この記事の流れ(全6章)
パランティアという社名は、指輪物語に出てくる「見る石」から取った。カープはこの名を、CIAの投資部門から出た資金で登記した。
弁護士の父と美術教師の母のもとで
カープは 1967 年、ニューヨーク市で生まれた。父は公民権運動に関わった弁護士、母は美術の教師である。
育ったのはフィラデルフィア。裕福ではない家庭で、法律と芸術、両方の空気を吸って育った。
大学はハバフォード大学で哲学を学んだ。その後スタンフォード大学のロースクールに進み、法務博士号を取る。
ここで出会ったのが、のちにパランティアを共に作るピーター・ティールだった。二人とも、周囲とはどこか馴染まない学生だったという。
法律の道には進まなかった。代わりにドイツへ渡り、フランクフルト大学で社会理論の博士号を取得している。
その後しばらくは、ロンドンで投資運用の小さな会社を営んでいた。会社を経営した経験は、この時が初めてだった。
- 1967米国ニューヨーク市で生まれる父は公民権弁護士、母は美術教師
- 1989ハバフォード大学で哲学を学ぶ
- 1992スタンフォード大学ロースクールで法務博士号ここでピーター・ティールと出会う
- 2002フランクフルト大学で社会理論の博士号を取得
- 2003ティールらと共にパランティアを創業投資運用の仕事からの転身
- 2004CIAの投資部門イン・キューテルが出資対テロ捜査向けの解析基盤として始まる
- 2020証券取引所に直接上場この年、報酬総額で世界最高額の経営者になった
- 2024S&P 500種指数に採用
- 2026四半期売上が前年比93%増、時価総額が世界有数の規模に
スパイ機関の金で会社を作る
パランティアが生まれたのは 2003 年、9.11 の同時多発テロから 2 年後である。
まとまった元手を出したのはティールだが、もう一社、CIAが持つ投資部門イン・キューテルも資金を入れた。
当時は誰も欲しがらない仕事だった。集めたのはテロ捜査官が使うための、バラバラなデータをひとつの画面でつなぐ解析ソフトである。
この解析基盤は、のちに軍や情報機関の標準的な道具になった。パランティアの名を一般に広めたのも、この政府向けの仕事だった。
AIの波に乗り、企業向けが政府に追いついた
長らくパランティアの顧客は、国防や治安の機関が中心だった。企業向けの事業は伸び悩んでいた時期が長い。
流れが変わったのは、生成AIの流行に合わせて基盤を作り替えてからだ。同じ解析の力を、企業の在庫管理や需要予測にも使えるようにした。
2026 年 4〜6 月期の売上高は $1.94B、前年同期比 93% の伸びである。
創業からしばらくは政府専業に近く、公開後も政府向けが過半を占めてきた稼ぎ方は、いまではほぼ半分ずつになっている。会社は今期の売上見通しを $8.15B まで引き上げた。
給料をわざと安く抑えた時代と、面談をしない経営
カープには長らく変わった評判がついて回った。会社の評価額が $20B に達しても、給料は年 $125,000 に抑えていたと伝えられる。
私が金を稼ぐのは、あなたたちが金を稼いだときだけだ
その後、2020 年の上場に合わせて発行された株式報酬により、その年の報酬総額は $1.1B に達した。上場企業の経営者として当時世界最高額だったとされる。
働き方にも独特の癖がある。派手な色のスポーツウェアで出社し、部屋には太極拳の剣を置いているという。
面接では、演説をそらで暗唱してから太極拳の型を見せ、挨拶もせず去ったという逸話が伝わる。1対1の面談を避け、米ニューハンプシャー州の納屋で仕事をすることもあるそうだ。
敵に回されがちな仕事を、あえて引き受ける
パランティアの顧客には、国境警備や軍の情報部門も含まれる。同業他社の多くが距離を置く領域だ。
この立ち位置は諸刃の剣になる。防衛や治安の予算は他社が入りにくい分、競合が少ない。
一方で、監視技術への警戒から批判を浴びる場面もある。社員の一部が抗議して退職した例も報じられてきた。
株価にも独特の癖が出ている。時価総額 $445.5B は、会社が見通す通期売上 $8.15B の 50 倍を超える水準だ。
成長への期待がすでに大きく織り込まれている、ということでもある。伸びが鈍れば、株価の反応も大きくなりやすい。
この人を通して数字を読むなら
カープは、発明家というより仲介者に近い経営者だ。国家が持つ大量のデータを、使える形に整える仕事を売ってきた。
その仕事は、政府という景気に左右されにくい顧客と、企業という伸びしろの大きい顧客の両方を持つ強みになった。
だからパランティアの株を見るときは、企業向け売上が政府向けに並ぶ勢いを保てるかを見るとよい。
もう一つ見るべきは、いまの株価がどれだけ先の成長を織り込んでいるかだ。この会社は、伸びが止まった瞬間に評価が大きく揺れる構えのまま走っている。
出典:
- Palantir Technologies Inc., Q2 2026 決算発表資料 (SEC 8-K, 2026年8月2日) — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1321655/000132165526000039/a2026q2ex991pressrelease.htm
- Businesswire「Palantir Reports Q2 2026 U.S. Comm Revenue Growth of 149% Y/Y」(2026年8月2日) — https://www.businesswire.com/news/home/20260802523449/en/Palantir-Reports-Q2-2026-U.S.-Comm-Revenue-Growth-of-149-YY-and-Revenue-Growth-of-93-YY-Raises-FY-2026-Revenue-Guidance-to-82-YY-Growth-and-U.S.-Comm-Revenue-Guidance-to-134-YY-Crushing-Consensus-Expectations
- Britannica Money「Alex Karp | Cofounder & CEO of Palantir Technologies」— https://www.britannica.com/money/Alex-Karp
- Forbes「How A 'Deviant' Philosopher Built Palantir, A CIA-Funded Data-Mining Juggernaut」(Andy Greenberg, 2013年) — https://www.forbes.com/sites/andygreenberg/2013/08/14/agent-of-intelligence-how-a-deviant-philosopher-built-palantir-a-cia-funded-data-mining-juggernaut/
- Fortune「Palantir's Alex Karp」CEO報酬に関する記事 (2025年5月5日) — https://fortune.com/2025/05/05/palantir-ceo-pay-alex-karp/





