AIの電力不足の話が、発電所から工場へ降りてきた。
イーロン・マスク氏は、スペースXが天然ガスタービンの翼と静翼を自社で鋳造すると明らかにした。8月30日に計画が伝わり、本人が認めた形である。
場所はテキサス州バストロップ。作るのは大型の産業用ガスタービンに使う部品だ。
なぜロケット会社がタービンの翼を作るのか
理由はAIデータセンターにある。
計算機を動かすには電気が要る。系統からの供給が間に合わないため、敷地内にガス発電機を置く方式が広がっている。ところがその発電機が届かない。
詰まっているのはタービンの翼だった。摂氏1,000度を超える環境で回り続ける部品で、単結晶の鋳造という難しい工程を通る。
スペースXは、この工程を内側に取り込むことで発電機の待ち時間を18か月縮められるとしている。
量産できるのは世界に4社。全部が受注で埋まっている
この部品を工業規模で作れる会社は、世界に4社しかない。しかも4社とも手が空いていない。
GEベルノバは、生産枠が2030年まで実質的に埋まっていると説明してきた。理由はAI向けの需要である。
売り手が4社しかなく、全員が満杯という状態は、価格を決める力が売り手にあるということだ。そこへ5番目が現れる。
ハウメットは7.51%安。増収24.1%の決算の後に売られた
ハウメット・エアロスペースが7.51%安の$244.95で、一時は7.7%安まで下げた。約2か月ぶりの安値である。
同社の事業の中心は航空機向けで、産業用ガスタービンはその一部にすぎない。それでも売られたのは、需給の前提が変わるからだ。
決算が悪かったわけではない。8月6日に出した四半期は1株利益$1.33で予想の$1.24を上回り、売上は$2.55Bと前年比24.1%増だった。
スペースXが翼を外へ売らなくても、話は同じである。自分で使う分を自分で作れば、その分だけ既存の4社への注文が減る。価格と割り当ての力関係が動く。
見ておくべきは、内製がどこまで本物になるか
ただし、計画が発表された段階だという点は押さえておきたい。
単結晶の鋳造は歩留まりの難しい工程で、立ち上げに時間がかかる。スペースXが実際にどれだけの量を、いつ作れるようになるかはまだ示されていない。
それでも市場が7%動かしたのは、AIの電力不足という話が「発電所を建てる」から「部品を誰が作るか」へ移った合図と受け取ったからである。
市場全体の動きは朝刊にまとめている。
