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Eli Lilly · LLYプロ経営者

デビッド・リックス

David Ricks

会長・CEO生年 1967/ 米国・インディアナ州ブルーミントン

肥満を病気と呼んだ人

1996 年入社の生え抜き。2017 年に社長となり、体重を減らす薬に会社の資源を寄せた。売上は 9 年で 4 倍、時価総額は $1T を超え、製薬で世界最大になった。

2026.07.025 分で読める内容確認 2026.08.26

製薬 · 肥満治療 · GLP-1

裏にいる会社を辿る → 裏に 21 社

経営の型

在任 2017.01〜現在 / 集計 FY2017〜2025・9 期 (在任外の 3 期は除外)
大型投資型

売上の 1 割を超える設備投資を続け、将来の供給力に賭ける。

この人を通して見る数字。見るのは投資が売上に変わるまでの時間と、その間の借入・フリーキャッシュフロー。回収が遅れると株価は先に折れる。

編集部の判断: 営業利益はこのサイトが SEC から取り込んだ項目に無い。設備投資/売上は直近 3 期で 11% と基準の 12% にわずかに届かないが、記事のとおり 2020 年以降 $55B 超を生産設備に投じており、工場が経営の中心。

売上の伸び振れ 中
中央値
+12.7%
ブレ
±14.0pp
前年割れ
0 回
利益率取り込みに無い

このサイトが SEC から取り込んだ項目に営業利益が無い

資本配分一定
設備投資/売上
11.1%
配当を出した年
100%
連続増配
8 年

良い・悪いを表す点数ではありません。業界の構造、景気、市況、会社の成熟度も同じ数字に映ります。型は編集部が記事の主題から付けたもの。出典は SEC EDGAR の年次報告。

この記事の流れ(全5章)
  1. 011つの薬が、会社の形を変えた
  2. 0230年、同じ会社にいた
  3. 03量は増え、値段は下がる
  4. 04次の柱は、まだ細い
  5. 05決算で追うべき二つの数字

2016 年、この会社が 1 年で売った薬は $21.2B 分だった。2026 年の見通しは $85B を超える。新薬が何十種類も出たわけではない。ひとつの薬が、桁違いに当たった。

「体重は薬で減らせる」。この一文が、医療と株式市場の両方を動かした。

イーライリリーは 1876 年創業、米国インディアナ州の製薬会社である。

150 年続いたその会社を 4 倍にしたのは、外から呼ばれた改革者ではない。1996 年に入社した生え抜き、デビッド・リックスだ。

就任の前年と今 — 売上は4倍を超えた
2016年 (就任の前年)$21.2B
2025年$65.2B
2026年の会社見通し$85〜87B
8 月に上方修正
2016 年と 2025 年は年次の実績、2026 年は 8 月に会社が引き上げた見通しの幅

数字で読む

社長在任
9年2017 年 1 月〜
在任中の株価
+1,540%2016 年末 $73.55 起点
時価総額
$1.11T製薬で世界最大・8月25日時点
肥満・糖尿病薬
$14.9B2026 年 4〜6 月の売上
01

1つの薬が、会社の形を変えた

食後に腸から出て、脳に「もう満腹だ」と伝えるホルモンがある。GLP-1 と呼ばれる。

リリーが作ったチルゼパチドは、このホルモンともう 1 種類の働きをまとめて真似る薬だ。

週に 1 回、自分で注射する。食欲が落ち、体重が減る。糖尿病の治療から始まり、肥満の治療へ広がった。

米国の医薬品規制当局 (FDA) は、2022 年に糖尿病用のマンジャロを承認した。翌 2023 年には肥満用のゼップバウンドも通った。

売れ方は製薬の歴史でも例が少ない。2026 年 4〜6 月期は、この 2 つだけで $14.9B を売っている。

会社全体の $23.0B の 6 割にあたる。残り 4 割に、他の糖尿病薬もがんの薬も全部入っている。

2026年4〜6月期の売上 $23.0B の内訳
マンジャロ$9.9B(糖尿病)ゼップバウンド$4.9B(肥満)その他すべて$8.2B
マンジャロは糖尿病、ゼップバウンドは肥満の治療薬。中身はどちらも同じチルゼパチド
02

30年、同じ会社にいた

1967 年、インディアナ州ブルーミントン生まれ。育った時期の多くはカリフォルニアで過ごしている。

高校を出てインディアナへ戻り、1990 年にパデュー大学で工業経営を修めた。

最初の職場はニューヨークのアイ・ビー・エムで、担当は営業だった。

1994 年、当時の恋人 (のちの妻) が医学部に進むのに合わせてインディアナへ帰る。1996 年に経営学修士を取り、同じ年にリリーへ入った。

配属は事業開発、つまり他社を買う話の担当である。そこから米国の営業と販売の現場へ移った。

カナダの現地法人を 3 年、中国の現地法人を 1 年率いる。2009 年に米国法人の社長になった。

2012 年に部門長、2017 年 1 月に最高経営責任者。入社から 21 年で頂点に立った。

まず問うのは、人の苦しみがどこにあるかだ。そこから逆算して考える

— デビッド・リックス

派手さのない人だ。本社はインディアナポリスのまま、決算の説明も淡々としている。

社内の作法も変えなかった。幹部の多くが生え抜きで、リックス自身がその見本になっている。

  1. 1967
    インディアナ州ブルーミントンで生まれる
  2. 1990
    パデュー大学で工業経営を修める
    卒業後はニューヨークで営業職
  3. 1996
    インディアナ大学で経営学修士、リリー入社
  4. 2005
    カナダ法人のトップ
  5. 2008
    中国法人のトップ
  6. 2009
    米国法人の社長
  7. 2012
    バイオ医薬品部門の社長
  8. 2017
    最高経営責任者に就任、同年 6 月に会長も兼ねる
  9. 2019
    がんのロクソ・オンコロジーを $8B で買収
  10. 2022
    糖尿病用マンジャロが米国で承認
  11. 2023
    肥満用ゼップバウンドが米国で承認
  12. 2024
    アルツハイマー病のケサンラが米国で承認
  13. 2025
    米国政府と価格で合意、公的保険が肥満治療へ
  14. 2026
    飲み薬版が承認、時価総額が $1T を超える
03

量は増え、値段は下がる

2026 年 4〜6 月期の中身を分けると、この会社の現在地が見える。

売れた量は 60% 増えた。一方で、実際に受け取った価格は 13% 下がっている。

値下がりは事故ではない。リックスが自分で選んだ道だ。

2025 年 11 月、リリーは米国政府と価格で合意した。輸入にかかる税を免れる代わりに、薬を安く出す。

メディケア (米国の高齢者向け公的医療保険) は、肥満の治療に初めてお金を払う。注射は月 $245 が基準になった。

安くして広げる — 2025年11月の合意でリックスが選んだ順番
価格を下げる
注射は月 $245 が基準
公的保険が払う
肥満の治療が対象に
使う人が増える
米国で肥満とされる人は 1 億人超
量で取り返す
薄い利益 × 大きな数
1 人あたりの利益は薄くなる。それを使う人の数で取り返す設計

2026 年 4 月には飲み薬版も承認された。注射を嫌う人にも届く形である。

自己負担で買う場合は月 $149 から始まる。薬の値段としては、ずいぶん安い部類に入る。

工場も足りていない。2020 年以降、米国の生産設備に $55B 超を投じてきた。

作れる量がそのまま売上の上限になる。この会社では研究所と同じくらい、工場が経営の中心にある。

04

次の柱は、まだ細い

死角もはっきりしている。稼ぎがひとつの薬に寄りすぎていることだ。

肥満の薬で先を走ってきたのはノボノルディスクだった。

いまはアムジェンやファイザーも後ろから来ている。

価格の圧力も続く。メディケアには、高い薬を選んで値段を交渉する仕組みがある。

2026 年に選ばれた 15 品目にチルゼパチドは入らなかった。ただ、売れている薬ほど選ばれやすい。

そして次の柱が細い。アルツハイマー病のケサンラは 2024 年に承認された。

がんの薬も、2019 年に $8B を投じて買った会社から育てている。どちらもマンジャロの規模には遠い。

今年の研究費は $14.5B。ドイツや日本が国として出す額より多い

— デビッド・リックス

研究に金を積むのは、次の当たりを引く確率を上げるためだ。当たるかどうかは、事前には誰にも分からない。

05

決算で追うべき二つの数字

リックスがやったのは、肥満を「本人の努力不足」から「薬で治す病気」へ置き換えることだった。

その言い換えが正しかったかどうかは、もう数字が答えている。

残る問いは値段だ。安くするほど使う人は増え、1 人あたりの利益は薄くなる。

この綱引きの結果は、四半期ごとの「売れた量」と「実現価格」という二つの数字に出る。

次の決算でそこだけ追えば、会社の体温は測れる。新薬の話題より、ずっと正直な目盛りである。

出典:

  • Lilly reports second-quarter 2026 financial results (2026-08-05) — https://www.prnewswire.com/news-releases/lilly-reports-second-quarter-2026-financial-results-raises-full-year-guidance-and-highlights-continued-growth-and-pipeline-progress-302843165.html
  • FDA approves Lilly's Foundayo (orforglipron) (2026-04-01) — https://www.prnewswire.com/news-releases/fda-approves-lillys-foundayo-orforglipron-the-only-glp-1-pill-for-weight-loss-that-can-be-taken-any-time-of-day-without-food-or-water-restrictions-302731485.html
  • Eli Lilly and Company「David Ricks」(会社公式の経歴) — https://www.lilly.com/about/leadership/david-ricks
  • CNBC「Trump announces deals with Eli Lilly, Novo Nordisk」(2025-11-06) — https://www.cnbc.com/2025/11/06/trump-eli-lilly-novo-nordisk-deal-obesity-drug-prices.html
  • Chief Executive「CEO Of The Year: A Conversation With Eli Lilly's Dave Ricks」(本文の引用元) — https://chiefexecutive.net/ceo-of-the-year-a-conversation-with-eli-lillys-dave-ricks/
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。