株が全面安になった水曜、原油だけが走った。WTIは6.74%高の$84.60。1日で7%近い上げは、需給の話だけでは起きない。
きっかけは攻撃と報復の応酬だ。サウジアラビアの石油施設への攻撃を受けて、米国とサウジはイラク国内のイラン系武装勢力を空爆した。ホルムズ海峡の通航への影響も続いており、トランプ大統領はさらなる報復を示唆している。世界の原油の約2割が通る海峡の周りで火が広がるたび、原油には「供給が止まるかもしれない」という保険料が上乗せされる。
そこへ需給の数字も重なった。業界統計で米国の原油在庫が約330万バレル減っていたことが伝わり、買いに根拠を与えた。金も2.22%高の$4,126まで買われており、逃げ先を探す資金の動きと同じ方向を向いている。
エネルギーだけが上がった
この日の11セクターで、上昇したのはエネルギー(+0.82%)だけだ。エクソンモービルが2.42%高、シェルが2.48%高、シェブロンが2.28%高。
この3社の買いには、決算の期待も乗っている。エクソンは7月上旬に当局へ出した資料で、原油高が4〜6月期の利益を部門合計で数十億ドル規模で押し上げる見込みだと自ら示した。シェルは木曜の朝に、エクソンとシェブロンは金曜に決算を発表する。原油が$84まで駆け上がった状態で迎える決算は、数字そのものより「この価格が続くならどうなるか」という先の話に注目が集まるだろう。
保険料は消えるのも早い
覚えておきたいのは、地政学で乗った値段は、地政学で降りるということだ。7月前半にもブレントが$100を超える場面があったが、停戦観測が出た途端に1日で4%下げた。攻撃と報復が続く限り原油は高止まりしやすいが、交渉の一報で急落する構造も変わっていない。
株の側から見れば、原油高は2つの顔を持つ。石油会社には利益で、それ以外の会社には燃料費と輸送費のコストで、そして中央銀行にはインフレの再燃として効く。FOMCで3人が利上げを主張した日に原油が7%上がったという組み合わせは、この2つ目と3つ目の顔を市場に思い出させた。
