本文へ移動
イーロン・マスク
Elon Musk
Tesla[TSLA]
時価総額 $1.29T創業者

約束が遅れて届く人

イーロン・マスクElon Musk

CEO・技術責任者生年 1971南アフリカ・プレトリア
2026.06.086 分で読める内容確認 2026.08.26

電気自動車とロケットを同時に率いる起業家。約束はいつも数年遅れて届く。2025 年はテスラの売上が初めて前年を割り、蓄電池と無人タクシーという次の柱が試されている。

EVAIロボット

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
39
成長優先派

売上は伸ばせるが、利益率は揺れる。

直近 10 年の数字より
売上の伸び77
利益率の規律23
資本配分の規律18
売上 平均伸び
+36.9%±30.1pp
営業利益率
3.1%±9.0pp

イーロン・マスク 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全6章)
  1. 012025 年、テスラの売上が初めて前年を割った
  2. 0217 歳でカナダへ渡り、2 日で博士課程を辞めた
  3. 03「高い」ではなく「材料はいくらか」から始める
  4. 04無人タクシーは、6 都市に広がってもまだ小さい
  5. 05報酬は $2T から $8.5T までの階段
  6. 06この人の会社を見るなら

イーロン・マスクの約束は、たいてい数年遅れて届く。届いてしまうから、市場は毎回それを信じ直してきた。2026 年のいま、その信用に決算が追いついてきている。

率いる会社はいくつもある。長く非上場だったロケット会社のスペースXは、2026 年 6 月にナスダックへ上場した。調達額は約 $75B で、株式公開としては史上最大になっている。

数字で読む
時価総額
$1.23T
2026 年 8 月時点
2025 年の売上
$94.8B
前年は $97.7B
2025 年の販売台数
164万台
2 年続けて前年割れ
最高経営責任者の在任
17
2008 年就任
01

2025 年、テスラの売上が初めて前年を割った

2025 年の通期売上は $94.8B だった。前の年の $97.7B を下回っている。上場してから一度もなかったことだ。

減ったのは車である。自動車部門の売上は 10% 減って $69.5B。販売台数は 164 万台で、2 年続けて前年を割った。

代わりに伸びた事業がある。電力会社や工場に置く大型の蓄電池だ。売上は 27% 増の $12.8B、設置量は前年比 49% 増の過去最高を記録した。

2025 年、車が減って蓄電池が伸びた
車の販売(2024 年)$77.1B
車の販売(2025 年)$69.5B
前年から 10% 減
蓄電池と発電(2024 年)$10.1B
蓄電池と発電(2025 年)$12.8B
前年から 27% 増、設置量は過去最高
テスラの 2025 年通期決算より。金額は部門別の売上。棒の長さは金額に比例している

利益はもっと削れた。本業のもうけを示す営業利益は $4.36B で、2022 年に稼いだ $13.66B の 3 分の 1 以下になっている。

値下げで台数を守った代償である。それでも中国のビーワイディー(BYD)に電気自動車の販売台数で抜かれ、世界一の座を明け渡した。

02

17 歳でカナダへ渡り、2 日で博士課程を辞めた

1971 年、南アフリカのプレトリア生まれ。父は技術者、母はモデル兼栄養士だった。

10 歳で独学のプログラミングを始め、12 歳のときに自作ゲームを $500 で売っている。学校ではいじめに遭い、孤立した少年期を過ごした。

17 歳で単身カナダへ渡り、その後アメリカの大学で物理学と経済学を学ぶ。1995 年にスタンフォードの博士課程へ進むが、2 日で辞めて弟と会社を作った。

その会社ジップ2(Zip2)はコンパックに $307M で売れた。次に立ち上げた決済会社はペイパルに育ち、2002 年にイーベイへ $1.5B で売却されている。

手にした資金を、彼はそのままロケットと電気自動車へ注ぎ込む。守りに回らなかったことが、いまの姿につながっている。

  1. 1971
    南アフリカ・プレトリアで生まれる
  2. 1988
    17 歳で単身カナダへ渡る
  3. 1995
    スタンフォード博士課程を 2 日で辞め、弟とジップ2を創業
  4. 1999
    決済会社エックス・ドット・コム(のちのペイパル)を創業
  5. 2002
    ペイパルをイーベイへ $1.5B で売却、スペースXを創業
  6. 2004
    テスラに出資し、会長に就く
  7. 2008
    テスラの最高経営責任者に就任
  8. 2010
    テスラが新規株式公開、公開価格は 1 株 $17
  9. 2012
    モデルSを発売し、量産メーカーへ
  10. 2020
    初の通期黒字、米国の代表的な株価指数(S&P 500)に採用
  11. 2022
    ツイッターを $44B で買収、のちにエックスへ改名
  12. 2023
    人工知能の会社エックスエーアイ(xAI)を設立
  13. 2025
    無人タクシーの営業をテキサス州オースティンで開始
  14. 2025
    株主が史上最大の報酬案を承認(賛成 75% 超)
  15. 2026
    エックスエーアイがスペースXに吸収され、合併額は史上最大に
  16. 2026
    スペースXが上場、調達額 $75B は株式公開として史上最大
03

「高い」ではなく「材料はいくらか」から始める

マスクのやり方は、値段を疑うところから始まる。ロケットが高いのは、そういうものだからではない。

材料と加工の原価を一つずつ数え直せば、別の答えが出るのではないか。この問いの立て方が、彼の会社に共通している。

ロケットでも電池でも、同じ 4 段を回している
常識を疑う
「業界ではこれが普通」を出発点にしない
原価まで分解
金属や電池の材料はいくらかを数える
自分で作る
外注をやめ、工場を社内に持つ
壊して学ぶ
失敗の回数を増やし、早く直す
この順番で回すと、業界の常識より安く作れる場合がある。ただし物理的に作れるものに限られる

だから工場を自前で持つ。電池もロケットのエンジンも社内で作り、外の会社に握られる部分を減らしていった。

失敗は選択肢だ。失敗していないなら、十分に革新していない

イーロン・マスク

失敗の扱いにも性格が出る。スペースXはロケットの着陸に何度も失敗し、そのたびに壊れた機体から学んで次を打ち上げた。

この手口が効くのは、作るものが物理的なときだ。設計と原価に答えがあるなら、資金と試行回数さえあれば近づける。

04

無人タクシーは、6 都市に広がってもまだ小さい

テスラの株価を支えてきたのは、車ではなく約束だった。運転手のいないタクシーが街を走れば、1 台あたりの稼ぎは何倍にもなる。

その無人タクシー(ロボタクシー)は 2025 年 6 月、テキサス州オースティンで走り始めた。ただし助手席には安全監視員が座っていた。

2026 年 1 月、マスクは監視員を外したと宣言した。実際には別の車が後ろから追走して見張っており、完全に無人の車は数台にとどまっていた。

4 月にはダラスとヒューストンで、最初から監視員なしの営業に踏み切った。7 月にはマイアミ、オーランド、タンパへも広がり、稼働都市は 6 つになっている。

それでもオースティンの完全無人車はいまだ数台規模で、遠隔の見守りは続く。「来年には全米で走る」という言い方は 10 年以上くり返されてきたが、都市の数を着実に増やしている点はこれまでと違う。

05

報酬は $2T から $8.5T までの階段

2025 年 11 月、テスラの株主は史上最大の報酬案を承認した。賛成は投票の 75% を超えている。

中身は 12 段の階段だ。時価総額が $2T に届けば 1 段目、$8.5T まで上れば満額になる。マスクの持ち株は約 13% から 25% へ増える。

いまの時価総額は $1.23T。2026 年 2 月には $1.58T あったから、1 段目にすら届いていない。

2025 年 11 月に承認された報酬の階段
いま $1.23T
2026 年 8 月時点の時価総額
1 段目 $2T
ここに届いて、ようやく 12 段の 1 つ目
満額 $8.5T
10 年で持ち株は約 13% から 25% へ
12 段のうち最初と最後だけを並べた。達成には販売台数などの事業目標も同時に必要になる

会社の重心も動いた。2026 年 2 月、人工知能のエックスエーアイ(xAI)がロケットのスペースXに吸収された。

合わせた評価額は $1.25T とされ、企業の合併としては史上最大になった。

そのスペースXは 6 月に上場した。公開価格 $135 での評価額は $1.75T、初日は $161 で引け、終値ベースの評価額は約 $2.1T に達している。テスラより大きい。

2025 年には、連邦政府の無駄を削る役所(政府効率化省)を率いた時期もある。5 月に離れたが、その間の政治的な発言は欧州を中心にテスラの販売へ影を落とした。

06

この人の会社を見るなら

四半期の販売台数だけを追っても、テスラの値段は説明できない。この株には、遅れて届く約束への前払いが含まれているからだ。

見るべき数字は 3 つある。蓄電池の売上が伸び続けているか。無人タクシーの都市と台数が増えているか。そして車の粗利が下げ止まったか。

3 つが揃えば、$2T の 1 段目は現実味を持つ。揃わなければ、前払いした分が値段から抜けていく。

投資家は毎年、彼の約束をもう一度信じるかどうかを決め直している。2026 年は、その判断がいちばん難しい年になった。

出典:

  • Tesla, Inc. Form 10-K (fiscal 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001318605&type=10-K
  • Tesla Investor Relations(四半期・通期の業績資料) — https://ir.tesla.com/
  • CNBC「Tesla says shareholders approve Musk's $1 trillion pay plan」 — https://www.cnbc.com/2025/11/06/tesla-shareholders-musk-pay.html
  • CNBC「China's BYD overtakes Tesla as world's top EV seller for the first time」 — https://www.cnbc.com/2026/01/02/chinas-byd-to-overtake-tesla-as-worlds-top-ev-seller-for-first-time.html
  • CNBC「Elon Musk's SpaceX acquiring AI startup xAI ahead of potential IPO」 — https://www.cnbc.com/2026/02/02/elon-musk-spacex-xai-ipo.html
  • CNBC「SpaceX IPO takeaways: SPCX closes at $161, jumping 19% after record debut」(2026年6月12日) — https://www.cnbc.com/2026/06/12/spacex-ipo-spcx-live-updates.html
  • Electrek「Tesla launches 'Robotaxi' in Houston and Dallas with tiny geofences」(2026年4月18日) — https://electrek.co/2026/04/18/tesla-robotaxi-launches-dallas-houston-small-geofences/
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。