日銀は7月31日の会合で、政策金利を1.0%に据え置いた。前日までの円急騰を受けて利上げを見込む向きもあっただけに、この結果だけなら円安に戻ってもおかしくなかった。
それでも円高は続いた。ドル円は158.07円。据え置きの中身が、次の一手を示していたからだ。
8対1で割れ、展望レポートに利上げを明記
まず投票が8対1に割れ、1人の委員が1.25%への利上げを提案して否決されている。前回まで全員一致だったことを考えると、内部の温度が変わった。
そして声明と同時に出た展望レポートに、「政策金利を引き上げていく」という表現が入った。物価の見通しも、来年度の後半には生鮮食品を除く消費者物価が2%の目標を明確に上回るとしている。中央銀行が自分で「上げる」と書き、その根拠になる物価見通しまで並べたなら、市場は次の会合を織り込みに行く。9月の利上げ観測が残ったのは、この2つが理由だ。
介入は8.2兆円規模、米財務省も動いた
もう1つ、円高を支えたのは当局の動きである。木曜の急騰は政府・日銀による円買い介入とみられており、日銀の資金の出入りの見通しから逆算すると、規模は8.2兆円程度と推計された。4月末から5月初めの11.7兆円という過去最大には届かないが、十分に大きい。
さらに金曜、米財務省がニューヨーク連銀を通じて複数の銀行に「介入の可能性があるので備えるように」と伝えたと報じられた。他国の通貨防衛に対して、米国がここまで明示的に足並みをそろえるのは異例である。単独の介入は投機筋に試されやすいが、二国が組んだ介入は逆らいにくい。
米国株を持つ人にも関係がある
日本の金融政策は、米国株にも二重に効いてくる。1つは為替そのもので、トヨタのような日本企業のADRは、円安の追い風を前提に買われてきた分の巻き戻しにさらされる。
もう1つは金利差だ。日本が上げれば日米の金利差は縮み、円で借りて米国資産を買う動きの採算が悪くなる。金曜の米国では10年債の利回りが4.73%と2025年1月以来の高さまで上がっていたが、日本側が追い上げれば差は思ったほど開かない。
据え置きという結論だけを見れば、何も起きなかった会合に見える。実際には、次の一手の予告と、それを支える介入の実績が同時に出た日だった。
