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ジム・ファーリー
Jim Farley
Ford Motor[F]
時価総額 $56.1Bプロ経営者

看板をたたんだ人

ジム・ファーリーJim Farley

社長・CEO生年 1962アルゼンチン・ブエノスアイレス
2026.06.256 分で読める内容確認 2026.08.26

トヨタで 17 年、フォードで 19 年。2020 年に社長となり電気自動車に賭けたが、2025 年に自らその計画をたたみ、商用車を会社の柱に据え直した。

自動車電気自動車商用車

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
66
安定運転

目立つブレなく、地味に積み上げる。

直近 10 年の数字より
売上の伸び61
利益率の規律71
資本配分の規律65
売上 平均伸び
+2.8%±9.2pp
営業利益率
1.1%±3.0pp
配当年比率
100%

ジム・ファーリー 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01社員番号 389 番の、孫
  2. 02会社を三つに割った
  3. 03看板政策を、自分でたたむ
  4. 04もうけていたのは、地味なほうだった
  5. 05読むときに見る二つ

就任してまもなく、ジム・ファーリーは電気自動車で勝つと宣言した。5 年後、その計画をたたんだのも本人だった。

仕様表で分かるのは物語の半分だ。ハンドルを握らないと競合には勝てない

ジム・ファーリー

フォードは 2025 年に $8.2B の純損失を出した。金額としては 2008 年の金融危機以来の大きさである。

ただし本業が傾いたわけではない。損の中身はほとんどが、作りかけでやめた電気自動車の設備と車種だった。

数字で読む
社長在任
6年目
2020 年 10 月〜
2025 年の純損失
-$8.2B
2008 年以来の大きさ
商用車部門の利益
$6.8B
会社全体の調整後利益とほぼ同額
F シリーズ販売
82.8万台
49 年連続で米国一
01

社員番号 389 番の、孫

1962 年、ブエノスアイレス生まれ。父は銀行員で、一家はのちに米国東部のコネチカット州へ移る。

自動車との縁は母方の祖父から来ている。エメット・トレーシーは T 型フォードを組み立てた初期の工員で、社員番号は 389 番だった。

ファーリーは今もその社員証を机に置いている。

ジョージタウン大学で経済学とコンピューター科学を学び、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で経営学修士を取った。

  1. 1962
    ブエノスアイレスで生まれる
    父の赴任先。育ちは米国コネチカット州
  2. 1990
    トヨタの米国法人へ。レクサス立ち上げに参加
  3. 2003
    若者向けブランド「サイオン」を任される
  4. 2007
    フォードへ移籍
    アラン・ムラリー社長に誘われて
  5. 2015
    フォード欧州事業の責任者
  6. 2020
    10 月 1 日、社長に就任
  7. 2021
    再建計画「フォード・プラス」を発表
  8. 2022
    会社をガソリン車・電気自動車・商用車の三つに分ける
  9. 2023
    労働組合が 6 週間のストライキ、賃上げ 25% で妥結
  10. 2025
    電気自動車の計画を縮小し、$19.5B の特別損失を計上
  11. 2026
    米関税の一部が違法と判断され $1.3B の還付。電気自動車の赤字は3四半期連続で縮小
  12. 2027
    約 $30,000 の中型電動ピックアップを出す予定

最初の就職先はフォードではなかった。トヨタの米国法人に入り、高級車ブランドのレクサスを立ち上げる部隊で働いている。

のちに若者向けブランド「サイオン」を任された。無駄をそぎ落とす作り方と、ブランドを一から育てる仕事を、ここで覚えている。

トヨタには 17 年いた。2007 年、当時のフォード社長アラン・ムラリーに誘われて移る。

欧州事業、新興国事業、最高執行責任者と担当を広げ、2020 年 10 月に社長へ。祖父が工員として入った会社を、孫が率いることになった。

02

会社を三つに割った

2021 年、ファーリーは再建計画を発表した。名前は「フォード・プラス(Ford+)」。クルマを売って終わりにせず、その後も付き合いが続く商売へ変える、という宣言だ。

翌年、彼は珍しいことをした。会社を三つの事業に分け、それぞれの利益を別々に公表することにしたのだ。

2025年、クルマ3事業の売上はこう分かれた
ガソリン車 (フォード・ブルー)$101BF-150 など商用車 (フォード・プロ)$66B配送・工事の現場向け電気自動車 (フォード・モデル e)$6.7B$6.7B・全体の 4%
金融のフォード・クレジットを除いた3事業。売上でいちばん小さい電気自動車が、そのまま最大の赤字の出どころになった

狙いははっきりしていた。ガソリン車で稼ぎ、その金を電気自動車へ注ぎ込む。投資家には進み具合が数字で見える。

ところが実際は逆に転んだ。電気自動車の部門は 2023 年から毎年 $5B 前後の赤字を出し続ける。

2025 年の売上は $6.7B。三つの中でいちばん小さいのに、いちばん大きな損を出す事業になった。

03

看板政策を、自分でたたむ

2022 年のファーリーは強気だった。電気自動車に $50B を投じ、2026 年には年 200 万台を作ると公言している。

届いた数字は宣言とかけ離れた。米国で電気自動車を選ぶ人の増え方が、想定より何年も遅かったからだ。

その頃ファーリーは、中国のシャオミが作った電気自動車を上海から空輸させ、半年ほど自分の足に使っている。感想は率直だった。手放したくない、と公の場で認めている。

2025 年 12 月、彼は向きを変える。大型の電気トラックの計画を中止し、設備をまとめて損として落とした。

5年かけて、賭け方をこう変えた
2022|追う
電気自動車に $50B。年 200 万台をめざす
2023-25|損が続く
電気自動車の部門は毎年 $5B 前後の赤字
2025|たたむ
大型の計画を中止。特別損失 $19.5B
2027|出直す
約 $30,000 の中型電動ピックアップ
いまの目標は2029年に電気自動車で黒字化すること。当初の「2026年に年200万台」からは大きく後退している

代わりに前へ出したのは、安いほうの電気自動車だ。2027 年、ケンタッキー州の工場から約 $30,000 の中型ピックアップを出す。

部品を 2 割減らし、組み立ての工程も削る設計にした。高い車を少し売るのではなく、安い車をたくさん売って利益を出す形へ切り替えたことになる。

この転換の評価は割れている。判断が遅れた末の $19.5B とも読めるし、傷が浅いうちに止めたとも読める。

04

もうけていたのは、地味なほうだった

電気自動車の騒ぎの陰で、静かに伸びた事業がある。商用車のフォード・プロだ。

配送業者や工事業者にバンやトラックを売り、そのあと整備と部品と管理ソフトで稼ぎ続ける。

「売って終わりにしない商売」を、ファーリーは電気自動車ではなく商用車のほうで実現したことになる。

2025 年、この部門だけで $6.8B を稼いだ。特別損失を除いた会社全体の利益と、ほぼ同じ額である。

車両の位置や燃費を管理する有料ソフトの契約は 84 万件まで増えた。1 年で 3 割の伸びである。

自動車産業の未来を知りたいなら、テスラではなくフォード・プロを見てほしい

ジム・ファーリー

弱点も同じ場所にある。利益がピックアップと商用車に寄っており、この二つが同時に鈍ると受け皿がない。

人件費も上がった。2023 年のストライキ後に結んだ契約は、北米の労務費を $8.8B 押し上げる。

05

読むときに見る二つ

フォードの株を見るなら、四半期の売上より先に商用車部門の利益を確認するとよい。ここが崩れないかぎり、電気自動車の赤字は耐えられる範囲に収まる。

2026 年 4〜6 月期、電気自動車部門の赤字は前の四半期からさらに縮み、3 四半期連続の改善になった。黒字にはまだ遠いが、向きは上がっている。

もう一つは 2027 年の $30,000 のピックアップだ。ファーリーが計画をたたんだうえで賭け直した一台であり、これが売れなければ次の札は残っていない。

祖父の社員証が机にある会社で、彼は自分の看板を一度たたんだ。次に立てる看板が売れるかどうかが、そのまま答えになる。

出典:

  • Ford Motor Company「Ford Reports Fourth-Quarter, Full-Year 2025 Financial Results」 — https://www.fromtheroad.ford.com/us/en/articles/2026/ford-reports-fourth-quarter-full-year-2025-financial-results
  • Ford Motor Company Form 10-K (fiscal 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/37996/000003799626000015/f-20251231.htm
  • Ford Motor Company「Ford's $5B Bet on America: New EV Platform, Assembly Process and Midsize Truck」 — https://www.fromtheroad.ford.com/us/en/articles/2025/ford-affordable-electric-vehicle-platform-midsize-electric-truck
  • CNBC「Ford to record $19.5 billion in special charges as it pulls back on EV plans」 — https://www.cnbc.com/2025/12/15/ford-ev-pullback.html
  • Fortune「Ford CEO Jim Farley has been driving a Chinese-made Xiaomi EV for 6 months」 — https://fortune.com/2024/10/23/ford-ceo-jim-farley-driving-chinese-xiaomi-electric-vehicle/
  • CBS News「Ford to receive $1.3 billion government refund for Trump's IEEPA tariffs」 — https://www.cbsnews.com/news/ford-1-3-billion-ieepa-tariff-refund-trump/
  • Ford Motor Company「4 Things to Know About Ford's Second-Quarter Results」 — https://www.fromtheroad.ford.com/us/en/articles/2026/ford-reports-second-quarter-2026-financial-results
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。