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ラリー・カルプ
Larry Culp
GE Aerospace[GE]
時価総額 $359Bプロ経営者

会社を割って、立て直した男

ラリー・カルプLarry Culp

会長・CEO
2026.08.266 分で読める

倒産寸前だった複合企業ゼネラル・エレクトリックに、外部出身で初のCEOとして入り、3つの会社に解体した。生き残った航空エンジン事業は、いま世界有数の時価総額を持つ企業になっている。

航空製造業ターンアラウンド

経営の一貫性

sodate 独自指標
総合スコア
42
立て直し中

数字の規律は、これからが正念場。

直近 10 年の数字より
売上の伸び0
利益率の規律50
資本配分の規律76
売上 平均伸び
-7.4%±21.0pp
連続増配
2 年
配当年比率
100%

ラリー・カルプ 体制を含む過去の数字。売上成長率の標準偏差・営業利益率の標準偏差・配当規律の 3 軸を平均。 言葉の一貫性 (過去 10-K テキスト比較) は Phase 2 で追加予定。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01配当を92%削った年
  2. 02医療機器の会社を5倍にした男が来た
  3. 03「まだ2回か3回の攻撃」
  4. 0447M ドルの賞与に、社員が抗議した
  5. 05この人を通して数字を読むなら

2018 年 12 月、GEの株価は 1 株 $6.66 まで落ちた。リーマン・ショックの底値と同じ水準である。その 2 か月前に会社へ移ってきた男が、いま世界有数の時価総額を持つ航空会社の会長を務めている。

数字で読む
CEO在任
8
2018年10月〜
会社を
3分割
2023〜2024年に完了
受注残高
$210B
2026年6月末
時価総額
$373.8B
2026年8月
01

配当を92%削った年

2018 年のGEは、100 年以上続いた複合企業の終わりが見えていた。株価はその年だけで 6 割近く下げた。

10 月末、会社は四半期配当を 1 株 12 セントから 1 セントへ切り下げると発表する。切り下げ幅は 92% にのぼった。

四半期配当は、1年で10分の1以下になった
切り下げ前12セント
切り下げ後1セント
92%減
2018年10月30日発表。2019年から適用

翌年 8 月には、バーナード・マドフの不正を見抜いた会計調査員ハリー・マルコポロスが、GE の会計を「エンロンより大きな不正」と名指しする報告書を出した。株価は 1 日で 11 年ぶりの下げ幅を記録している。

GE はこの主張を「根拠がない」と全面否定した。それでも、会社の信用がどれほど薄くなっていたかを示す出来事だった。

02

医療機器の会社を5倍にした男が来た

カルプはGEの生え抜きではない。それまでの14年間、計測機器や医療機器を扱う複合企業ダナハーを率いていた。

2001年から2015年、ダナハーの売上と時価総額はこの間でおよそ5倍になっている。手法は「ダナハー・ビジネス・システム」と呼ばれる、事業ごとに損益を切り分けて管理する仕組みだった。

ダナハーを退いたあと、4年間はハーバード・ビジネス・スクールで教えながら過ごしている。GEの取締役に加わったのは2018年4月、まだ社外の一人としてだった。

その年の10月、取締役会は最高経営責任者を交代させる。カルプが後任に選ばれた。GE 126年の歴史で、生え抜きではない人物がトップに就くのは初めてだった。

  1. 2001
    ダナハーの最高経営責任者に就任
  2. 2015
    ダナハーを退任
    在任中に売上・時価総額とも約5倍に
  3. 2018/4
    GEの社外取締役に就任
  4. 2018/10
    GEの最高経営責任者に就任
    生え抜きでない初のCEO
  5. 2021/11
    3社への分割を発表
  6. 2023/1
    GEヘルスケアを分離
  7. 2024/4
    GEベルノバを分離、GEエアロスペースが単独上場
  8. 2026
    受注残高$210B、時価総額は過去最高圏
03

「まだ2回か3回の攻撃」

カルプが持ち込んだのは、複合企業を丸ごと動かす発想の放棄だった。電力事業を8つほどの単位に切り分け、それぞれの責任者に自分の数字を見せて任せる。

うちの立て直しは、まだ2回か3回目の攻撃くらいの段階だ

ラリー・カルプ (2020年10月)

野球のイニングに例えたこの発言は、道半ばであることを隠さない率直さで知られていた。実際、答えが出るまでには3年かかっている。

2021年11月、会社は航空・医療・電力の3事業を、それぞれ独立した上場会社にすると発表した。2023年1月にGEヘルスケア、2024年4月にGEベルノバが分かれ、残った本体がGEエアロスペースになった。

ひとつの複合企業が、3社に分かれた
航空・医療・電力を1社で抱える
分割前のGE
2023年1月、医療機器を分離
GEヘルスケアとして上場
2024年4月、発電・送電を分離
GEベルノバとして上場
航空エンジンだけが残る
GEエアロスペース
分割完了は2024年4月。GEの名前と株式コードはエアロスペース側が引き継いだ
04

47M ドルの賞与に、社員が抗議した

立て直しが軌道に乗り始めた2021年、カルプの報酬案に社員が異議を唱える一幕があった。ボストン本社前で抗議が起き、株主総会では58%が反対票を投じている。

賞与案の柱は $47M 規模の株式報酬だった。会社の業績が上向く一方、賃上げに慎重だった時期と重なり、反発を招いた。

翌年、取締役会は年間の株式報酬を $15M から $5M へ引き下げることで合意する。カルプの総報酬額は2022年に $8.2M となり、前年の $22.7M から6割以上減った。

会社の再建と、経営者自身の取り分をどう釣り合わせるか。カルプの在任中、この緊張は繰り返し表に出ている。

05

この人を通して数字を読むなら

カルプがやったのは発明ではない。複合企業という重荷を切り離し、残った事業の中身が見える形に整えたことだ。

いまのGEエアロスペースは、ジェットエンジンを売った後の整備・部品交換で長く稼ぐ構造になっている。上期のエンジン納入は31%増え、4〜6月期のフリーキャッシュフローは43%伸びた。

受注残高$210Bのうち$170Bは、すでに飛んでいる機体の整備需要である。この数字が崩れない限り、業績の土台は揺るがない。

だからこの株を見るときは、新型エンジンの派手な受注よりも、納入したエンジンがどれだけ整備収入を生み続けているかを見るとよい。カルプが3年かけて作った仕組みの、答え合わせがここに出る。

出典:

  • GE Aerospace Announces Second Quarter 2026 Results — https://www.geaerospace.com/news/press-releases/ge-aerospace-announces-second-quarter-2026-results
  • How GE CEO Larry Culp pulled off the turnaround of the century, Fortune (2026年7月23日) — https://fortune.com/2026/07/23/general-electric-aerospace-healthcare-vernova-ceo-larry-culp-turnaround-jack-welch/
  • GE shares fall as low as $6.66, CNBC (2018年12月11日) — https://www.cnbc.com/2018/12/11/ge-shares-fall-to-6point66-a-share-lowest-close-during-financial-crisis.html
  • General Electric slashes quarterly dividend to just a penny a share, CNBC (2018年10月30日) — https://www.cnbc.com/2018/10/30/general-electric-earnings-q3-2018.html
  • GE falls the most in 11 years after Madoff whistleblower calls it a 'bigger fraud than Enron', CNBC (2019年8月15日) — https://www.cnbc.com/2019/08/15/ge-shares-drop-after-madoff-whistleblower-harry-markopolos-raises-red-flags-on-its-accounting.html
  • On Heels of Worker Dissent and Protests, Shareholders Vote Down GE CEO Larry Culp's Pay Package, Communications Workers of America (2021年) — https://cwa-union.org/news/releases/on-heels-of-worker-dissent-and-protests-shareholders-vote-down-ge-ceo-larry-culps-pay
  • GE Aerospace Launches as Independent, Investment-Grade Public Company Following Completion of GE Vernova Spin-Off — https://www.geaerospace.com/news/press-releases/ge-aerospace-launches-independent-investment-grade-public-company-following
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