本文へ移動
Morgan Stanley · MSプロ経営者

テッド・ピック

Ted Pick

会長・CEO生年 1968/ 米国・ニューヨーク
TP

市場混乱のトレーダーが、静かな商売を選んだ

トレーディングで鍛えられた経営者が、モルガン・スタンレーの重心を波の荒い取引業務から、報酬が安定する資産運用へ移してきた。2026年、預かり資産は$10Tの大台に達している。

2026.08.265 分で読める内容確認 2026.08.27

投資銀行 · 資産運用 · ウォール街

裏にいる会社を辿る → 裏に 7 社

経営の型

在任 2024.01〜現在 / 集計 FY2024〜2025・2 期 (在任外の 10 期は除外)・参考値
型はまだ読めません

本人の期間の決算が 2 期分と短いため、右の数字は参考値です。型は 4 期そろってから付けます。

営業利益率 平均
—
設備投資/売上
—
配当を出した年
100%

良い・悪いを表す点数ではありません。業界の構造、景気、市況、会社の成熟度も同じ数字に映ります。型は本人の期間の決算が 4 期そろってから付けます。出典は SEC EDGAR の年次報告。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01ベネズエラで育った、生粋のウォール街の人間
  2. 02トレーダーが、トレーディング頼みの経営から離れた
  3. 03記録更新が、当たり前になった四半期
  4. 04稼ぎ方を変えても、消えない波
  5. 05この人を通して数字を読むなら

モルガン・スタンレーは2008年、取引業務への依存ゆえに破綻の淵に立った。その市場混乱の現場で育ったテッド・ピックが、いまは資産運用という静かな商売を稼ぎの中心に育てている。

数字で読む

CEO在任
2年2024年1月〜。2025年から会長も兼務
直近四半期売上
$21.3B2026年第2四半期、過去最高
預かり資産
$10T資産運用・投資運用の合計で到達
時価総額
$358B2026年8月
01

ベネズエラで育った、生粋のウォール街の人間

1968年、米ニューヨークで生まれる。幼少期の一部はベネズエラの首都カラカスで過ごした。

ミドルベリー大学を優等で卒業し、ハーバード大学経営大学院で修士を取った。1990年、モルガン・スタンレーに入社する。以来、他社を経験せず一つの会社でキャリアを積んできた。

出発点は債券などのトレーディング部門である。2002年にマネジングディレクターへ昇格し、営業・トレーディング部門の責任者として固定利付き商品事業の立て直しを主導した。

2008年の金融危機時には、株式資本市場部門の責任者として資金調達の陣頭に立っている。当時のモルガン・スタンレーは、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループから$9Bの出資を仰ぎ、辛うじて生き延びた。市場混乱の現場を歩き続けたキャリアだった。

  1. 1968
    米ニューヨークで生まれる
    幼少期はベネズエラ・カラカスで過ごす
  2. 1990
    ミドルベリー大学を優等で卒業、モルガン・スタンレーに入社
  3. 1994
    ハーバード大学経営大学院で修士を取得
  4. 2002
    マネジングディレクターに昇格
  5. 2008
    金融危機下、株式資本市場部門を率いて資金調達を主導
  6. 2023
    共同社長として機関投資家部門を統括
  7. 2024
    1月、CEOに就任
    前任ジェームズ・ゴーマンの後を継ぐ
  8. 2025
    1月、会長を兼務
  9. 2026
    預かり資産が$10Tの大台に達する
02

トレーダーが、トレーディング頼みの経営から離れた

モルガン・スタンレーはかつて、株式や債券の売買で稼ぐ比重が極端に高い会社だった。2008年の金融危機では、その構造ゆえに一時、破綻の淵に立っている。

前任のジェームズ・ゴーマンは、この体質を変える買収を重ねた。証券仲介のスミス・バーニー、オンライン証券のイートレード、資産運用会社イートン・バンスを次々に取り込み、資産運用と投資運用を稼ぎの柱に育てた。

ピックはトレーディング出身でありながら、この路線を引き継ぎ加速させている。2026年第1四半期、資産運用部門の税引前利益率は30.4%に達し、機関投資家部門に劣らない収益源に育った。

2つの部門の四半期収益、差はほとんどなくなった
資産運用部門$8.5B
前年同期比+16%
機関投資家部門$10.7B
2026年第1四半期。かつては機関投資家部門(トレーディング・投資銀行)が圧倒的だった
03

記録更新が、当たり前になった四半期

2026年第2四半期、モルガン・スタンレーは売上$21.3B、1株利益$3.46という過去最高を記録した。有形自己資本利益率(ROTCE)は26.6%に達している。

資産運用部門の預かり資産は、この四半期だけで$148B純増した。新規株式公開(IPO)が相次ぎ、従業員に付与された自社株が現金化・移管されて流れ込んだことが押し上げた形だ。この経路を担うのが、買収で取り込んだ株式報酬管理サービス(旧イートレード)である。

資産運用だけで、$10Tという規模を語れる段階に来ている

— テッド・ピック

資産運用と投資運用の両部門を合わせた預かり資産は、この四半期のうちに$10Tという大台に達した。その少し前の6月、ピックは資産運用部門だけでも$10Tに届くという新しい目標を自ら掲げていた。

04

稼ぎ方を変えても、消えない波

資産運用の比重を高めても、機関投資家部門の収益は依然として市況に左右される。株式や債券の取引量が細れば、この部門の利益は簡単にしぼむ。

買収で取り込んだイートレードやイートン・バンスの顧客基盤を、どこまで手数料収入に変換できるかも問われ続けている。統合の完成度は、まだ道半ばだ。

ピック自身はトレーディングの現場で鍛えられた人物である。市況の荒れる局面での判断力は評価される一方、景気後退局面での経営手腕はまだ試されていない。

57歳になったいまも在任はまだ2年余り。前任ゴーマンが14年率いた会社を、どこまでの期間、どんな形で導くかはこれからの数字が語ることになる。

05

この人を通して数字を読むなら

ピックが引き継いだのは、トレーディング頼みの会社を、資産運用という安定した稼ぎ方へ組み替える仕事の続きである。

だからモルガン・スタンレーの株を見るときは、四半期ごとの取引収益の大小より、資産運用部門の預かり資産がどれだけ積み上がっているかを見るとよい。

資産運用部門単独で$10Tという新しい目標は、相場の波に左右されにくい収益基盤を、あとどれだけ厚くできるかという宣言でもある。

出典:

  • Morgan Stanley, "Ted Pick, Chairman and CEO" — https://www.morganstanley.com/about-us-governance/operating-committee/ted-pick
  • Benzinga, "'We Can Talk About $10 Trillion In Wealth Alone:' Morgan Stanley CEO Ted Pick Raises Growth Target" — https://www.benzinga.com/news/financing/26/06/53185052/morgan-stanley-ceo-10-trillion-wealth-management-record-q1-revenue
  • WealthBriefing, "Morgan Stanley's Wealth Management Arm Posts Record Q2 2026 Net Revenues" — https://www.wealthbriefing.com/html/article.php/morgan-stanleys-wealth-management-arm-posts-record-q2-2026-net-revenues-
  • Fast Company, "5 things to know about Ted Pick, the new CEO of Morgan Stanley" — https://www.fastcompany.com/90973815/morgan-stanley-new-ceo-ted-pick-experience-background
  • FinancialContent, "Morgan Stanley Shatters Records in Q1 2026" — https://www.financialcontent.com/article/marketminute-2026-4-15-morgan-stanley-shatters-records-in-q1-2026-wealth-management-surge-and-ai-innovation-fuel-54-stock-leap
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。