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Moderna · MRNAプロ経営者

ステファン・バンセル

Stephane Bancel

CEO生年 1972/ フランス・マルセイユ
SB

急落を生き延びた、遺伝子ワクチンのCEO

新型コロナワクチンで会社を急成長させ、その後は株価の9割下落を経験した。いまは費用を削りながら、がんワクチンなど新型コロナ以外の柱を育てる、長い我慢比べの局面にいる。

2026.08.265 分で読める内容確認 2026.10.04

バイオ · ワクチン

裏にいる会社を辿る → 裏に 5 社

経営の型

在任 2011.10〜現在 / 集計 FY2017〜2025・9 期
市況連動型

売上が相場や需要の波 (一時的な特需を含む) で大きく振れる会社を運転している。数字の振れは本人の手腕より外の環境。

この人を通して見る数字。見るのは波の底での手元資金と、好況期に投資をやり過ぎていないか。いまが波のどこかを先に確かめる。

売上の伸び振れ 大
中央値
-37.2%
ブレ
±799.3pp
前年割れ
5 回
利益率振れ 大
営業利益率 平均
-184.8%
ブレ
±277.3pp
資本配分揺れる
設備投資/売上
17.6%

良い・悪いを表す点数ではありません。業界の構造、景気、市況、会社の成熟度も同じ数字に映ります。型は本人の期間の決算から機械的に読んだもの (基準: 成長率のブレ 20pp 以上、売上が前年割れの年 2 回以上)。出典は SEC EDGAR の年次報告。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01検査会社の経営者が、遺伝子の会社を作る
  2. 021つのワクチンで急成長し、同じワクチンで急落した
  3. 03費用を削りながら、賭け続ける
  4. 04Merckと組んだがんワクチンが、流れを変えた
  5. 05この人を通してモデルナを読むなら

2021年、モデルナの株価は $484 を付けた。2025年11月には $22 まで落ちている。2011年からこの会社を率いるCEOは、その両方を自分の目で見た。

数字で読む

創業
2010年CEO就任は2011年
株価のピークからの下落
-67%2026年8月時点($158.83)。2025年11月の安値時点では-95%
2025年の年間売上
$1.9Bピーク時の1割程度
時価総額
$76.7B2026年9月28日
01

検査会社の経営者が、遺伝子の会社を作る

バンセルは1972年、フランス・マルセイユに生まれた。パリ中央理工科大学で工学を修め、米ミネソタ大学で化学工学の修士、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取っている。

最初のキャリアは検査試薬の会社ビオメリューだった。アジア太平洋の営業責任者を経て、その後エーライリリーで6年、製造や供給網の実務を積んでいる。

2007年からはビオメリューの最高経営責任者を5年務め、金融危機下でも時価総額をほぼ2倍にした。

会社そのものは2010年、投資会社フラッグシップ・パイオニアリングのヌーバー・アフェヤンが設立した。バンセルはこの実績を引っさげ、設立翌年の2011年10月に、旗艦投資会社の側からCEOとして送り込まれた。遺伝情報(mRNA)を体に届けて免疫を作らせるという、当時はまだ実用化されていない技術に賭けた。

  1. 1972
    フランス・マルセイユで生まれる
  2. 2007
    ビオメリューのCEOに就任
  3. 2010
    フラッグシップ・パイオニアリングがモデルナを設立
  4. 2011/10
    モデルナのCEOに就任
  5. 2020
    新型コロナワクチンを緊急承認、収益が急拡大
  6. 2021/8
    株価が過去最高値$484を付ける
  7. 2025/11
    株価が52週安値$22台まで下落
  8. 2026/8
    モデルナ・Merckのがんワクチンが好結果、株価が回復
02

1つのワクチンで急成長し、同じワクチンで急落した

新型コロナのワクチンは、モデルナを一夜にして巨大企業に変えた。2021年の年間売上は$18.5Bに達している。

その反動も大きかった。需要が落ち着くとともに売上は急減し、2025年の年間売上は$1.9Bまで縮んでいる。ピーク時のおよそ1割である。

新型コロナ後、売上はここまで縮んだ
2021年(ピーク)$18.5B
2025年$1.9B
ピークの1割程度
年間の総売上。米証券取引委員会に提出された年次報告書の数字

1つの製品への依存がそのまま経営リスクになった5年間だった。バンセルはこの間、研究開発費を削らずに投資を続け、赤字を抱えたまま次の柱を探す道を選んでいる。

03

費用を削りながら、賭け続ける

会社は2025年に年間$2B近くの費用削減を実行した。営業費用は2026年に約$4.9B、2027年には$4.2B〜$4.6Bまで下げ、2028年の資金収支の均衡を目指している。

同時に、同じmRNAの仕組みを使った新製品の開発は止めていない。季節性インフルエンザワクチン、新型コロナの改良版、そしてがんワクチンである。

倹約と投資を同時に進める方針は、設立翌年から会社を率いてきたバンセル自らが指揮を執っているからこそ続けられる面がある。株主にとっては、我慢比べの続く局面でもある。

04

Merckと組んだがんワクチンが、流れを変えた

2026年8月19日、Merckと共同開発する個別化mRNAがんワクチンの発表があった。悪性黒色腫を対象にした後期臨床試験で、主要な目標を達成したという内容だ。

mRNAを使ったがん治療薬として、この規模の後期試験で明確な効果を示した初めての事例とされる。患者ごとの腫瘍の特徴を読み取って作る、個別化ワクチンである。

このニュースを受けて株価は急伸した。新型コロナ後に見えなかった「次の柱」の輪郭が、ようやく数字として現れ始めている。

まだ承認前で、実際の売上に乗るのは先の話だ。それでも新型コロナ単一事業だった収益構造から抜け出す道筋が、初めて具体的に見えた出来事だった。

05

この人を通してモデルナを読むなら

バンセルは、急成長も急落も、2011年から率いてきた会社で経験したCEOである。新型コロナの追い風を最大限に生かし、その反動もまともに受けた。

いま試されているのは、1つの製品に頼らない会社を作れるかどうかだ。費用を削りながらも研究をやめないという、相反する2つを両立させる経営が続いている。

だからモデルナの株を見るときは、季節性ワクチンの積み上げと、がんワクチンをはじめとする新製品の承認の進み具合を見るとよい。2028年の資金収支均衡という約束が守られるかどうかが、次の通信簿になる。

出典:

  • Stéphane Bancel, Flagship Pioneering — https://www.flagshippioneering.com/people/st%C3%A9phane-bancel
  • Stéphane Bancel, The Franklin Institute — https://fi.edu/en/awards/laureates/stephane-bancel
  • Moderna Revenue 2017-2026, MacroTrends — https://www.macrotrends.net/stocks/charts/MRNA/moderna/revenue
  • Moderna - 8 Year Stock Price History, MacroTrends — https://www.macrotrends.net/stocks/charts/MRNA/moderna/stock-price-history
  • Moderna Provides Business and Pipeline Updates at 44th Annual J.P. Morgan Healthcare Conference — https://www.biospace.com/press-releases/moderna-provides-business-and-pipeline-updates-at-44th-annual-j-p-morgan-healthcare-conference
  • Moderna and Merck say mRNA cancer vaccine succeeded in late-stage melanoma trial, STAT News (2026年8月19日) — https://www.statnews.com/2026/08/19/mrna-cancer-vaccine-trial-melanoma-merck-moderna/
  • Moderna, Inc., SEC EDGAR 提出書類一覧 (Form 8-K) — https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001682852&type=8-K
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