普通の経営者は会社の柱を一度しか作らない。マーク・ザッカーバーグは 22 年の在任で、既に二度目の賭けを打っている。
速く動いて壊せ。何も壊していないなら、それは十分に速くないということだ
メタバースで巨額損失を出しても、彼は次のもっと大きな賭けに進む。創業者にしかできない経営を 22 年続けている男。
ハーバードの寮から
1984 年、米国ニューヨーク州ホワイトプレーンズ生まれ。父は歯科医、母は精神科医。子供時代からプログラミングに熱中、12 歳の時に父の歯科医院向けに簡易メッセンジャー「ZuckNet」を作っている。
2002 年にハーバード大学へ。心理学とコンピューターサイエンスを学びながら、寮の部屋で 2004 年 2 月、TheFacebook.com を立ち上げる。同年、大学を中退して西海岸へ。20 歳で起業家になった。
その後の歩みは知られている通り。2006 年に高校生・大学生以外にも開放、2007 年に広告売上が立ち、2012 年に IPO、時価総額 $100B 超え。途中で Meta(当時 Facebook)は Instagram ($1B, 2012)、WhatsApp ($19B, 2014) を相次いで買収、SNS 帝国を築いた。
メタバースという「外れ賭け」
2021 年 10 月、ザッカーバーグは社名を Facebook から Meta に変更、「メタバース企業になる」と宣言した。Reality Labs(旧 Oculus)に年 $10B 以上を投じ、VR ヘッドセット、デジタル空間を本格開発。
結果は厳しかった。Reality Labs は累計 $60B 以上の赤字を出し、メタバース利用者は伸びず、株価は 2022 年に 70% 下落。社外取締役からも批判の声が出た。
しかしザッカーバーグは引かなかった。創業者かつ議決権の過半数を握る ため、株主が反対しても路線変更を強制できない構造。「これは 10 年単位の賭け」と本人は主張し続けた。
オープンソース AI という二度目の賭け
2023 年から戦略が動き始める。Microsoft + OpenAI の躍進を見て、ザッカーバーグは 「AI モデルをオープンソースで配る」 という意外な戦略を選んだ。
オープンが勝つ。Linux と同じことが AI でも起きる
Llama シリーズを無償公開、開発者コミュニティを取り込む形で Google や OpenAI の閉鎖モデルに対抗。Meta は自前の AI チップ MTIA を開発し、NVIDIA 依存度を下げる方向にも動いている。
メタバース部門と AI 部門の予算配分は今、AI が遥かに大きくなっている。事実上、メタバース賭けの主軸を AI に置き換えた格好だ。
賞賛と、それでも残る不安
評価される点。経営トップが技術を深く理解している、長期視点と決断力、経営者として進化を続けている(公開当初の彼は対人苦手の典型、今は政治家・経営者の顔も持つ)。
リスクは深い。メタバース部門の累損 $60B 超は依然として帳消しになっていない。AI も Llama を無料で配って何で稼ぐかが見えにくい。広告依存(売上の 97%)は変わらず、TikTok や Reels で若年層を引き止め続けねばならない。
加えて、ザッカーバーグは 41 歳と若く、まだ 30〜40 年経営を続けると公言している。彼の独裁的な議決権構造(議決権の過半数を保持)が、株主からのチェックを難しくしている問題は、市場でも度々議論される。
読み終わりに
ザッカーバーグの面白さは、「失敗を恐れない代わりに、失敗を引きずらない」点にある。メタバースで $60B 失っても、彼は次の AI 賭けに進む。普通の経営者なら株主から外される額の損失だが、創業者構造がそれを許す。
Meta の株を見るときは、四半期広告売上より 「Llama の市場浸透速度」 と 「Reality Labs の損失額が縮小しているか」 を読むと、見え方が変わる。彼の二度目の賭けが当たれば、$1.6T は通過点になる。





