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ブライアン・モイニハン
Brian Moynihan
Bank of America[BAC]
時価総額 $496Bプロ経営者

掃除から始めた銀行家

ブライアン・モイニハンBrian Moynihan

会長・CEO生年 1959米国・オハイオ州マリエッタ
2026.06.207 分で読める内容確認 2026.08.26

リーマン危機の後始末ごと米2位の銀行を引き受け、16年で立て直した。訴訟を払い切り、経費を削り、いまは年 $30B を稼ぐ。派手さのなさを、そのまま経営の型にした人。

金融銀行立て直し

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
71
株主目線の番人

6 年連続増配の規律。

直近 10 年の数字より
売上の伸び79
利益率の規律50
資本配分の規律83
売上 平均伸び
+3.5%±4.1pp
連続増配
6 年
配当年比率
100%

ブライアン・モイニハン 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全4章)
  1. 01弁護士が、就任1年目に赤字を出す
  2. 02片づけて、削って、それから配る
  3. 03利益 $30.5B は、4つの事業から出ている
  4. 04次の人へ、何を渡すのか

2010 年 1 月にブライアン・モイニハンが引き継いだのは、銀行というより未払いの請求書の束だった。訴訟、焦げついた住宅ローン、政府との交渉。16 年後、その会社は年 $30B を稼いでいる。

数字で読む
CEO 在任
16
2010 年 1 月から
2025 年の利益
$30.5B
過去最高
総資産
$3.4T
米国 2 位
時価総額
$500B
JPモルガンの半分
01

弁護士が、就任1年目に赤字を出す

1959 年、オハイオ州マリエッタ生まれ。8 人きょうだいの 6 番目に育った。ブラウン大学では歴史を専攻し、ラグビー部の共同主将を務めている。

進路は法律だった。ノートルダム大学のロースクールを出て、企業向けの弁護士になる。銀行で働き始めたのは 1993 年、34 歳のときである。

勤め先はボストンの地方銀行フリートで、肩書きは法務の副責任者だった。2004 年にその銀行がバンク・オブ・アメリカに買われ、そのまま大手の幹部になる。

  1. 1959
    オハイオ州マリエッタで生まれる
  2. 1981
    ブラウン大学を卒業、専攻は歴史
  3. 1984
    ノートルダム大学ロースクールを修了、企業法務の弁護士に
  4. 1993
    ボストンの地方銀行フリートに法務担当として入る
  5. 2004
    その銀行がバンク・オブ・アメリカに買われ、大手の幹部へ
  6. 2008
    カントリーワイド買収の後始末とメリルリンチ統合を担当
  7. 2010
    50 歳で最高経営責任者に就任、初年度は赤字
  8. 2014
    司法省と $16.65B で和解、同年に会長を兼ねる
  9. 2018
    自動応答の相棒エリカを投入
  10. 2024
    母校ブラウン大学の理事会を率いる役にも就く
  11. 2025
    純利益 $30.5B と過去最高、後継候補 3 人を並べる

2010 年 1 月、50 歳で最高経営責任者(CEO)に就く。前任のケネス・ルイス氏が住宅ローン問題の責任を問われて退いた直後だった。

引き受けたのは、前任者が 2008 年に買った 2 社の後始末である。住宅ローン最大手のカントリーワイドと、証券大手のメリルリンチ。どちらも危機の震源に近かった。

朝起きて 2008 年のカントリーワイド買収を前向きに考えられる日は、正直そう多くない

ブライアン・モイニハン(2011 年、投資家向け電話会議)

就任 1 年目の決算は $2.2B の赤字だった。買った事業の価値を思い切って切り下げ、損を先に確定させたためである。

02

片づけて、削って、それから配る

モイニハン氏の 16 年は、順番の話として読むと分かりやすい。彼はこの 4 段を、飛ばさずに踏んだ。

16年かけて踏んだ4つの段
損を先に出す
2010 年は $2.2B の赤字
訴訟を終わらせる
2014 年に $16.65B で和解
経費を落とす
年 $8B を削る計画
株主に配る
2025 年は $40B の買い戻し枠
どれも派手さはない。ただし順番を入れ替えなかったことが、この人の一番の特徴になっている

和解の額は銀行の歴史でも異例だった。2014 年 8 月、司法省に $16.65B を払うことで決着する。米政府が 1 社から取った民事の和解では過去最大とされた。

問われたのは、危機の前に売った住宅ローン関連の証券である。中身の質が落ちていたことを買い手に伝えていなかった、というのが政府側の主張だった。

支払いと並行して、経費に手を入れる。2011 年に始めた社内改革は年 $8B の削減を掲げ、およそ 3 万人分の職を減らす計画を立てた。

社内で「新しいバンク・オブ・アメリカ」と呼ばれたこの改革は、期限より早く 2014 年に目標へ届く。買収で膨らませるのではなく、費用を 1 件ずつ落とす仕事だった。

そして 2025 年、会社は $40B の自社株買い枠を決め、配当も引き上げた。稼いだお金を株主へ戻す段まで、ようやく来たことになる。

03

利益 $30.5B は、4つの事業から出ている

銀行のもうけ方は単純だ。預かったお金を貸したり運用したりして、払う利息より高い利息を受け取る。この差が本業の稼ぎになる。

2025 年のバンク・オブ・アメリカは、この差だけで $60B を得た。手数料などを足した収益は $113B、純利益は $30.5B。どちらも過去最高である。

2025年の純利益は、どこで稼いだものか
個人向け銀行$12.0B口座・カード・住宅ローン法人向け銀行$7.8B融資と決済市場部門$6.1B債券や株の売買資産運用$4.7Bメリルの窓口
個人向けが 4 割弱を占める。金利が動くと真っ先に効くのもここで、この銀行の業績が金利に敏感な理由になっている

最大の柱は、個人の口座やカードを扱う部門だ。全米に支店を持ち、集まる預金の量そのものが競争力になっている。

裏返せば弱点も同じ場所にある。金利が下がる局面では受け取る利息が細り、預金が多いほど影響も大きく出る。

勢いは2026年に入っても続く。4〜6月期の純利益は$9.1Bで前年同期比27%増、株式売買の収益は70%増えた。四半期ごとの増収は17期連続になる。

04

次の人へ、何を渡すのか

2025 年 9 月、会社は 3 人の幹部を横に並べた。個人・法人部門を率いるディーン・アサナシア氏と、市場部門のジム・デマーレ氏が共同社長になる。

財務責任者のアラステア・ボースウィック氏も権限を広げた。次の CEO はこの 3 人から出る、という読み方が市場では通っている。

ただし本人は、2020 年代の終わりまで続けると述べた。席を急いで渡す気配はない。

残っている宿題もはっきりしている。スマホの中だけで完結する新しい金融会社が若い世代を取り込み、支店の多さが強みでなくなる日が近づいている。

対抗策の一つが、2018 年に出した自動応答の相棒「エリカ」だ。利用者はおよそ 5,000 万人、やり取りは累計 30 億回を超えた。

それでも若い層をどこまで引き止められるかは、まだ答えが出ていない。

値上がりが急な時ほど、貸す基準を少しだけ締める。これは警告弾だ

ブライアン・モイニハン(2026年8月、CNBCの取材で)

8月には別の顔ものぞいた。AI関連に賭けて資産が急拡大した投資会社シチュエーショナル・アウェアネスが崩れかけ、バンク・オブ・アメリカも取引を仲介していた1社だった。証券取引委員会は月末、関係した銀行に召喚状を出している。

危機の後始末で頭角を現した人らしい、静かな警戒の言葉である。

在任の前半は危機の片づけに、後半は稼ぎを株主へ戻すことに使われた。次の CEO が受け取るのは、掃除の終わった銀行である。

だから評価の物差しも変わる。片づけの上手さではなく、ここからどれだけ伸ばせるかだけが問われる。モイニハン氏が残した最後の宿題は、実は後継者の側にある。

出典:

  • Bank of America Corporation Form 10-K (fiscal 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/70858/000007085826000157/bac-20251231.htm
  • U.S. Department of Justice「Bank of America to Pay $16.65 Billion in Historic Justice Department Settlement」(2014-08-21) — https://www.justice.gov/archives/opa/pr/bank-america-pay-1665-billion-historic-justice-department-settlement-financial-fraud-leading
  • Bank of America Newsroom「BofA's Virtual Assistant Erica Surpasses 3 Billion Client Interactions」(2025-08) — https://newsroom.bankofamerica.com/content/newsroom/press-releases/2025/08/a-decade-of-ai-innovation--bofa-s-virtual-assistant-erica-surpas.html
  • Bank of America「Announces Senior Leadership Changes」(2025-09-12) — https://www.prnewswire.com/news-releases/bank-of-america-announces-senior-leadership-changes-302555469.html
  • Brown University「Brian Moynihan to lead Brown Corporation as the University's 22nd chancellor」— https://www.brown.edu/news/2024-02-13/chancellor
  • Bank of America Reports Second Quarter 2026 Financial Results — https://newsroom.bankofamerica.com/content/newsroom/press-releases/2026/07/bank-of-america-reports-second-quarter-2026-financial-results.html
  • Situational Awareness hedge fund meltdown was a warning shot for leveraged markets, BofA CEO says, CNBC(2026年8月5日) — https://www.cnbc.com/2026/08/05/bofa-brian-moynihan-situational-awareness-meltdown-was-a-warning-shot.html
  • SEC reportedly subpoenas Wall Street banks over AI hedge fund Situational Awareness's near collapse, CNBC(2026年8月25日) — https://www.cnbc.com/2026/08/25/sec-situational-awareness-hedge-fund-subpoenas.html
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。