この記事の流れ(全5章)
クアルコムの稼ぎ頭だった携帯電話向け事業は、直近四半期に前年比 20% 減った。それでも会社全体の利益は大きく崩れていない。自動車・IoT向けが 28% 伸びているからだ。
ブラジルの技術者、1Gの時代に無線を学ぶ
アモンは 1970 年、ブラジルのカンピーナスに生まれた。父は電気技師で、本人も地元の州立大学で電気工学を学んだ。
学生時代はまだ携帯電話の第1世代(1G)が主流だった時代である。無線通信への興味を早くから持っていたという。
卒業後はNECのブラジル法人に就職し、東京に赴任しながらサンディエゴのクアルコムとも接点を持った。1996 年、クアルコムに引き抜かれ、南米事業の拡大を任される。
一度退社しエリクソンなどを経たのち、2004 年にクアルコムへ復帰。以来、製品戦略・技術開発の要職を歴任した。
4Gの技術開発とスナップドラゴン半導体の成長を主導し、2018 年に社長、2021 年 6 月にCEOに昇格する。就任直後、世界的な半導体不足という試練が待っていた。
- 1970ブラジル・カンピーナスで生まれる
- 1992州立大学で電気工学の学士を取得
- 1996クアルコムに入社、中南米事業を担当
- 2004クアルコムに復帰、製品戦略の要職を歴任
- 2018クアルコム社長に就任
- 2021年6月CEOに昇格直後に世界的な半導体不足に直面
- 2021年Nuviaを$1.4Bで買収パソコン向けCPU開発の足がかりに
- 2026年非携帯電話事業の2029年度目標を$40Bへ倍増
スマホ頼みからの脱却
クアルコムの稼ぎは長らく、スマホ向け半導体の販売と、通信技術のライセンス収入の 2 本柱だった。とくにスマホ向けは会社の顔だった。
その一角が揺れている。主要顧客の一部が自社製の通信部品への切り替えを進めており、携帯電話向け売上は直近四半期で 20% 減った。
アモンが力を入れるのはこの空白を埋める事業だ。自動車向けは 23 四半期連続で 2 桁成長を続けており、すでに携帯電話に次ぐ柱に育っている。
データセンターという新しい戦場
非携帯電話事業の売上を2029年度に$40Bまで伸ばす。2024年11月に示した目標のほぼ2倍だ
2026 年、クアルコムはデータセンター向け半導体という新分野への参入を明らかにした。アームの命令セット(命令体系)を使いながら、回路の中身は自社設計の「Oryon」コアで作った「ドラゴンフライ」という製品である。
生成AIの基盤ソフトを手がけるModular社の買収も完了した。半導体だけでなく、それを動かすソフトの土台まで自前で持つ狙いがある。
縮む本業と、育たない新規事業のはざま
アモンの一番の課題は、縮む携帯電話向け事業を新規事業がどこまで補えるかである。自動車・IoT向けは伸びているが、まだ携帯電話向けの規模には遠い。
半導体材料や製造コストの上昇も重なり、直近四半期の利益は前年同期を下回った。会社は製品価格への転嫁を進めているが、効果が出るのはこれからである。
もう一つの構造的な課題は、売上の一部が中国市場に集中している点だ。米中の通商摩擦や規制の動向が業績に直結しやすい。
新規事業では、アームやエヌビディアなど有力企業との競合と協力が入り混じる。データセンター参入は、長年培った通信技術を新しい戦場に持ち込む賭けでもある。
この人を通して数字を読むなら
アモンは、スマホの通信規格を作ってきた技術者である。いまはその技術を、車・パソコン・データセンターへ広げる仕事に軸足を移している。
だからこの会社の株を見るときは、携帯電話向け売上の減り方だけでなく、自動車・データセンター向けがどこまでその穴を埋めるかを見るとよい。
$40Bという2029年度目標は、会社自身が示した通信簿である。達成できるかどうかは、次の数年の四半期決算のたびに答え合わせされる。
出典:
- Qualcomm Incorporated, "Qualcomm Announces Third Quarter Fiscal 2026 Results"(2026年7月29日)— https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/804328/000080432826000085/qcom062826erex991.htm
- Wikipedia, "Cristiano Amon" — https://en.wikipedia.org/wiki/Cristiano_Amon
- Qualcomm Incorporated, Form 10-K(fiscal year 2025), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0000804328&type=10-K
- Arm Holdings plc, "Arm Holdings plc Reports Results for the First Quarter of the Fiscal Year Ending 2027"(クアルコムのデータセンター参入に言及)— https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1973239/000197323926000113/exhibit992fye27q130-junx26.htm





