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ジェーン・フレイザー
Jane Fraser
Citigroup[C]
時価総額 $269.4Bプロ経営者

引き算で立て直す

ジェーン・フレイザーJane Fraser

CEO生年 1967英国・スコットランド・セントアンドルーズ
2026.06.196 分で読める内容確認 2026.08.26

大きいのに儲からない銀行を、事業を減らして立て直した。個人向け銀行を13ヶ国でたたみ、メキシコの銀行を半分手放し、2026年に10年ぶりの売上へ。米大手銀行で初の女性トップ。

金融銀行再建

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
69
安定運転

目立つブレなく、地味に積み上げる。

直近 10 年の数字より
売上の伸び81
利益率の規律50
資本配分の規律75
売上 平均伸び
+2.1%±2.9pp
連続増配
1 年
配当年比率
100%

ジェーン・フレイザー 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01「競い合うだけの規模がない」と認めた就任
  2. 02事業を5つに束ね直した2023年
  3. 03数字がやっと追いついてきた四半期
  4. 04まだ外れていない足かせ
  5. 05この人の通信簿は、どこに出るか

2021年3月、ジェーン・フレイザーは米大手銀行で初の女性トップになった。ただ、彼女が受け取ったのは「大きいのに儲からない」銀行だった。

シティグループは180を超える国と地域で商売をしている。それでも、株主のお金をどれだけ利益に変えられるかという点では、同業に長く見劣りしていた。

世界に広げすぎて、自分たちでもどこが稼いでいるのか掴めない。フレイザーはその状態をほどくために呼ばれた。

同じ「大手銀行」でも、稼ぐ力にはこれだけ差がある
JPモルガン・チェース23%
シティグループ13.0%
会社が今年の目標に置いた10〜11%は上回った
株主から預かった資本に対して、1年あたりどれだけ利益を出したか (RoTCE)。どちらも2026年4〜6月期。JPモルガンの23%は一時的な利益を除いた値で、そのまま数えると29%になる
01

「競い合うだけの規模がない」と認めた就任

就任は2021年3月1日。その前の秋、シティは米国の規制当局から業務改善命令を受けたばかりだった。

命令の理由は、不正でも巨額の損失でもない。社内のデータが揃っていない、という指摘である。

顧客や取引の記録が部署ごとにばらばらで、経営陣が全社の姿を正しく見られない。銀行としては重い欠陥だ。

どれも良い事業だ。ただ、競い合うのに必要な規模が我々にはない

ジェーン・フレイザー(2021年4月、13ヶ国からの撤退を発表して)

就任の翌月、フレイザーは個人向け銀行を13ヶ国でたたむと発表した。

オーストラリア、中国、インド、韓国、台湾、ポーランドなど、看板だけは立派に並んでいた市場である。

稼げていない場所を抱えたまま全社を直すことはできない。最初の一手は、足し算ではなく引き算だった。

スコットランドの小さな町から来た人

1967年、英国スコットランドのセントアンドルーズ生まれ。ケンブリッジ大学で経済学を修めた。

卒業後はゴールドマン・サックスのロンドン支店に入り、企業どうしの合併や買収を手伝う部署で働く。

その後ハーバード大学で経営学修士を取り、マッキンゼーに10年在籍してパートナーまで進んだ。

シティに移ったのは2004年。中南米の統括やメキシコ子会社の経営を経て、2019年に社長になった。

  1. 1967
    スコットランド・セントアンドルーズで生まれる
  2. 1988
    ケンブリッジ大学で経済学の学位、ゴールドマン・サックスへ
  3. 1994
    ハーバード大学で経営学修士、マッキンゼーへ
    10年在籍しパートナーに
  4. 2004
    シティグループ入社
  5. 2009
    富裕層向け銀行部門の責任者
  6. 2015
    中南米地域の責任者、メキシコのバナメックスを統括
  7. 2019
    社長に就任
  8. 2021
    最高経営責任者に就任、米大手銀行で初の女性トップ
  9. 2021
    個人向け銀行を13ヶ国でたたむと発表
    就任の翌月
  10. 2023
    組織を5つの事業に作り直す
    社内の呼び名は「ボラボラ計画」
  11. 2024
    2026年までに2万人を減らすと公表
  12. 2025
    会長を兼任、バナメックス株25%を売却
  13. 2026
    四半期の売上が10年ぶりの高さに
数字で読む
在任
5
2021年3月〜
直近四半期の売上
$24.8B
10年ぶりの高さ
稼ぐ力 (RoTCE)
13.0%
2026年4〜6月期
社員数
21.9万人
2023年末は約24万人
02

事業を5つに束ね直した2023年

2023年9月、フレイザーは組織そのものを作り替えた。社内では「ボラボラ計画」と呼ばれた作業である。

地域ごとに積み上がっていた指揮系統をやめ、事業を5つに束ねた。決済、市場、法人向け、資産運用、米国の個人向けだ。

狙いは責任の在りかを見えるようにすること。5人の責任者が、それぞれの数字を自分の名前で背負う形にした。

フレイザーが手をつけた順番
数える
どの国のどの事業が稼げていないかを洗い出す
たたむ
個人向け銀行を13ヶ国で終わらせる
束ね直す
地域別をやめ、事業を5つに整理する
株主に返す
浮いた資本を配当と自社株買いへ
2021年から2026年まで、動かした順序はこの通り。会社を大きくする話が一つも入っていないのが、この5年の性格をよく表している

人も減らした。2024年に「2026年までに2万人減らす」と公表している。

社員数は2023年末の約240,000人から、2026年6月末には219,000人まで下がった。

メキシコも手放しにかかった。現地の看板銀行バナメックスの株を、2025年から段階的に売っている。

2026年6月末までに49%を売る道筋がつき、残りは市場の状況を見ながら株式公開する構えだ。

03

数字がやっと追いついてきた四半期

2026年4〜6月期、売上は$24.8Bとなった。四半期としては10年ぶりの高さである。

純利益は$5.8Bで、前の年の同じ時期より45%多い。1株あたりの利益は$1.96から$3.15へ伸びた。

5つの事業のうち4つで売上が二桁伸びている。会社を小さくしながら、稼ぎは増えている状態だ。

いまのシティは、どこで稼いでいるのか
市場(株や債券の売買を仲介)$7.0B
決済・証券管理(企業のお金の出入りを支える)$6.4B
四半期として過去最高、収益率は30%超
米国の個人カード$4.5B
資産運用$3.2B
法人向け(増資や買収を手伝う)$1.9B
2026年4〜6月期の売上。この5つに撤退中の事業などを足して、全社で$24.8B

浮いた資本は株主に返している。配当を12%増やし、$30Bの自社株買いを始めた。

自社株買いは株数そのものを減らすので、1株あたりの利益が上がる。株価が戻ってきた理由の一つだ。

04

まだ外れていない足かせ

宿題は残っている。最大のものは、2020年に受けた業務改善命令がいまも解けていないことだ。

2024年には、対応の遅れを理由に2つの当局から合わせて約$136Mの制裁金を科された。データ整備が期限に間に合わなかったためだ。

フレイザーは7月の決算説明で、作業の大半が社内の検査を通ったと述べた。ただ、解除を決めるのは当局の側である。

シティの再建は一直線には進まない

ジェーン・フレイザー(2026年7月の決算説明)

稼ぐ力の差も残ったままだ。同じ四半期のJPモルガンは23%、シティは13.0%で、開きは小さくない。

米国の個人カード部門では、提携先や商品への投資がかさみ、この四半期は費用の伸びが売上の伸びを上回った。

会社が置いた目標は2027〜2028年に11〜13%、その先で14〜15%。追い抜く計画ではなく、差を縮める計画である。

05

この人の通信簿は、どこに出るか

フレイザーの5年は、新しい事業を生んだ物語ではない。すでにあるものを減らし、残った部分の効率を上げた物語だ。

銀行の経営者としては地味に映る。ただ、広げすぎた会社を直す方法は、実のところこれ以外にあまりない。

2025年10月には会長も兼ねた。取締役会がこの路線を続けると判断した、という意味になる。

引き算だけの人ではない。2026年8月、ステーブルコインの規制法案(クラリティ法)への支持を表明し、デジタル資産を新しい商売の芽として扱い始めている。

シティグループの株を見るなら、四半期ごとの利益より次の2つを追うとよい。この人の仕事が見えやすくなる。

  • 業務改善命令がいつ解けるか — 解ければ対応に充てていた費用が浮き、事業への投資に回る
  • 稼ぐ力が11%を超えて居座るか — 会社が置いた次の目標の入り口がそこにある

この2つが動いたとき、フレイザーの引き算はようやく足し算に変わる。それまでは、まだ途中の会社である。

出典:

  • Citigroup Inc.「Second Quarter 2026 Results」(2026年7月14日) — https://www.citigroup.com/rcs/citigpa/storage/public/Earnings/Q22026/2026prqtr2rslt.pdf
  • Citi 2026年第2四半期 決算説明会の記録 — https://www.citigroup.com/rcs/citigpa/storage/public/2026psqtr2-transcript.pdf
  • 米連邦準備制度理事会「Federal Reserve Board fines Citigroup $60.6 million」(2024年7月10日、通貨監督庁と合わせて約$135.6M) — https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/enforcement20240710a.htm
  • Citi「Citi Announces Completion of 22.6% of Sale of Equity Stake in Banamex」 — https://www.citigroup.com/global/news/press-release/2026/citi-announces-completion-22-6-percent-sale-equity-stake-banamex
  • JPMorgan Chase「Second-Quarter 2026 Results」 — https://www.jpmorganchase.com/content/dam/jpmc/jpmorgan-chase-and-co/investor-relations/documents/quarterly-earnings/2026/2nd-quarter/6cded9fd-a164-4e6c-8cff-377357cf105c.pdf
  • HOKANEWS「Citigroup CEO Jane Fraser Backs CLARITY Act for Crypto」(2026年8月) — https://www.hokanews.com/2026/08/citigroup-ceo-jane-fraser-backs-clarity.html
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。