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アルバート・ブーラ
Albert Bourla
Pfizer[PFE]
時価総額 $162.6Bプロ経営者

9か月と言い切った獣医

アルバート・ブーラAlbert Bourla

会長・CEO生年 1961ギリシャ・テッサロニキ
2026.07.035 分で読める内容確認 2026.08.26

ギリシャの獣医が製薬最大手の頂点に立ち、就任2年目にコロナワクチンを9か月で世に出した。売上は$101Bまで膨らみ、3年で$62Bへ戻った。いまは買収でつくり直した棚の答え合わせをしている。

製薬ワクチンコロナ

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
47
株主目線の番人

9 年連続増配の規律。

直近 10 年の数字より
売上の伸び0
利益率の規律50
資本配分の規律91
売上 平均伸び
+7.0%±35.7pp
連続増配
9 年
配当年比率
100%

アルバート・ブーラ 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全4章)
  1. 01「18か月」を突き返した日
  2. 02テッサロニキの獣医が、5か国を渡って頂点へ
  3. 03稼ぎ頭が消えた三年
  4. 04いま何を見ておけばいいか

2020年3月、社内が出した工程表には「18か月」と書いてあった。アルバート・ブーラはそれを突き返し、10月までに出せと言った。最高経営責任者になって、まだ2年目のことである。

その号令の結果は、決算にそのまま出た。ファイザーの売上は2年で2.5倍になり、そこから3年かけてほぼ元の高さへ戻った。

売上は一度だけ跳ね、そして戻った
2019年 — 就任した年$40.9B
2022年 — 頂点$101.2B
会社の歴史でいちばん大きい年
2025年 — 直近の通期$62.6B
通期の売上。金額は米国証券取引委員会に出した年次報告から。2022年の山は、コロナのワクチンと飲み薬が半分以上を作った

山も谷も、同じ一人の在任中に起きた。だからブーラの評価は、山の高さではなく谷のあとに何を積んだかで決まる。

数字で読む
CEO在任
7
2019年1月から
入社から
33
1993年、動物薬の部門で
時価総額
$163B
2026年8月時点
配当利回り
6.0%
米国の大型株では高い部類
01

「18か月」を突き返した日

2020年3月19日、ブーラは開発チームに10月までという期限を告げた。当時の常識では、新しいワクチンは18か月かかるとされていた。

社内で繰り返したのは、短い一言だったという。「時間は命だ」である。

時間は命だ

アルバート・ブーラ

期限を守るために、ふつうの製薬会社ならやらない手を重ねた。どれも承認が下りなければ費用がまるごと損になる進め方である。

ふつうはやらない手を重ねて、9か月に縮めた
開発費を自前で持つ
米政府の研究資金を受け取らなかった
治験と同時に工場
承認前に製造ラインを建てた
超低温の箱を自作
-70°C前後を保ったまま世界へ運ぶため
12月11日、許可
米国で最初のコロナワクチンに
共同で開発したのはドイツのビオンテック。ワクチンの名前はコミナティ

翌2021年末には、飲むタイプの治療薬パクスロビドも緊急使用の許可を得た。ワクチンと薬の両方を持つ会社になった。

02

テッサロニキの獣医が、5か国を渡って頂点へ

1961年、ギリシャ第二の都市テッサロニキに生まれた。両親はホロコーストを生き延びたユダヤ人で、その記憶が家の中にあった。

学んだのは医学ではない。アリストテレス大学の獣医学部を出て、生殖の生物工学で博士号を取っている。

1993年、ファイザーのギリシャ法人に入る。配属は人の薬ではなく、家畜やペットの薬を扱う部門だった。

  1. 1961
    ギリシャ・テッサロニキに生まれる
  2. 1993
    ファイザーのギリシャ法人に入社、動物薬の部門へ
  3. 2014
    ワクチン・がん・一般薬を束ねる事業の責任者に
  4. 2018
    社内の実務全体を統べる立場(最高執行責任者)へ
  5. 2019
    最高経営責任者に就任、入社から26年
  6. 2020
    3月に「10月まで」と号令、12月に米国で緊急使用許可
  7. 2021
    飲み薬パクスロビドも緊急使用許可
  8. 2022
    売上が過去最高の$101.2Bに
  9. 2023
    売上$59.6Bへ半減、経費の削減計画を始める
  10. 2023
    がん治療のシージェンを$43Bで買収
  11. 2025
    肥満治療のメツェラを買収
  12. 2026
    売上は$62B前後で横ばい、特許切れの波が近づく
  13. 2026
    8月、財務責任者が退任。自ら$1M分の自社株を買い増す

そこから5か国を渡り歩き、ワクチンとがんの事業を束ねる役職を経て、2018年に社内の実務全体を預かる立場になる。翌2019年1月、頂点に就いた。

製薬大手の経営者に獣医学の博士は珍しい。同時に、入社から26年かけて社内を上がってきた生え抜きでもある。

03

稼ぎ頭が消えた三年

2022年の売上$101.2Bのうち、半分以上をワクチンと飲み薬の2製品が作っていた。裏を返せば、接種の波が引けば同じだけ消える構造だった。

実際に引いた。2023年の売上は$59.6B、純利益は$2.1Bまで縮んだ。株価はコロナ期の高値の半分以下で止まったままだ。

ブーラがまずやったのは経費の削り込みである。2023年末に始めた削減の目標額は、いまでは2027年までに$7.7Bまで広がった。

そのうえで、次の稼ぎ手を買いに出た。使った金額は、コロナの2年で積んだ利益とほぼ同じ大きさになる。

コロナで積んだ利益は、そのまま買い物に消えた
2021〜2022年の純利益$53.4B
2年ぶんの合計
シージェン買収 — 2023年12月$43B
がん治療の会社
メツェラ買収 — 2025年11月約$10B
肥満治療。成功報酬を含む
純利益は年次報告から。買収額は会社が公表した企業価値ベースで、支払いは現金と借入の両方。図は金額の大きさを並べたもの

シージェンが持っていたのは、がん細胞にだけ薬を届ける造りの製品群だった。買収でファイザーのがん領域の開発計画は倍に増えた。

04

いま何を見ておけばいいか

直近の数字は悪くない。2026年4〜6月の売上は$15.0Bで前年の同じ時期から3%増え、通期の見通しも引き上げられた。

伸びを作っているのは買ってきた側だ。シージェン由来のパドセブ、膀胱など尿路のがんに使う薬が、この四半期に2割を超えて伸びた。

特許の期限が、そろそろ来る

不安は特許にある。主力薬の権利は2020年代の終わりにかけて切れていき、その穴を新しい棚が埋められるかはまだ分からない。

肥満のほうはさらに手前の段階だ。メツェラの候補薬はこれから大規模な試験に入る局面で、結果が出るのは数年先になる。

社内にも動きがあった。財務責任者のデイブ・デントン氏が8月15日付で退任し、後任探しの間はセシル・ゲガン氏が代行する。ブーラは8月4日の決算会見でも、2022年以降に買収へ投じた$80Bを弁護し、手元資金でさらに小型の買収を続けると述べた。同じ週、自身も$1M分の自社株を買い増している。

だからこの会社を見るときは、四半期の売上そのものよりがんと肥満の2つの棚を追うほうが早い。パドセブの伸びと、肥満薬の試験がどこまで進んだかである。

9か月の号令は、もう履歴書の中の話になった。残っているのは、その時に得た金で買った棚から次の柱を出せるかどうかだけである。

出典:

  • Pfizer Inc. 2026年 第2四半期 決算発表 — https://s206.q4cdn.com/795948973/files/doc_financials/2026/q2/Q2-2026-PFE-Earnings-Release-FINAL.pdf
  • Pfizer Completes Acquisition of Seagen(2023年12月14日) — https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-completes-acquisition-seagen
  • Pfizer Completes Acquisition of Metsera(2025年11月13日) — https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-completes-acquisition-metsera
  • Dr. Albert Bourla, Pfizer Leadership — https://www.pfizer.com/people/leadership/executives/dr-albert_bourla
  • 通期の売上・純利益は米国証券取引委員会 EDGAR の年次報告(CIK 0000078003) — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0000078003&type=10-K
  • Pfizer Announces Chief Financial Officer Transition(2026年6月18日) — https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-announces-chief-financial-officer-transition
  • Pfizer CEO defends $7B bolt-on M&A strategy as peers rush to buy, BioSpace(2026年8月) — https://www.biospace.com/business/pfizer-ceo-defends-7b-bolt-on-m-a-strategy-as-peers-rush-to-buy
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