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ジェレミー・アレール
Jeremy Allaire
Circle[CRCL]
時価総額 $15.1B創業者

ドルを配管にした男

ジェレミー・アレールJeremy Allaire

CEO生年 1971米国・ミネソタ州ミネアポリス
2026.07.126 分で読める内容確認 2026.08.26

ウェブの開発道具と動画配信で2社を上場させた連続起業家。3社目のサークルで「デジタルのドル」USDCを $73B まで育て、2026年7月に米当局から銀行の設立認可を得た。

ステーブルコインフィンテック連続起業
この記事の流れ(全6章)
  1. 01政治学の学生が、ウェブの道具屋になった
  2. 023回とも、主役ではなく裏方を選んだ
  3. 03預かった $1 は、どこへ消えるのか
  4. 04量は2.5倍、稼ぎは7%しか増えない
  5. 05免許を集める、という戦い方
  6. 064回目の賭けは、9月16日に始まる

1995年はウェブ、2004年は動画、そして2013年はお金。ジェレミー・アレールは30年で3回、「次にインターネットが飲み込むもの」に賭けた。3回とも当て、3社とも上場させている。

賭け方は毎回そっくりだ。表に立つ商品ではなく、その裏で動く配管をつくる。

サークルが出しているUSDCは、いつでも $1 と交換できる「デジタルのドル」である。

数字で読む
USDC流通額
$73.3B
2026年6月末・前年比 +19%
4〜6月期の売上
$701M
前年比 +7%
株価
$92
公開価格は $31、2026年8月時点
創業
3社目
3社とも上場させた
01

政治学の学生が、ウェブの道具屋になった

1971年、ミネソタ州ミネアポリス生まれ。子どもの自主性に任せるモンテッソーリ教育で育った。

大学はマカレスター大学に進む。専攻は計算機科学ではなく、政治学と哲学だった。1993年に卒業している。

プログラミングは独学だ。1995年、兄のJJと会社を立ち上げた。元手はJJの貯金 $18,000 である。

二人が作ったのは、コールドフュージョンという開発道具だった。ホームページとデータベースをつなぎ、注文や検索を動かせるようにするものだ。

まだウェブが読むだけの場所だった時代に、そこを動く場所へ変えた。会社は1999年に上場する。

2001年、同社はマクロメディアに売却された。アレールは30歳で、買い手の技術責任者に就いている。

  1. 1971
    ミネソタ州ミネアポリスで生まれる
  2. 1993
    マカレスター大学を卒業、専攻は政治学と哲学
  3. 1995
    兄JJと創業、開発道具コールドフュージョンを作る
  4. 1999
    1社目が米ナスダックに上場
  5. 2001
    マクロメディアへ売却、30歳で技術責任者に
  6. 2004
    動画配信の裏方ブライトコーブを創業(2社目)
  7. 2012
    ブライトコーブが上場
  8. 2013
    サークルを創業(3社目)
  9. 2018
    コインベースと組み、USDCの発行を始める
  10. 2025
    ニューヨーク証券取引所に上場、公開価格は $31
    初日の終値は $83.23
  11. 2026
    米通貨監督庁から信託銀行の設立認可
02

3回とも、主役ではなく裏方を選んだ

2004年、2社目のブライトコーブを創業する。動画をネットで流したい放送局や企業に、その裏側の仕組みを貸す会社だ。

ユーチューブが生まれる1年前だった。動画が主役になる前に、動画を運ぶ管を用意していたことになる。

この会社も2012年に上場した。これで2社連続である。

お金は、インターネットのスピードで動くべきだ

ジェレミー・アレール

3社目のサークルは2013年、ビットコインが最初の熱狂を迎えた年に始まった。

ただし狙いは値上がり益ではない。ドルそのものをネットの上で動かす、その管になることだった。

2018年、コインベースと組んでUSDCの発行を始める。3回目の賭けが、ここで形になった。

03

預かった $1 は、どこへ消えるのか

USDCの仕組みは驚くほど単純だ。利用者が $1 を渡すと、サークルは1USDCを発行する。

預かった $1 は短期の米国債などで持つ。だから、持ち主はいつでも $1 に戻せる。

会社の稼ぎは、この預かり金に付く利息である。4〜6月期の利息収入は $668M で、売上のおよそ95%を占めた。

問題はその先にある。入ってきた利息の多くは、会社の手元に残らない。

預かった $1 が、会社の取り分になるまで
利用者が $1 を預ける
同じ額のUSDCが発行される
短期の米国債で持つ
いつでも $1 に戻せる
利息が入る
4〜6月期は $668M
6割近くが外へ出る
$412M が配る相手へ、残った純利益は $48M
数字は2026年4〜6月期。配る相手の代表がコインベースで、同社の場に置かれているUSDCの利息は全額が同社に渡る契約になっている

USDCを配ってくれる取引所や提携先へ払った額は $412M。売上 $701M のおよそ6割にあたる。

そこから人件費などを引くと、継続事業の純利益は $48M になる。前年の同じ時期は赤字だったので、改善ではある。

「使われるほど儲かる」のは本当だ。ただし儲けの半分以上は、最初から他人のものと決まっている。

04

量は2.5倍、稼ぎは7%しか増えない

4〜6月期にUSDCで動いたお金は $14.8T だった。前年同期のおよそ2.5倍である。

ところが売上は $701M で、伸びは7%にとどまった。使われた量と稼ぎが、まるでかみ合っていない。

使われた量と、稼ぎの伸びがかみ合っていない
USDCで動いたお金(前年同期比)+151%
4〜6月期は $14.8T
売上と利息収入(前年同期比)+7%
同 $701M
差が出るのは、預かり金に付く利率が1年で0.66%分下がったから。量が増えても $1 あたりの取り分が薄くなれば、売上は伸びない

原因は金利だ。預かり金に付く利率は、1年で0.66%分下がった。

つまり売上は、流通額と米国の金利の掛け算でほぼ決まる。片方が伸びても、もう片方が縮めば打ち消される。

投資する側から見ると、ここが最大の弱点になる。利下げが進む局面では、USDCが順調に増えても売上は止まりうる。

競争も楽ではない。流通残高では首位のテザーに水をあけられ、サークルは2位につけている。

05

免許を集める、という戦い方

暗号資産の世界には、規制とぶつかりながら進む経営者が多い。アレールは逆をやった。

10年かけて各国の免許と登録をそろえ、当局に監督される側へ自分から入っていったのである。

2025年7月、米国でステーブルコインを正面から扱う法律が成立した。アレールはホワイトハウスでの署名に駆けつけている。

2026年7月10日には、米通貨監督庁から信託銀行の設立認可が下りた。預かり金の保管を自前の銀行で担い、連邦の監督下に置ける体制になる。

日本にも足がかりができた。2026年6月、野村ホールディングスと覚書を結び、企業向けの外貨決済を2027年にも始めると報じられている。

06

4回目の賭けは、9月16日に始まる

サークルはいま、アークという独自のブロックチェーンを準備している。USDCそのものが手数料の支払いに使われる仕組みだ。

一般公開は2026年9月16日の予定である。アレールはこれを、USDCより大きな機会だと語っている。米証券保管振替機関やブラックロックとも組み、機関投資家向けの土台づくりを進めている。

この株を見るときに追う数字は、2つでいい。USDCの流通額と、米国の金利である。

前者は「どれだけ使われたか」を、後者は「$1 あたりいくら稼げるか」を表す。この掛け算が、売上のほぼすべてを決める。

30年で3回、アレールは同じ賭け方をしてきた。4回目が当たったかどうかは、9月16日から数えはじめることになる。

出典:

  • Circle Reports Second Quarter 2026 Results(Circle 公式・2026年8月5日) — https://www.circle.com/pressroom/circle-reports-second-quarter-2026-results
  • Circle Receives Final OCC Approval to Establish National Trust Bank(Circle 公式・2026年7月10日) — https://www.circle.com/pressroom/circle-receives-final-occ-approval-to-establish-national-trust-bank
  • Circle Announces Pricing of Upsized Initial Public Offering(Circle 公式・2025年6月) — https://www.circle.com/pressroom/circle-announces-pricing-of-upsized-initial-public-offering
  • 米大手ステーブルコイン、日本企業向け参入へ 野村と組み外貨即時決済(日本経済新聞・2026年6月) — https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB23BJW0T20C26A6000000/
  • Investing.com「Circle Q2 2026 slides: USDC growth accelerates amid Arc expansion」(2026年8月) — https://www.investing.com/news/company-news/circle-q2-2026-slides-usdc-growth-accelerates-amid-arc-expansion-93CH-4837850
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