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デビッド・ソロモン
David Solomon
Goldman Sachs[GS]
時価総額 $343.4Bプロ経営者

撤退を決めた銀行家

デビッド・ソロモンDavid Solomon

会長・CEO生年 1962米国・ニューヨーク州ハーツデール
2026.06.187 分で読める内容確認 2026.08.26

個人向け銀行に手を広げて $3B 超の赤字を出し、自分でそれを畳んだゴールドマン・サックスの経営者。本業に絞り直した2025年、会社は過去最高の利益を出した。

投資銀行M&Aウォール街

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
61
株主目線の番人

9 年連続増配の規律。

直近 10 年の数字より
売上の伸び50
利益率の規律50
資本配分の規律83
連続増配
9 年
配当年比率
100%

デビッド・ソロモン 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01$3B を払って、引き返した
  2. 02新卒で落とされた銀行に、中途で入って頂点へ
  3. 03本業に戻した年に、数字は過去最高になった
  4. 04DJ をやめ、後継者に $80M を積む
  5. 05ゴールドマンを見るとき、どこを見るか

就任から4年目、ゴールドマン・サックスの個人向け事業は $3B を超える赤字を抱えていた。デビッド・ソロモンは、そこで引き返す判断をした。

ウォール街の経営者は、自分が始めた事業をなかなか畳まない。畳んだ瞬間、判断が誤りだったと認めることになるからだ。

ソロモンは畳んだ。そして撤退の年に、会社史上いちばん良い決算を出した。

ソロモンの7年は、はっきり3つの局面に割れる
広げる 2018-21
預金・カード・分割払いへ進出
畳む 2022-24
赤字を認めて個人向けから撤退
絞る 2025-
助言と引受に集中して最高益
局面が変わるたびに、稼ぎの中身も入れ替わっている
数字で読む
在任
7
2018年10月から
2025年の売上
$58.3B
就任した年は $36.6B
2025年の1株利益
$51.32
就任した年は $25.27
個人向けの赤字
$3B超
2020〜22年の合計
01

$3B を払って、引き返した

ソロモンが最高経営責任者になったのは2018年10月だった。前任のロイド・ブランクファインから受け継いだ会社には、はっきりした弱点があった。

稼ぎが企業向けの仕事に偏っていた。会社の合併と買収(M&A)の助言、株式や債券の売り出し、そして市場での売買である。

どれも景気が良いときは太るが、冷えると一斉に細る。個人の預金のように、毎月決まって入ってくる収入がなかった。

そこでソロモンは個人に手を伸ばした。預金と個人向けローンの「マーカス」を広げ、アップルと組んでクレジットカードを出した。

2021年には、住宅リフォームの分割払いを仲介するグリーンスカイを買収する。個人向けを第三の柱にする構想だった。

グリーンスカイは、買った値段の3分の1以下で手放した
買った値段 (2021年)$1.73B
売った値段 (2024年)約 $0.5B
2021年に買い、3年後の2024年3月に売却が完了した。差額はそのまま株主の損になっている

結果は赤字だった。個人向けをまとめた部門は、2020年から2022年までの3年で $3B を超える損失を出している。

貸したお金が戻らない。カードは信用力の低い利用者が想定より多く、焦げつきに備える費用が膨らんだ。

撤退の理由を、ソロモンは自分の言葉で説明している。小さい事業に会社の集中力を奪われるのが惜しい、という筋だった。

これは機能していない。やり切ることはできるが、とても難しい。しかも規模は小さく、本当に価値を生む仕事から注意をそらしている

デビッド・ソロモン

畳む作業は段階を踏んだ。2024年3月、グリーンスカイの売却が完了する。

2026年1月には、カード事業をJPモルガン・チェースへ渡す合意を発表した。移る残高はおよそ $20B にのぼる。

この清算は2025年10〜12月期の決算に出た。カード資産の評価を $2.26B 引き下げ、個人向け部門の年間売上は $151M まで縮んでいる。前の年は $2.13B だった。

02

新卒で落とされた銀行に、中途で入って頂点へ

1962年、ニューヨーク州ハーツデールに生まれる。ハミルトン大学で政治学を学び、1984年に卒業した。

金融の学位も、名門の経営大学院の人脈もない。学生のときゴールドマンの新人採用に応募して、落ちている。

社会に出てからは中堅の金融機関を渡り歩いた。アービング・トラスト、ドレクセル・バーナム・ランバート、ベアー・スターンズ。

扱ったのは、信用力の低い会社が高い利回りを付けて出す社債だった。当時のウォール街では傍流の商売である。

ゴールドマンに入ったのは1999年、37歳のとき。新人としてではなく、いきなりパートナー(共同経営者の階級)としての中途入社だった。

内部で育った人が上に立つ会社で、これは異例の入り口である。

  1. 1962
    ニューヨーク州ハーツデールで生まれる
  2. 1984
    ハミルトン大学を卒業、専攻は政治学
  3. 1986
    ドレクセル・バーナムへ、高利回り債の世界に入る
  4. 1999
    ゴールドマンにパートナーとして中途入社(37歳)
    新卒では落とされた会社だった
  5. 2006
    投資銀行部門の共同責任者に
  6. 2016
    社長兼共同最高執行責任者
  7. 2018
    最高経営責任者に就任、翌年に会長も兼ねる
  8. 2020
    マレーシアの汚職事件で米司法省と和解、報酬は36%減
  9. 2021
    グリーンスカイを買収、個人向けを第三の柱に
  10. 2024
    グリーンスカイを売却、個人向けの撤退が進む
  11. 2025
    売上 $58.3B、1株利益 $51.32 で過去最高
  12. 2026
    スペースXの上場で主幹事の先頭に指名される

就任2年目には、前の時代の負債が表に出た。マレーシアの政府系ファンドをめぐる汚職事件である。

2020年10月、ゴールドマンは米司法省などに $2.9B 超を支払って和解した。海外での贈賄をめぐる制裁としては、当時最大の金額だった。

ソロモン自身は関与していないと取締役会は説明した。それでも2020年の報酬は36%減の $17.5M に切り下げられている。

自分の代で起きた失敗ではない。それでも組織の失敗は経営者が引き受けるという形を、就任早々に見せることになった。

03

本業に戻した年に、数字は過去最高になった

2025年の決算は、就任以来で最も良い内容になった。売上は $58.28B、純利益は $17.18B、1株利益は $51.32 だった。

就任した2018年は売上 $36.62B、1株利益 $25.27。7年で1株あたりの利益はほぼ2倍になっている。

2025年の稼ぎは、ほぼ二本立てに戻った
法人・市場$41.45B運用・富裕層$16.68B個人向け$0.15B
法人・市場は企業向けの助言と引受、それに市場での売買。運用は投資信託や富裕層の資産管理。個人向けは撤退でほぼ消えた

戻った先の本業も、中身は昔と違う。会社の合併と買収の助言が、はっきり稼ぎ頭に戻った。

2025年の投資銀行手数料は $9.34B で、前の年より21%多い。人工知能への投資が一巡せず続いたことで、資金調達と買収の相談が一気に増えた。

2025年の投資銀行手数料 $9.34B の中身
合併・買収の助言$4.73B
債券の引受$2.83B
株式の引受$1.78B
助言は取引がまとまったときだけ入る収入。引受は株式や債券を売り出す仕事の手数料

2026年に入って勢いはさらに強まった。4〜6月期の1株利益は $20.98 と四半期として過去最高になった。

預かって運用する資産も初めて $4T を超えた。5月には、スペースXの株式上場で主幹事の先頭に指名されている。

04

DJ をやめ、後継者に $80M を積む

ソロモンには珍しい肩書きがもう一つあった。「D-Sol」の名でクラブの曲をつなぐDJである。

クラブ向けの電子音楽(EDM)を自分で編曲し、ラスベガスやマイアミの会場に立った。音楽から得た収入は寄付に回すと表明していた。

批判が強まったのは、業績が悪い時期だった。個人向けで赤字を出している最中に経営者が野外フェスの舞台に立つ姿は、社内外の反発を招いた。

最後の大きな出演は2022年7月のロラパルーザ。2023年10月に会社は、注目が仕事の妨げになるため本人が公の場での演奏をやめた、と説明した。

本人は1年以上前に、外からの注目が仕事の妨げになると判断して、公の場でのDJをやめている

ゴールドマン・サックス広報(2023年)

次の関心事は後継者である。社長のジョン・ウォルドロンが最有力とみられている。

2025年1月、会社はソロモンとウォルドロンに $80M ずつの引き止め報酬を出すと決めた。5年かけて権利が確定する形である。

翌月、ウォルドロンは取締役にも加わった。順番が形になった一方で、この報酬の規模には議決権行使の助言会社から反対の呼びかけが出ている。

05

ゴールドマンを見るとき、どこを見るか

ソロモンの7年は、広げて、畳んで、絞る、の順に進んだ。数字が良くなったのは絞ったあとである。

だから見るべきは、絞った先が太り続けるかどうかだ。四半期ごとの投資銀行手数料と、まだ着手していない案件の残りが最初の目印になる。

二つ目は預かって運用する資産である。2026年6月末で $4.04T、毎月の手数料として入るこの部分が、市場が冷えたときの支えになる。

三つ目は後継者だ。ウォルドロンへの引き継ぎがいつ、どんな形で発表されるかで、この会社の値段は動く。

撤退の判断を自分の口で説明した経営者は、ウォール街では多くない。次に何かがうまくいかなくなったとき、同じ速さで畳めるか。ソロモンの評価は、たぶんそこで決まる。

出典:

  • Goldman Sachs, Full Year and Fourth Quarter 2025 Earnings Results (Form 8-K EX-99.1) — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/886982/000088698226000008/a4q25gsearningsresults.htm
  • Goldman Sachs, Second Quarter 2026 Earnings Results (Form 8-K EX-99.1) — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/886982/000088698226000294/a2q26gsearningsresults.htm
  • U.S. Department of Justice「Goldman Sachs Charged in Foreign Bribery Case」 — https://www.justice.gov/archives/opa/pr/goldman-sachs-charged-foreign-bribery-case-and-agrees-pay-over-29-billion
  • Banking Dive「Goldman to sell GreenSky to Sixth Street-led group」 — https://www.bankingdive.com/news/goldman-greensky-david-solomon-fintech-retail-marcus-sixth-street/696429/
  • CNBC「Goldman CEO gets big pay boost, plus $80 million bonus」 — https://www.cnbc.com/2025/01/17/goldman-ceo-gets-big-pay-boost-and-80-million-bonus-for-another-five-years-at-helm.html
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