本文へ移動
ダラ・ホスロシャヒ
Dara Khosrowshahi
Uber Technologies[UBER]
時価総額 $160.8Bプロ経営者

謝罪から始めた再建者

ダラ・ホスロシャヒDara Khosrowshahi

CEO生年 1969イラン・テヘラン
2026.06.267 分で読める内容確認 2026.08.26

イラン革命の混乱で米国へ渡った少年が、旅行予約大手を12年率いたのち、燃えていたウーバーを引き継いだ。9年かけて年 $52B を売る黒字企業に変えた経営者。

モビリティライドシェア再建

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
48
成長優先派

売上は伸ばせるが、利益率は揺れる。

直近 8 年の数字より
売上の伸び75
利益率の規律0
資本配分の規律70
売上 平均伸び
+29.0%±29.1pp
営業利益率
-18.3%±25.3pp

ダラ・ホスロシャヒ 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01引き受けたのは、燃えている会社だった
  2. 02テヘランの少年と、6年会えなかった父
  3. 03三つの商売と、引き際の早さ
  4. 04運転手がいなくなる日に、何を握るか
  5. 05静かな9年が残したもの

2017年8月、ウーバーの取締役会が差し出した椅子に、座りたがる人はいなかった。社内告発、当局の調査、止まらない赤字。ダラ・ホスロシャヒは、旅行予約大手の安定した職を捨ててそこに座った。

数字で読む
在任年数
9
2017年8月〜
通期の売上
$52.0B
2025年
本業のもうけ
$5.6B
2019年は $8.6B の赤字
月に使う人
2.08億人
2026年4〜6月期・前年比16%増
01

引き受けたのは、燃えている会社だった

2017年のウーバーは、事業より先に評判が壊れていた。社内のハラスメント告発が表に出て、幹部が次々に辞め、当局の調査も走っていた。

創業者トラビス・カラニックは取締役会に追われた。後任探しは難航し、名の通った経営者はどこも首を縦に振らなかった。

引き受けたのは、旅行予約のエクスペディアを12年率いた48歳だった。創業神話も強い個性も持たない、いわゆる雇われ経営者である。

彼が最初にやったのは、新しい商売を始めることではない。謝ることだった

就任の翌月、ロンドンの交通当局が営業免許を更新しないと決めた。彼は公開書簡で「やり方が間違っていた」と認め、世界中の社員を代表して詫びた。

同じ年の11月には、会社の価値観そのものを書き換えている。「正しいことをする。以上」を含む八つの行動規範を掲げ、前任時代の勢い任せの文化を捨てた。

9年でやったのは、この順番だった
謝る
2017年。免許を失ったロンドンへ公開書簡
勝てない国から引く
2018年。東南アジア事業をグラブへ譲り、株を持つ側へ
配達を二本目の柱に
2020年。ポストメイツを $2.65B で買収
費用に容赦しない
2022年。翌年に初の通期黒字
どの段階にも派手さはない。順番を守りきったことが2023年の黒字につながった

順番が大事だった。文化を直す前に稼ぎを追えば、また同じ事故を起こしていたはずだ。

02

テヘランの少年と、6年会えなかった父

1969年、イランのテヘランに生まれる。一族は製薬や流通を手がける事業家で、革命前のテヘランでは裕福な部類だった。

1978年、革命前夜の混乱を避けて一家は米国へ渡る。持ち出せた財産はわずかで、暮らしは一からの立て直しになった。

1982年、父が祖父の世話のためイランへ戻る。そこで出国を禁じられ、家族と再会できたのは6年後だった。

13歳から19歳まで、父のいない家で育っている。速さより持続を選ぶ彼の性格の原点として、この時期はよく引き合いに出される。

  1. 1969
    イラン・テヘランで生まれる
  2. 1978
    革命前夜の混乱で一家が米国へ渡る
  3. 1982
    父がイランで出国を禁じられる
    13歳。再会は6年後
  4. 1991
    ブラウン大学で電気工学。投資銀行アレン・アンド・カンパニーへ
  5. 1998
    メディア投資会社のIACへ移る
  6. 2005
    36歳でエクスペディアの最高経営責任者に
  7. 2017
    ウーバーの最高経営責任者に就任、翌月ロンドンで免許を失う
  8. 2019
    上場。売り出し価格は1株 $45、会社の値段は約 $82B
  9. 2020
    配達のポストメイツを買収、自動運転部門はオーロラへ売却
  10. 2022
    社内メールで費用の締め直しを宣言
  11. 2023
    通期で初めて本業が黒字になる
  12. 2025
    売上 $52.0B、本業のもうけ $5.6B、月に使う人は2.02億人

ブラウン大学で電気工学を修め、1991年に投資銀行のアレン・アンド・カンパニーへ。ここで会社の値づけと交渉を覚えた。

1998年、メディアとネット事業を束ねる投資会社IACへ移る。そして2005年、36歳でエクスペディアの最高経営責任者になった。

12年かけて売上を約 $2B から $10B 超へ伸ばし、世界最大級の旅行予約会社に育てている。ウーバーが彼を呼んだのは、この実績があったからだ。

03

三つの商売と、引き際の早さ

いまのウーバーは三つの商売でできている。人を運ぶ「移動」、食事や日用品を運ぶ「配達」、企業の荷物を運ぶ「貨物」だ。

2025年の売上 $52.0B の内訳
移動57%$29.7B配達33%$17.2B貨物10%$5.1B
移動と配達で9割。貨物は前年から横ばいで、まだ稼ぎ頭になれていない

配達は、外出が消えた2020年に会社を支えた事業である。ポストメイツを買って米国での持ち場を広げ、いまでは売上の3分の1を占める。

もうひとつの特徴が、引き際の早さだ。前任者は全市場で1位を狙ったが、彼は勝てない市場を手放した。

東南アジアの事業はグラブへ渡し、代わりに株を受け取っている。自分で運転手を集めるより、勝っている相手の一部を持つほうが得だという判断だった。

2022年5月の社内メールでは、費用の締め直しをはっきり書いた。採用を特権として扱い、宣伝費を削り、手元に残る現金を最優先の物差しに変えた。

費用については、どこまでも容赦しない

ダラ・ホスロシャヒ(2022年5月、社内メール)

翌年、ウーバーは通期で初めて本業の黒字を出す。2019年に $8.6B あった本業の赤字は、2025年には $5.6B の黒字に変わった。

04

運転手がいなくなる日に、何を握るか

この会社の最大の弱点は、運転手あっての商売という点にある。自動で走る車が広まれば、最大の費用が消えると同時に、最大の強みも消える。

ホスロシャヒの答えは、自分で作るのをやめることだった。2020年に自社の自動運転部門をオーロラへ売り、開発から手を引いている。

代わりに選んだのは、車を作る側と組む道だ。無人車は8月時点で7都市を走り、年内に15都市へ増やす計画だという。パートナーの規模拡大には、今後数年で$10Bを投じるとも表明した。

握るのは車ではなく、客が最初に開く窓口だという考えである。誰の車であっても、ウーバーのアプリで呼ばれるかぎり手数料は入る。

ただし、この読みはいま試されている。先行するウェイモは2026年にフェニックスでの提携を終え、自社アプリでの提供へ軸足を移し始めた。

窓口を握る戦略は、相手が窓口を必要としているあいだしか効かない。ここが今後の最大の分岐点になる。

05

静かな9年が残したもの

彼は自分でもハンドルを握っている。サンフランシスコで運転手と配達員を務める社内の取り組みに、何度も参加した。

いちばん苦労したのは届け先探しだった。集合住宅で置き場所が分からず、広場でやっている試合に料理を運んだこともある。

そこで出した結論は、運転手にも同じ熱を持ってもらう必要がある、というものだ。彼は登録の手続きを作り直した。

ホスロシャヒの9年は、叫ばずに壊れた会社を直した9年だった。謝り、引き、削り、残った商売を太らせる。その繰り返しだけで黒字にした。

だからウーバーを見るときは、売上の伸びより先に運ぶ回数と本業のもうけの厚みを追うとよい。自動運転の提携が増え続けているかも同じくらい効く。

彼が最後に残すのは、運転手がいない時代でも人が最初に開くアプリかどうかだ。答えが出るのは、おそらく次の5年のうちになる。

出典:

  • Uber Technologies, Inc.「Uber Announces Results for Fourth Quarter and Full Year 2025」 — https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2026/Uber-Announces-Results-for-Fourth-Quarter-and-Full-Year-2025/default.aspx
  • Uber Technologies, Inc. Form 10-K (fiscal 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1543151/000154315126000015/uber-20251231.htm
  • Uber Newsroom「Uber's new cultural norms」(2017年11月) — https://www.uber.com/en-US/newsroom/ubers-new-cultural-norms/
  • Uber Technologies, Inc.「Uber to Acquire Postmates」(2020年7月) — https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2020/Uber-to-Acquire-Postmates/default.aspx
  • CNBC「Uber and Waymo to end exclusivity arrangement in Atlanta and Austin」(2026年7月) — https://www.cnbc.com/2026/07/24/uber-and-waymo-to-end-exclusivity-arrangement-in-atlanta-and-austin.html
  • Fortune「Uber CEO Dara Khosrowshahi moonlit as a driver」(2023年8月) — https://fortune.com/2023/08/22/uber-ceo-dara-khosrowshahi-moonlit-as-driver-san-francisco-nightmare-situation-uber-eats/
  • Uber Technologies, Inc.「Uber Announces Results for Second Quarter 2026」(2026年8月5日) — https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2026/Uber-Announces-Results-for-Second-Quarter-2026/default.aspx
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。