本文へ移動
メアリー・バーラ
Mary Barra
General Motors[GM]
時価総額 $71.2Bプロ経営者

やめる決断の経営者

メアリー・バーラMary Barra

会長・CEO生年 1961米国・ミシガン州ウォーターフォード
2026.06.246 分で読める内容確認 2026.08.26

18歳でGMの実習生になり、34年後に頂点へ。就任直後の欠陥公表に始まり、欧州・無人タクシー・電気自動車の減速まで、やめる判断を重ねて会社の形を変えた。

自動車EV製造業

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
71
守りの職人

利益率は崩さないが、成長は鈍い。

直近 10 年の数字より
売上の伸び44
利益率の規律81
資本配分の規律87
売上 平均伸び
+2.9%±9.6pp
営業利益率
5.2%±1.7pp
連続増配
4 年
配当年比率
100%

メアリー・バーラ 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 0118歳で工場に入り、34年かけて頂点へ
  2. 02就任直後に、自社の欠陥を認めた
  3. 0312年は、やめた事業の数で数えられる
  4. 04電気自動車も、途中で速度を落とした
  5. 05やめなかったもの

2014年4月、最高経営責任者になって3か月足らずのメアリー・バーラは、米議会の証言台にいた。自社の欠陥を認めるためだった。

ゼネラルモーターズは2009年に一度倒産した会社である。政府の資金で救われ、作り直された。

その頂点に、工場労働者の娘が座った。以来12年、彼女がやってきたことの多くは、何かをやめる判断だった。

数字で読む
CEO 在任
12
2014年1月〜
2025年の売上
$185B
前年比 -1%
2025年の純利益
$2.7B
前年は $6.0B
GM での年数
46
18歳の実習生から
01

18歳で工場に入り、34年かけて頂点へ

1961年、ミシガン州のデトロイト郊外に生まれた。父レイはGMのポンティアック工場で金型を作る職人で、39年間そこに勤めた。

1980年、18歳でGMの実習生になる。会社が持つケタリング大学に通いながら工場で働く制度で、当時はGMインスティテュートと呼ばれていた。

専攻は電気工学。学生時代の持ち場は、ポンティアック・フィエロという小型スポーツカーの車体検査だった。

1985年に学位を取って正社員になり、1990年には会社の費用でスタンフォード大学へ送られ、経営学修士(MBA)を取る。

戻ってからは工場の設計、人事、商品開発と持ち場を移した。技術者が人事の責任者に就くのは、社内でも異例だった。

2011年に商品開発の責任者となり、2014年1月に最高経営責任者へ。米国の大手3社で、女性がその席に就くのは初めてだった。

  1. 1961
    ミシガン州で生まれる
    父はGMの工場で39年働いた
  2. 1980
    18歳でGMの実習生に、ケタリング大学で電気工学
  3. 1985
    学位を取り、正社員として入社
  4. 1990
    会社の費用でスタンフォード大学へ、経営学修士を取得
  5. 2009
    GMが破産法の適用を申請、政府の資金で再建
  6. 2011
    商品開発の責任者に
  7. 2014
    最高経営責任者に就任、米大手3社で初の女性
  8. 2014
    点火スイッチの欠陥で260万台をリコール
    のちに124人の死亡が認定される
  9. 2016
    取締役会の会長を兼務
  10. 2017
    欧州のオペルとボクスホールを売却、インドでの国内販売も終了
  11. 2021
    2035年までに乗用車をすべて電気自動車にすると宣言
  12. 2023
    全米自動車労働組合が6週間のストライキ、25%の賃上げで妥結
  13. 2024
    自動運転子会社クルーズの無人タクシー事業を打ち切り
  14. 2025
    電気自動車の設備を縮小、10〜12月だけで約 $7.2B を特別損失に計上
  15. 2026
    中国の合弁を2047年まで延長、通期の純利益見通しを2度目の上方修正
02

就任直後に、自社の欠陥を認めた

2014年2月、GMは260万台のリコールを発表する。走行中に点火スイッチが切れ、エンジンとエアバッグが同時に止まる欠陥だった。

社内では10年以上前から知られていた。それでも公表されないまま、事故が積み上がっていった。

4月1日、バーラは米下院の公聴会に呼ばれる。就任から3か月足らずでの証言だった。

今日の GM は、正しいことをする

メアリー・バーラ(2014年4月、米下院公聴会)

過去の判断は間違っていた、と彼女は認めた。会社を守る答弁をしなかったことに、業界からは驚きの声が上がった。

この欠陥は最終的に124人の死亡と275人の負傷に結びつけられる。刑事罰の $900M と被害者基金の $594.5M を含め、支払いは約 $2.5B に達した。

悪い数字を先に出す。この一件が、そのあと12年のやり方を決めた。

03

12年は、やめた事業の数で数えられる

バーラの経営は、増やす方向より減らす方向に振れてきた。

2015年にロシアでの量産をやめた。2017年には欧州のオペルとボクスホールをフランスの自動車大手へ売り、インドでの国内販売も終えた。2020年には豪州のホールデンを畳んだ。

どれも赤字か、その一歩手前の事業だった。売上は減るが、利益率は上がる。

いちばん大きな撤退は自動運転だった。GMは2016年にクルーズという新興企業を買い、運転手のいないタクシーに $10B 以上を注ぎ込んだ。

2023年、サンフランシスコで歩行者を巻き込む事故が起き、営業許可が止まる。

2024年12月、バーラは無人タクシー事業そのものを打ち切った。技術は市販車の運転支援へ回し、年 $1B 以上の支出を止めている。

バーラが撤退を決めるときの順番は、いつも同じだった
赤字が続くと認める
隠さず数字を先に出す
売るか、畳むか
買い手がいれば売る
損は一度に計上
翌期に持ち越さない
資金は北米へ
稼げる事業に戻す
欧州は売却、豪州は閉鎖、無人タクシーは打ち切り。手放し方は違っても、損を先に出して資金を北米へ戻す点は変わらない
04

電気自動車も、途中で速度を落とした

2021年、バーラは2035年までに乗用車をすべて電気自動車にすると宣言した。アルティウム(Ultium)と名付けた自社設計の電池を土台に、新型を並べる計画だった。

売れ行き自体は悪くない。2025年の米国販売は約17万台で、前年より48%増えた。シボレーは米国で2番目に売れる電気自動車のブランドになった。

それでも計画は削られる。米政府が1台あたり $7,500 の税優遇を打ち切り、燃費規制も緩めたためだ。

2025年10〜12月、GMは電気自動車の設備と投資を約 $7.2B 分まとめて損失に計上した。関連の特別損失は累計で $10.9B になっている。

電気自動車の減速を、一年で飲み込んだ
2023年$10.1B
2024年$6.0B
2025年$2.7B
10〜12月に約 $7.2B の特別損失
2026年の会社予想$8.4〜9.8B
株主に帰属する純利益。2025年の落ち込みは本業の失速ではなく、電気自動車の設備を一度に整理した結果。2026年の会社予想は7月に2度目の上方修正をした後の数字

私たちは、お客さまの需要がある場所に合わせて調整する。導いてくれるのはお客さまだ

メアリー・バーラ(2023年12月)

宣言そのものは取り下げていない。ただ、2035年という年号を自分から口にすることは減った。

05

やめなかったもの

削り続けた12年で、バーラが手をつけなかった事業がある。北米の大型ピックアップトラックと多目的車(SUV)だ。

2025年、会社全体の純利益は $2.7B だった。その裏で北米部門は $10.5B の営業利益(調整後)を稼いでいる。

2026年4〜6月の1台あたり平均販売価格は $52,000。値引きを抑え、台数ではなく単価で稼ぐ形を崩していない。

同じ考えは、株数の扱いにも出ている。

利益を増やせない年でも、1株あたりは増やせる
2023年末12.0億株
2025年末9.04億株
2年で約25%減
発行済み株数。自社株買いで株そのものを減らしている。2026年1月にはさらに $6B の買い戻し枠と、四半期配当の20%増額を決めた

中国も、やめなかった。

かつて年200万台を売った市場で、2025年の販売は56万台まで落ちた。工場と車種を削り、2年続けて赤字を出している。

それでも2026年8月、合弁相手の上汽集団(SAIC)との契約を2047年まで20年延ばした。2026年上半期の持分利益は $248M の黒字に戻っている。

この株を追うなら、見る数字は3つでいい。北米の1台あたり単価、電気自動車の販売台数、そして中国が黒字を保てるかどうかだ。

父が39年勤めた会社は、娘の12年で守備範囲を大きく狭めた。欧州も豪州もロシアも手放し、無人タクシーの夢も畳んだ。

次の経営者に渡されるのは、世界中で戦うGMではない。バーラが選んで残した、北米で確実に稼ぐほうのGMである。

出典:

  • General Motors「GM releases 2025 financial results and 2026 guidance」(2026年1月27日) — https://www.prnewswire.com/news-releases/gm-releases-2025-financial-results-and-2026-guidance-board-declares-dividend-at-20-higher-quarterly-rate-and-approves-new-6-0-billion-share-repurchase-authorization-302670831.html
  • General Motors Form 10-K 一覧, U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001467858&type=10-K
  • GM Newsroom「GM to refocus autonomous driving development on personal vehicles」(2024年12月10日) — https://news.gm.com/home.detail.html/Pages/news/us/en/2024/dec/1210-gm.html
  • CNN Money「GM CEO Barra: 'I am deeply sorry'」(2014年4月1日) — https://money.cnn.com/2014/04/01/news/companies/barra-congress-testimony/
  • CNBC「GM, Chinese automaker extend joint venture for 20 years」(2026年8月4日) — https://www.cnbc.com/2026/08/04/gm-chinese-automaker-extend-tie-up-amid-geopolitical-tensions-with-us.html
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。