NVIDIA が新しい GPU を発表する。その GPU を載せたラック型サーバーを、世界で一番早く出荷するのが Super Micro だ。
誰よりも早く動く。それしか我々には道がない
シリコンバレー南端のサンノゼで、リャンが 1993 年に始めた小さなサーバーメーカーは、AI ブームで突如として NVIDIA・AMD GPU を載せた液冷サーバーの主要サプライヤーに躍り出た。会計問題で 2024 年に株価は急落したが、リャン本人は依然として「もっと作れ、もっと早く」と現場を回している。
台湾の田舎から、シリコンバレーへ
1958 年、台湾の地方都市に生まれる。地元の中学・高校を出て 国立台湾大学で電気工学を専攻、米国 テキサス工科大学で電気工学修士。卒業後にカリフォルニアへ移り、最初は小さなマザーボード会社で技術者として働いた。
1993 年、妻のサラ・リューと共に Super Micro Computer を創業。サンノゼのオフィスでマザーボードを設計・販売し、自分で半田ごてを持って試作機を組み立てるところから始まった。リャンは「夜中まで設計、朝は工場で組立」を 10 年続けたと当時の社員は語る。
会社はサーバー専業として地道に成長したが、転機は 2017 年以降の AI ブーム。NVIDIA の DGX サーバの組立を Super Micro が請け負い、続いて GPU 8 基搭載のラック型サーバを次々と量産。液冷技術を早く取り込み、Meta・xAI・CoreWeave などの大型受注に繋がる。
「速さ」を売る会社
Super Micro の競争力は 新しい GPU の出荷タイミングに合わせて、ラックサーバを世界最速で量産する点にある。Dell、HPE といった大手は社内承認プロセスが多く、新製品の市場投入が遅れがち。Super Micro は 創業者が直接技術設計と販売の両方を見るため、判断が速い。
主な顧客は NVIDIA リファレンス設計を採用する 2nd Tier クラウド、すなわち CoreWeave、Lambda、xAI などのネオクラウド企業。AWS や Microsoft のような Hyper-scaler は自社設計に向かう中で、「すぐに動かしたい」プレイヤーは Super Micro を選ぶ。
加えて 液冷技術。GPU 1 基あたりの消費電力が 700W〜1000W を超える時代、空冷では追いつかない。Super Micro は GPU メーカーと並行して液冷ラックを設計し、データセンター側の改修を支援する。これが他社にない優位性だ。
仕事中毒の創業者
リャンの社内評は「仕事しか頭にない」で一致する。深夜に工場の組立ラインを見て回り、週末にエンジニアと設計レビューをし、決算の前日まで顧客訪問を続ける。67 歳になっても CEO 引退の話を一切しない。
最後に勝つのは、いちばん早く動いた会社だ
経営スタイルは「家業の延長」と評される。妻のサラ・リューは創業時から取締役、関連会社の Ablecom、Compuware(リャンの兄弟が経営する台湾の部品メーカー)との取引も多く、ガバナンスが「家族と親戚で固められている」と Hindenburg レポートが指摘した。市場の信頼を回復するため、社外取締役を増やし、Compuware 取引の透明性を上げる作業が 2025 年以降の課題だ。
それでも、AI サーバの注文は途切れない。「リャンに頼めば、明日には試作機が出る」という業界内の評判は健在で、それが Super Micro の生命線だ。
ガバナンスと、汎用化の壁
最大のリスクは 会計・ガバナンス。2024 年の Hindenburg レポート以降、SEC との対話、新監査人探し、財務諸表の再提出と続いた。Nasdaq 上場維持が一時危ぶまれたほどで、リャンの最大の信頼資産だった「現場で速く作る」評判が、ガバナンスでの脆さで相殺された。
第二のリスクは 製品の汎用化。AI サーバのラック設計は徐々に標準化され、Dell・HPE・Lenovo が同等品を出してくる。「速い」だけで差別化できる期間は永遠ではない。Super Micro はソフトウェア(運用管理、冷却制御)に踏み出しつつあるが、ハードウェア専業のままで持ちこたえるか、ソフト含みで進化するか、判断を迫られる。
そして NVIDIA への依存。売上の中心が NVIDIA GPU ラックである以上、NVIDIA の供給配分・新製品発表サイクルが Super Micro の業績を直撃する。自社の運命を一社に握られている構図は脆い。
読み終わりに
リャンの面白さは、シリコンバレーで「速さ」だけを武器に 30 年戦い続けた点にある。派手な M&A も、ソフトウェアでの再定義もない。ただ「新しい GPU が出るから、ラックを設計し直す」を毎年やってきた。それが AI ブームで爆発した。
Super Micro の株を見るときは、四半期売上より NVIDIA の新製品出荷タイミングと 会計監査の状況を読むと、見え方が変わる。リャンが残す最後の作品が 液冷の業界標準化なのか、それともガバナンス再建で終わるか — そこに次の 3 年が見える。





