この記事の流れ(全5章)
1989年、スペインのヤンセン・ファーマシューティカルズに一人の営業職が入る。33年後、その男はジョンソン・エンド・ジョンソンの会長兼CEOとして、140年の歴史で初めて年間売上$100Bを超える見通しの会社を率いている。
33年かけて頂点に立った営業職
デュアトは1962年、スペインのバレンシアに生まれた。バルセロナのESADE経営大学院でMBAを取り、米国アリゾナのサンダーバード国際経営大学院でも学んでいる。
キャリアは1989年、スペインのヤンセン・ファーマシューティカルズから始まった。2002年に米国へ転じ、以後は一貫してJ&Jの中で昇進を重ねている。
2011年に医薬品部門の世界会長、2018年には執行委員会の副会長に就いた。2021年8月にCEO就任が決まり、2022年1月に正式就任、2023年1月には会長も兼ねる。
- 1962スペイン・バレンシアで生まれる
- 1989ヤンセン・ファーマシューティカルズ(スペイン)に入社
- 2002米国へ転勤
- 2011医薬品部門の世界会長に就任
- 2018執行委員会の副会長に就任
- 2022/1CEOに就任
- 2023/1会長を兼務
- 2023/8消費者向け事業をKenvueとして分離完了(IPOは同年5月)
- 2026見通しで売上が初めて$100Bを超える
消費者向けを切り離し、薬と機器に絞った
デュアトがCEOとして最初に手掛けた大きな決断が、タイレノールやバンドエイドを抱える消費者向け事業の切り離しだった。この事業は2023年5月にKenvueとしてIPOし、同年8月に分離を完了した。
Kenvueは、消費者に愛され信頼されるブランドを携え、単独の会社として発展していく
残った本体は、医薬品(Innovative Medicine)と医療機器(MedTech)の二本柱に絞られた。この選択と集中が、2026年の$100B突破の見通しにつながっている。
特許切れの崖を、次の薬で埋める
デュアトが引き継いだ最大の稼ぎ頭、乾癬薬ステラーラは2025年に米国での独占期間を失った。安価な後続薬(バイオシミラー)が次々と参入している。
穴を埋める役目を担うのが、乾癬薬トレムフィアだ。売上は前年比64%伸び、ピーク時$10Bを見込む。多発性骨髄腫薬ダーザレックスなど、がん領域の薬も伸びを支えている。
会社は主力薬1つへの依存を、複数の薬に分散させることで乗り切ろうとしている。この崖をどれだけ滑らかに越えられるかが、デュアト政権の通信簿になる。
3度却下された、ベビーパウダー訴訟の解決策
デュアトが業績と同時に向き合い続けているのが、ベビーパウダー(タルク)にまつわる訴訟である。卵巣がんなどを発症したとする原告は、約9万件にのぼる。
会社は子会社を通じた連邦破産法の活用で、まとめて解決を図ってきた。だが2023年1月、2023年7月、2025年3月31日と、3度にわたり裁判所に退けられている。
直近の提案は$8Bの一括和解案で、対象となる請求者の83%が賛成したとされる。それでも投票手続きに不備があったとして、裁判所は破産申請そのものを退けた。
会社は不正の主張を否定しているが、訴訟そのものはまだ終わっていない。業績が伸びる一方で、この重荷がいつ、いくらで片づくのかは読めないままだ。
この人を通して数字を読むなら
デュアトのやり方は、ジャンセンの営業職から積み上げた、地に足のついた社内昇進型の経営である。派手な発表より、事業の中身を絞り込む決断を重ねてきた。
Kenvueの切り離しも、ステラーラ後継薬への投資も、崖を見越して先に手を打つという同じ姿勢の表れだ。数字だけを見れば、この戦略はいまのところ効いている。
だからJ&Jの株を見るときは、ステラーラを除いた医薬品・医療機器の実力ベースの伸びと、タルク訴訟がどんな形で決着するかの2つを追うとよい。前者はデュアトの経営手腕、後者は会社に残った過去の請求書である。
出典:
- Joaquin Duato, Wikipedia — https://en.wikipedia.org/wiki/Joaquin_Duato
- Johnson & Johnson Announces Kenvue as the Name for Planned New Consumer Health Company — https://www.jnj.com/media-center/press-releases/johnson-johnson-announces-kenvue-as-the-name-for-planned-new-consumer-health-company
- Johnson & Johnson (JNJ) Tops $100 Billion In Annual Revenue For The First Time, Yahoo Finance — https://finance.yahoo.com/healthcare/articles/johnson-johnson-jnj-tops-100-151217818.html
- J&J's third talc bankruptcy settlement attempt denied, Chemistry World — https://www.chemistryworld.com/news/jandjs-third-talc-bankruptcy-settlement-attempt-denied/4021242.article
- J&J logs strong innovative drug sales despite Stelara's decline, Fierce Pharma — https://www.fiercepharma.com/pharma/jj-flexes-15b-quarter-innovative-drugs-biosimilars-continue-chip-away-stelara
- Johnson & Johnson, Form 10-Q (2026年6月28日提出), U.S. Securities and Exchange Commission — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0000200406/000020040626000153/jnj-20260628.htm





