半導体は、シリコンの上に回路を光で焼き付けて作る。その焼き付けを担う露光装置で、ASMLは事実上ひとりだけの供給者だ。最先端のものは同社にしか作れず、だからこそ時価総額は$675Bに達している。
月曜、その前提に疑いが差した。中国企業が液浸DUVと呼ばれる露光装置を製造しているという報道が出たのだ。液浸DUVは最先端の一歩手前の技術で、ASMLが長く独占してきた領域にあたる。株価は一時8%を超えて下げ、終値でも5.80%安となった。
冷静に考えれば、報道が事実だとしても、明日からASMLの売上が消えるわけではない。装置一台の性能、歩留まり、量産体制、保守網——実際に置き換わるまでには何年もの距離がある。それでも$40B近い時価総額が一日で消えた。
市場が値付けしていたのは、装置そのものではなかったからだ。「他に選択肢がない」という状態そのものに価格が付いていた。選択肢が一つでも増えるかもしれないと分かった瞬間、その分の価値が引かれる。独占の株価とは、そういう構造をしている。
この日、半導体は装置から後工程まで連れ安した。ラムリサーチ4.46%安、アムコー6.54%安。中国の技術的な追い上げは、一社の問題ではなく、供給網の全域にかかる話として受け止められている。
投資家として持ち帰るべきは、「代わりがいない会社」を評価するときの注意点だ。代わりがいないことは強い。だがその強さは、誰かが代わりになりうると分かった日に、最も速く値を落とす種類の強さでもある。
