この記事の流れ(全5章)
16 歳のとき、自分の学費のために惣菜店を $7,000 で買った少年がいた。40 年後、その人物は世界有数の企業向けソフト会社を2社、続けて大きく育てることになる。
惣菜店の店主から、営業の世界へ
マクダーモットは 1961 年、ニューヨーク州アミティビルに生まれた。祖父はバスケットボール殿堂入りの選手、家は裕福ではなかった。
16 歳のとき、地元の惣菜店を $7,000 で買い取り、その利益で大学の学費をまかなった。ダウリング大学で経営学を学び、卒業後はゼロックスに 17 年在籍する。
その後ガートナー社長、シーベル・システムズの営業統括を経て、2002 年にドイツの企業向けソフト大手SAPの米国法人CEOに就く。
2010 年に共同CEO、2014 年にはアメリカ人として初めてSAP単独CEOに就任した。この間、SAPの時価総額は $39B から $156B まで伸びている。
2019 年 10 月、SAPを退任。同年 11 月、ServiceNowのCEOに転じる。当時はまだクラウドの企業向けソフト会社として発展途上だった。
- 1961ニューヨーク州アミティビルで生まれる
- 197716歳で惣菜店を買い取り学費を稼ぐ
- 2002SAPアメリカのCEOに就任
- 2014SAP単独CEOに就任アメリカ人として初
- 2019SAP退任、ServiceNow CEOに就任
- 2025年12月1株を5株に分割
- 2026年5月投資家向け説明会で長期目標を刷新2030年までにルール60超を掲げる
- 2026年7月四半期売上$3.99B、AI事業が年間契約額$1B超に
企業の裏方業務を1枚の画面にまとめる商売
ServiceNowが売るのは、社内のさまざまな申請や手続きを1つの画面にまとめるソフトである。もとはIT部門の問い合わせ管理から始まった。
いまは人事・経理・法務など、企業のあらゆる裏方業務に対象を広げている。マクダーモット就任時はまだIT向けが中心の小さな会社だった。
当社は「ルール56」を実現しており、「ルール60」への道も見えている。ServiceNowはまだ始まったばかりだ
「ルール」とは、売上の伸び率と利益率を足した経営指標である。この数字が高いほど、速く伸びながら稼げていることを意味する。
AI版「何でも窓口」への衣替え
マクダーモットがいま賭けているのは、社内のAIをすべて一つの画面から管理させる「AI管制塔」という発想である(AI Control Tower)。
この 9 か月でAIエージェントの導入件数は 9 倍に増えたという。エヌビディアやマイクロソフトとの提携も広げている。他社のAI基盤の上に、自社の管理機能を載せる戦略である。
買収にも積極的だ。直近 6 か月だけで $8.8B を投じ、AIセキュリティや業務自動化の会社を次々に取り込んでいる。
この人を通して数字を読むなら
マクダーモットは技術者ではなく、生涯を通じて営業と経営を磨いてきた人物である。SAPで示した「時価総額を数倍にする」型を、ServiceNowでも再現しようとしている。
だからこの会社の株を見るときは、四半期売上の伸び率だけでなく、買収を重ねてもなお利益率が保てているかを見るとよい。
AI事業の年間契約額が $1B を超えたことは節目である。ここからどれだけ早く企業の標準ツールになれるかが、次の通信簿になる。
出典:
- ServiceNow, Inc., "ServiceNow Reports Second Quarter 2026 Financial Results"(2026年7月22日)— https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1373715/000137371526000072/erq2fy26.htm
- Wikipedia, "Bill McDermott" — https://en.wikipedia.org/wiki/Bill_McDermott
- ServiceNow, Inc., Form 10-K(fiscal year 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001373715&type=10-K
- ServiceNow, Inc., Form 8-K(2019年10月、CEO就任発表)— https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001373715&type=8-K&dateb=20191101





