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Snowflake · SNOWプロ経営者

フランク・スルートマン

Frank Slootman

取締役会長・前CEO生年 1958/ オランダ

頼まれて入り、終われば去る

創業者ではなく、出来上がった会社に途中から入って上場まで運ぶ役回りを 3 度務めた。スノーフレークでは 5 年で売上を 10 倍にし、2024 年 2 月に自ら退いている。

2026.06.146 分で読める内容確認 2026.08.26

SaaS · データ · クラウド

裏にいる会社を辿る → 裏に 3 社

経営の型

在任 2019.04〜2024.02 / 集計 FY2020〜2024・5 期
成長優先型

利益率より売上の伸びを先に取る。市場の取り合いを勝ち切る運転。

この人を通して見る数字。見るのは伸び率の鈍り方。成長が一段落した四半期に、利益率へ舵を切れるかで評価が分かれる。

売上の伸び振れ 大
中央値
+87.7%
ブレ
±33.8pp
前年割れ
0 回
利益率振れ 大
営業利益率 平均
-73.1%
ブレ
±36.4pp
資本配分まちまち
設備投資/売上
1.3%

良い・悪いを表す点数ではありません。業界の構造、景気、市況、会社の成熟度も同じ数字に映ります。型は本人の期間の決算から機械的に読んだもの (基準: 売上成長率の中央値 20% 以上)。出典は SEC EDGAR の年次報告。

この記事の流れ(全5章)
  1. 013 社を預かり、3 社とも出口まで運んだ
  2. 02売上は 10 倍。それでも帳簿はずっと赤字だった
  3. 03厳しさは、人の好き嫌いをはっきり分ける
  4. 04去ったあとに、答え合わせが始まる
  5. 05この会社で追うのは 2 つでいい

2019 年 4 月、60 歳の男がスノーフレークの最高経営責任者に招かれた。創業者ではない。頼まれて入る、3 社目の会社だった。

フランク・スルートマンの仕事は、毎回まったく同じ形をしている。製品が出来上がった会社に途中から入り、売る力を鍛え、株式市場に出す。

そして役目が終わると去る。スノーフレークでも 2024 年 2 月、自分から最高経営責任者の座を降りた。

スルートマンの5年で、スノーフレークの売上はこう伸びた
就任の年度 (2020年1月期)$265M
退任の年度 (2024年1月期)$2.81B
5年でおよそ10倍
直近 (2026年1月期)$4.68B
後任の2年でさらに1.7倍
いずれも1月期の通期売上。米証券取引委員会に提出された年次報告書の数字

数字で読む

最高経営責任者の在任
5年2019/4〜2024/2
上場させた会社
3社2007・2012・2020 年
上場時に集めた額
$3.4Bソフト会社では当時最大
上場初日の上昇
+112%終値は約 $254
01

3 社を預かり、3 社とも出口まで運んだ

1958 年、オランダ生まれ。ロッテルダムのエラスムス大学で経済学を修め、1982 年に米国へ渡った。

最初の中心は 2003 年、データ・ドメインという記憶装置の会社だった。同じ中身のデータを二重に保存しない、という地味な技術を売っていた。

2007 年に上場させる。株を証券取引所に並べ、誰でも売り買いできる状態にすることだ。

2009 年、この会社を大手 2 社が奪い合った。ネットアップが先に買収で合意したところへ、記憶装置最大手のイーエムシーが割り込む。

イーエムシーは、のちにデルが買い取った会社である。競り合いは 6 週間続いた。

1 株 $30 から $33.50 まで値を上げ、全額現金という条件で勝つ。総額はおよそ $2.1B。

データ・ドメインはネットアップとの契約を解き、違約金 $57M を払っている。

3社で同じ順番を繰り返している
出来上がった会社に入る
作るのではなく、売れる形にする役
売る力に人と金を寄せる
製品より販売を先に厚くする
株式市場に出す
2007年・2012年・2020年
役目が終われば去る
3社とも自分から退いた
データ・ドメイン、サービスナウ、スノーフレーク。どれも創業者ではなく、途中からの登板

2011 年、次はサービスナウだった。社内のパソコンやシステムの困りごとを受け付けるソフトの会社で、翌年に上場した。

2019 年、60 歳でスノーフレークへ。社内に散らばったデータを 1 か所に集めて分析する仕組みを、月額で貸す会社である。

16 か月後の 2020 年 9 月に上場。2,800 万株を 1 株 $120 で売り、$3.4B を集めた。ソフト会社の新規上場としては当時の最大である。

初値は $245、終値は約 $254。セールスフォースとバークシャー・ハサウェイも買っていた。両社は同じ条件で計 $500M を引き受けている。

新しく上場する株を、ウォーレン・バフェットの会社が買うのは珍しい。

  1. 1958
    オランダで生まれる
  2. 1982
    エラスムス大学で経済学を修め、米国へ渡る
  3. 2003
    データ・ドメインの最高経営責任者に就任
  4. 2007
    データ・ドメインが上場
  5. 2009
    イーエムシーが約 $2.1B で買収、競り合いの末に
  6. 2011
    サービスナウの最高経営責任者に就任
  7. 2012
    サービスナウが上場
  8. 2017
    サービスナウを退任
  9. 2019
    スノーフレークの最高経営責任者に (60 歳)
  10. 2020
    スノーフレーク上場、$3.4B を調達
    ソフト会社では当時最大の規模
  11. 2024
    最高経営責任者を退任、ラマスワミへ交代
  12. 2026
    取締役会長として在任中
02

売上は 10 倍。それでも帳簿はずっと赤字だった

スノーフレークの決算を開くと、毎年きれいに赤字が並んでいる。スルートマンが去った年度の最終損益も $836M の赤字だった。

ところが同じ年度、本業で入ってきた現金は $848M ある。設備に使った分を引いても $813M が手元に残った。

同じ1年が、帳簿と現金で正反対に見える
帳簿の上の最終損益-$836M
本業で入ってきた現金+$848M
設備投資を引いても $813M 残る
2024年1月期。スルートマンが指揮した最後の通期で、いずれも米証券取引委員会に提出された数字

この差の大きな部分は、給与の一部を自社株で払う仕組みから来る。会社は現金を出していないのに、費用としては計上するからだ。

だから現金が増えていても帳簿は赤字になる。赤字を気にしなくてよい、という意味ではない。

株で払えば株の数は増える。すでに持っている株主の取り分は、その分だけ薄まっていく。

スルートマンはこの形を極端まで振った。売る人を厚く雇い、赤字を許し、伸び率そのものを買ってもらう。

03

厳しさは、人の好き嫌いをはっきり分ける

優先すべきことがたくさんあるなら、優先すべきことは一つも無い

— フランク・スルートマン

2022 年の著書『Amp It Up』は、題名がそのまま彼のやり方を指している。強度を上げろ、という意味だ。

著書が説く、立て直しの5手順
基準を上げる
「これで十分」の線を引き上げる
人をそろえる
的を絞る
優先順位が多いほど、実質は無くなる
速度を上げる
戦略を変える
この順に手を付けろ、というのが本の主張。どれも才能ではなく態度の話として書かれている

彼は最高経営責任者の仕事を「とんでもなく対決的で、人間の本性に反している」と言い切る。それでも対決は避けず、自分から取りに行けというのが彼の主張だ。

合わない人は辞めていく。それでいい、というのが彼の考えだ。合う人が集まり、合わない人が抜けるだけだと語っている。

だから同じ会社の同じ時期を指して、最高の上司だったと言う人と、二度と御免だと言う人が並ぶ。

退任を告げたとき、社内は動揺した。彼はそれを一言で片づけている。「これは個人崇拝ではない」と。

04

去ったあとに、答え合わせが始まる

後任はスリダー・ラマスワミ。グーグルで広告事業を率いた人物で、2023 年に自分の会社が買われてスノーフレークに来た。

社内で人工知能を担当していた技術畑である。売る力の人から、作る力の人への交代だった。

スルートマンは会社を離れてはいない。2026 年 5 月に米証券取引委員会へ出された委任状によれば、2019 年 12 月から取締役会長を続けている。

交代を発表した日、株価は大きく下げた。同時に示した業績見通しも弱かった。

その後の 2 年で会社は数字を取り戻す。2026 年 1 月期の売上は $4.68B に伸びた。

2026 年 7 月、取締役会はラマスワミに新しい報酬案を示した。7 年で時価総額をいまのおよそ 2 倍、$184B まで押し上げれば、最大 $448M を受け取る仕組みだ。

2026 年 8 月 25 日の株価は $318 で、52 週の安値 $121 から大きく戻っている。

05

この会社で追うのは 2 つでいい

スルートマンの通信簿は、彼がいなくなってから付く。仕組みを残したのなら伸びは続くし、圧力だけだったのなら止まる。

いまのところ、伸びは続いている。

これからスノーフレークの株を見るなら、追うものは 2 つでよい。売上の伸び率と、自社株で払った分だけ増える株数だ。

前者は彼が残した勢いで、後者は彼が先送りにした請求書である。

出典:

  • Snowflake Inc., SEC EDGAR 提出書類一覧 (Form 10-K / 年次の売上・損益・現金) — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001640147&type=10-K
  • Snowflake Inc. Form DEF 14A (2026 年 5 月 18 日提出、在任期間と取締役会長の記載) — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1640147/000164014726000019/snow-20260518.htm
  • Snowflake「Snowflake Announces Pricing of Initial Public Offering」 — https://www.snowflake.com/en/news/press-releases/snowflake-announces-pricing-of-initial-public-offering/
  • Snowflake「Sridhar Ramaswamy Named Chief Executive Officer of Snowflake」 — https://www.snowflake.com/en/news/press-releases/sridhar-ramaswamy-named-chief-executive-officer-of-snowflake/
  • Data Domain, Inc. Form 8-K (2009 年、イーエムシーによる買収) — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001391984/000095013409011246/f52588exv99w2.htm
  • Reuters「Snowflake unveils $448 million pay plan for CEO tied to ambitious stock targets」(2026年7月) — https://www.tradingview.com/news/reuters.com,2026:newsml_L4N43I0Z7:0-snowflake-unveils-448-million-pay-plan-for-ceo-tied-to-ambitious-stock-targets/
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