本文へ移動
ServiceNow · NOWプロ経営者

ビル・マクダーモット

Bill McDermott

会長・CEO生年 1961/ 米国・ニューヨーク州アミティビル

デリの店主から二度目の大型経営へ

16歳で買った惣菜店を大学の学費に変え、SAPの時価総額を4倍にした後、ServiceNowでもう一度同じことをやっている。企業の受託業務にAIを組み込む商売を、成長率トップのまま走らせる経営者。

2026.08.264 分で読める

企業向けソフト · AI · SaaS

裏にいる会社を辿る → 裏に 1 社

経営の型

在任 2019.11〜現在 / 集計 FY2020〜2025・6 期 (在任外の 6 期は除外)
成長優先型

利益率より売上の伸びを先に取る。市場の取り合いを勝ち切る運転。

この人を通して見る数字。見るのは伸び率の鈍り方。成長が一段落した四半期に、利益率へ舵を切れるかで評価が分かれる。

売上の伸び振れ 小
中央値
+22.9%
ブレ
±3.3pp
前年割れ
0 回
利益率振れ 中
営業利益率 平均
8.1%
ブレ
±3.8pp
資本配分一定
設備投資/売上
7.3%

良い・悪いを表す点数ではありません。業界の構造、景気、市況、会社の成熟度も同じ数字に映ります。型は本人の期間の決算から機械的に読んだもの (基準: 売上成長率の中央値 20% 以上)。出典は SEC EDGAR の年次報告。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01惣菜店の店主から、営業の世界へ
  2. 02企業の受託業務を1枚の画面にまとめる商売
  3. 03AI版「何でも窓口」への衣替え
  4. 04評価される点と、まだ見えない点
  5. 05この人を通して数字を読むなら

16 歳のとき、自分の学費のために惣菜店を $7,000 で買った少年がいた。40 年後、その人物は世界有数の企業向けソフト会社を2社、続けて大きく育てることになる。

数字で読む

CEO 在任
7年2019 年 11 月に就任
時価総額
$132.9B2026 年 8 月時点
直近四半期売上
$3.99B前年同期比 +24%
AI事業の年間契約額
$1B超2026年第2四半期に到達
01

惣菜店の店主から、営業の世界へ

マクダーモットは 1961 年、ニューヨーク州アミティビルに生まれた。祖父はバスケットボール殿堂入りの選手、家は裕福ではなかった。

16 歳のとき、地元の惣菜店を $7,000 で買い取り、その利益で大学の学費をまかなった。ダウリング大学で経営学を学び、卒業後はゼロックスに 17 年在籍する。

その後ガートナー社長、シーベル・システムズの営業統括を経て、2002 年にドイツの企業向けソフト大手SAPの米国法人CEOに就く。

2010 年に共同CEO、2014 年にはアメリカ人として初めてSAP単独CEOに就任した。この間、SAPの時価総額は $39B から $156B まで伸びている。

2019 年 10 月、SAPを退任。同年 11 月、ServiceNowのCEOに転じる。当時はまだクラウドの企業向けソフト会社として発展途上だった。

  1. 1961
    ニューヨーク州アミティビルで生まれる
  2. 1977
    16歳で惣菜店を買い取り学費を稼ぐ
  3. 2002
    SAPアメリカのCEOに就任
  4. 2014
    SAP単独CEOに就任
    アメリカ人として初
  5. 2019
    SAP退任、ServiceNow CEOに就任
  6. 2025年12月
    1株を5株に分割
  7. 2026年5月
    投資家向け説明会で長期目標を刷新
    2030年までにルール60超を掲げる
  8. 2026年7月
    四半期売上$3.99B、AI事業が年間契約額$1B超に
02

企業の受託業務を1枚の画面にまとめる商売

ServiceNowが売るのは、社内のさまざまな申請や手続きを1つの画面にまとめるソフトである。もとはIT部門の問い合わせ管理から始まった。

いまは人事・経理・法務など、企業のあらゆる受託業務に対象を広げている。マクダーモット就任時はまだIT向けが中心の小さな会社だった。

通期売上、6年でここまで伸びた
2019年通期(就任直前)$3.46B
2025年通期$13.28B
6年で約3.8倍
会社発表の通期実績。2019年は就任直前、2025年は直近の通期

当社は「ルール56」を実現しており、「ルール60」への道も見えている。ServiceNowはまだ始まったばかりだ

— ビル・マクダーモット

「ルール」とは、売上の伸び率と利益率を足した経営指標である。この数字が高いほど、速く伸びながら稼げていることを意味する。

03

AI版「何でも窓口」への衣替え

マクダーモットがいま賭けているのは、社内のAIをすべて一つの画面から管理させる「AI管制塔」という発想である(AI Control Tower)。

ServiceNowが狙う立ち位置
社内にAIが乱立する
部署ごとに別々のAIを導入
誰がどのAIを使うか見えなくなる
管理・監査ができない
ServiceNowが一括で統制する
AI事業の年間契約額が$1B超に
AIを作る会社ではなく、企業内のAIを束ねて管理する会社を目指す

この 9 か月でAIエージェントの導入件数は 9 倍に増えたという。エヌビディアやマイクロソフトとの提携も広げている。他社のAI基盤の上に、自社の管理機能を載せる戦略である。

買収にも積極的だ。直近 6 か月だけで $8.8B を投じ、AIセキュリティや業務自動化の会社を次々に取り込んでいる。

04

評価される点と、まだ見えない点

評価される点ははっきりしている。売上の伸び率で同規模の企業向けソフト会社を上回り続け、SAP時代と同じ「時価総額を数倍にする」実績をもう一度作りつつある。

一方で、いまの利益の伸びには買収による費用増加が重なっている。直近四半期の会計上の利益は、非会計基準の利益より大きく見劣りする水準だった。

AI事業が本当に企業の受託業務すべてを束ねる存在になるかは、まだ検証の途中である。競合のマイクロソフトやSAPも同じ座を狙っている。

マクダーモットは 65 歳になった。2 度目の大型経営でも、講演や取材への露出を惜しまない売り込み型の経営スタイルは変わっていない。

05

この人を通して数字を読むなら

マクダーモットは技術者ではなく、生涯を通じて営業と経営を磨いてきた人物である。SAPで示した「時価総額を数倍にする」型を、ServiceNowでも再現しようとしている。

だからこの会社の株を見るときは、四半期売上の伸び率だけでなく、買収を重ねてもなお利益率が保てているかを見るとよい。

AI事業の年間契約額が $1B を超えたことは節目である。ここからどれだけ早く企業の標準ツールになれるかが、次の通信簿になる。

出典:

  • ServiceNow, Inc., "ServiceNow Reports Second Quarter 2026 Financial Results"(2026年7月22日)— https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1373715/000137371526000072/erq2fy26.htm
  • Wikipedia, "Bill McDermott" — https://en.wikipedia.org/wiki/Bill_McDermott
  • ServiceNow, Inc., Form 10-K(fiscal year 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001373715&type=10-K
  • ServiceNow, Inc., Form 8-K(2019年10月、CEO就任発表)— https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001373715&type=8-K&dateb=20191101
公開情報(各社開示・公的資料・各種報道)を編集してまとめたものです。 人物評価には筆者の解釈を含みます。投資判断は別途、自身の責任で行ってください。