テスラと聞けば、電気自動車(EV)が浮かぶ。EVブームの主役であり、時価総額で世界の自動車メーカーの頂点に立った会社だ。
だが、テスラの稼ぎ方を「車を売る会社」とだけ読むと、この会社の業績と株価の動きはうまく説明できない。中身は三層になっている。
一層目:車の販売——実は逆風の中にいる
売上の中心はいまも車だ。2025年の総売上約$98Bのうち、車関連が約$77Bを占める。ただしこの部分は前の年より6%減った。値下げ競争、モデルの高齢化、そして米国で2025年9月末にEV購入の税優遇(1台あたり最大$7,500)が打ち切られた影響が重なったためだ。
つまり本業の車は、成長どころか踏ん張りどころにある。それでもテスラが注目され続けるのは、残りの二層があるからだ。
二層目:蓄電池——静かに育った第二の柱
あまり知られていないが、テスラは巨大な蓄電池の会社でもある。電力会社向けの大型蓄電池(メガパック)や家庭用の蓄電池を売る部門は、2025年に売上約$10Bと前の年から67%も伸びた。
AIのデータセンターや再生可能エネルギーの普及で、電気を「ためて、必要なときに使う」需要は増え続けている。車が伸び悩む間も、この部門は四半期ごとに記録を更新してきた。規模はまだ車の8分の1ほどだが、伸び率では主役だ。
売り方も普通の自動車メーカーと違う
車の売り方そのものにも、テスラらしさがある。ふつうの自動車メーカーは販売店(ディーラー)の網を通して車を売るが、テスラは自社の店とインターネットで直接売る。中間の取り分がないぶん、値付けの自由が利く。2023年ごろから続く値下げ攻勢を機動的に打てたのは、この直販の仕組みがあったからだ。
もうひとつが、通信でのソフト更新だ。売った後の車に、スマートフォンのように新しい機能を配信できる。運転支援機能を後から有料で解放するなど、「売った後にも稼ぐ」道を持っている点は、従来の自動車メーカーにはなかった発想だ。
三層目:クレジット収入——規制が生む、ほぼ丸ごと利益のお金
三つ目が独特だ。多くの国や地域には「自動車メーカーは一定割合を排ガスの少ない車にせよ」という規制があり、達成できないメーカーは、達成しているメーカーから「クレジット(達成枠)」を買って埋め合わせできる。
EVしか作らないテスラは、このクレジットを売る側だ。作るのに追加の費用がほぼかからないので、この収入はほとんどそのまま利益になる。利益が薄い年には、この収入が黒字を支えたこともあった。
ただしこの柱は、テスラの実力というより「他社がEVで出遅れていること」と「規制が続くこと」の上に乗っている。実際、米国で規制が緩められた2025年には、クレジット収入は前の年から3割近く減った。
四層目:株価を動かす「まだ利益になっていない物語」
そしてテスラには、損益計算書に載らない四層目がある。未来への期待だ。
テスラの時価総額は、販売台数でずっと上を行く既存の自動車大手をはるかに超える。この差を埋めているのが、自動運転タクシー(ロボタクシー)や人型ロボット(オプティマス)といった「これから」の事業への期待だ。ロボタクシーは2025年に米国の一部都市で試験的な運行が始まったが、利益への貢献はまだこれからで、期待の大部分は先払いされている。
だからテスラの株価は、今期の販売台数より、「物語が前に進んだか、遅れたか」を示すニュースで大きく動く。この会社を台数だけで読むと、株価の振れ幅に必ず戸惑うことになる。
崩れるとしたらどこか
このモデルの弱点は、三層がそれぞれ別の理由で揺れることだ。
車は、補助金の打ち切りと競争激化が直撃する。優遇終了前の駆け込みで2025年7〜9月は過去最高の販売を記録したが、その反動が警戒された。一方で、補助金がなくなった後の米国EV市場では体力のない競合が先に脱落し、テスラのシェアはむしろ59%まで盛り返した——逆風が「ふるい」として働いた形だ。
クレジット収入は、政策ひとつで細る。蓄電池は伸びているが、電力会社向けの大型案件が中心で、発注のタイミング次第で四半期ごとの数字が振れやすい。
そして四層目の物語は、実現が遅れるだけで株価を大きく揺らす。自動運転の安全性への疑問、規制当局の調査、経営者の言動——利益の数字と関係のないニュースが、この会社の評価を上下させ続けてきた。
まとめ
テスラを「EVを売る会社」として読むと、補助金と競争に振り回される自動車メーカーに見える。だが実際の稼ぎは、逆風の中の車、急成長する蓄電池、規制が生むクレジットの三層でできていて、株価はさらにその先の「四層目の物語」で動く。
決算を見るときは、車の台数だけでなく、蓄電池の伸びとクレジット収入の増減、そして未来の物語の進み具合——この四つを分けて眺めると、ニュースの意味がつかみやすくなる。
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