、ニュージャージー州の郊外に生まれる。小学生でコモドールという家庭用パソコンに触れ、自分で掲示板を動かす少年だった。

ところが大学の専攻は会計で、最初の肩書きは公認会計士である。帳簿よりも、コンピュータに空いた穴のほうに惹かれた。

やがて会計事務所の防御部門へ移る。攻撃者の手口を1冊にまとめた『Hacking Exposed』は、守る側の教科書として長く読み継がれた。

1999年に自分の会社ファウンドストーンを起こし、2004年にマカフィーへ売る。そのまま残り、技術の責任者を務めた。

  1. 1970
    ニュージャージー州で生まれる
  2. 1999
    『Hacking Exposed』を共著、ファウンドストーンを創業
  3. 2004
    ファウンドストーンをマカフィーへ売却
  4. 2009
    マカフィーの技術責任者に就任
  5. 2011
    仲間2人とクラウドストライクを創業
  6. 2019
    ナスダックに株式を公開
    2019年1月期の売上は $250M
  7. 2024
    配信した更新で世界的な障害を起こす
  8. 2026
    売上 $4.81B、契約が続く収入 $5.25B

2011年、仲間2人と今の会社を起こす。ここで彼は、ウイルスを1つずつ潰す発想を捨てた。

彼らが抱えているのは、ウイルスの問題ではない。敵という問題だ

ジョージ・カーツ

ウイルスは使い捨ての道具にすぎない。追うべきは、その裏で動く人間の振る舞いだ。世界中の端末から兆候を集めて突き合わせる設計は、ここから生まれた。

04

赤字のまま、現金が積み上がる

この会社の決算書は、初めて見ると戸惑う。売上は $4.81B まで伸びたのに、会計のルール上は $162M の赤字なのだ。

ところが本業で入ってきた現金は $1.61B ある。赤字の会社の財布に、1年で $1.6B 近くが増えた計算になる。

からくりは社員への報酬にある。現金の代わりに自社の株を渡すと、費用としては計上されるが、財布からは何も出ていかない。

その額は $1.10B。赤字の $162M を軽く上回る。

代わりに株数が増え、既存の株主の取り分は少しずつ薄まる。だから黒字か赤字かだけでなく、現金と株数の両方を見るのが、この手の会社の読み方になる。

05

24時間、車を降りない

カーツにはもう一つの顔がある。プロの耐久レーサーだ。

2026年1月、デイトナ24時間レースで、彼の乗る車が試作車の区分を制した。1周目の接触から立て直しての勝利だった。

アジアン・ル・マンでも2度、区分の王座に就いている。長丁場を、事故を避けながら最後まで走り切る競技である。

仕事の形もよく似ている。一発の速さではなく、止まらずに走り続けること。障害の朝も、彼は車を降りなかった。

決算も同じ調子で走ってきた。6月発表の四半期は8期連続で市場予想を上回っている。8月26日の次の決算が、その記録を伸ばせるかに注目が集まる。

守りを売る会社は、自分の守りも毎日採点される。この株を持つとは、防御の予算が削られないことに賭けると同時に、二度目の朝が来ないことにも賭けるということだ。

出典:

  • CrowdStrike Holdings, Inc. Form 10-K (fiscal 2026), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001535527&type=10-K
  • CrowdStrike「External Technical Root Cause Analysis — Channel File 291」 — https://www.crowdstrike.com/wp-content/uploads/2024/08/Channel-File-291-Incident-Root-Cause-Analysis-08.06.2024.pdf
  • Microsoft「Helping our customers through the CrowdStrike outage」 — https://blogs.microsoft.com/blog/2024/07/20/helping-our-customers-through-the-crowdstrike-outage/
  • CrowdStrike IR「Fourth Quarter and Fiscal Year 2026 Financial Results」 — https://ir.crowdstrike.com/news-releases/news-release-details/crowdstrike-reports-fourth-quarter-and-fiscal-year-2026
  • CrowdStrike IR「First Quarter Fiscal Year 2027 Financial Results」(2026年6月3日) — https://ir.crowdstrike.com/news-releases/news-release-details/crowdstrike-reports-first-quarter-fiscal-year-2027-financial
  • IMSA「Kurtz Completes IMSA Michelin Endurance Cup Win Set at Rolex 24 At Daytona」 — https://www.imsa.com/news/2026/02/25/kurtz-completes-imsa-michelin-endurance-cup-win-set-at-rolex-24-at-daytona/
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。