火曜の米国株で半導体が総崩れになった。その起点は、前日の月曜に中国で重なった2つの出来事にある。
1つは上場だ。中国のメモリ大手CXMTが上海市場に上場し、初日を466%高で終えた。もう1つは報道で、中国が半導体の回路を焼き付ける露光装置の国産量産を始めたと報じられた。納入先にはCXMTを含む中国の主要メーカーが並び、今年およそ5台、2027年におよそ20台という台数まで具体的に出ている。
この2つは、別々の話ではない。装置を自前で持てるなら、メモリを好きなだけ作れる。上場で調達した資金は、その増産に向かう。市場が読んだのはこの筋書きだった。
さらにこの日は、別方向からの疑いも重なっている。エヌビディアがOpenAIのデータセンター計画に巨額の資金を支援するという報道が出て、チップを売る側が買う側にお金を出しているのなら、需要は身内で回っているだけではないかという見方が広がった。中国が供給を増やすかもしれないという話と、需要そのものが本物かという話が、同じ日にぶつかった。
アジアが先に織り込んだ
火曜のアジア市場は、それを一気に値段に反映させた。韓国ではサムスン電子が約13%、SKハイニックスが約15%下げ、指数は10%を超えて下落して取引が一時止まった。両社にとって約20年ぶりの下落率だった。日本でも半導体の装置メーカーが軒並み1割超下げている。
米国が開く頃には、売りはもう一周していた。だから米国勢に選択の余地は少なかった。マイクロンは8.85%安の$820.53、サンディスクは14.25%安、装置のアプライドマテリアルズは7.82%安。
面白いのは、この日下げた米国企業のほとんどが、自分では何も発表していないことだ。アームの決算は翌日の引け後で、この日は何も出していない。それでも8.11%下げた。マイクロンも同じで、決算も適時開示もなかった。会社の中身ではなく、業界の前提が疑われたときに起きる下げ方だ。
数字はまだ小さい
ただし、報じられた台数は今年5台である。世界の半導体工場が必要とする装置の数からすれば、ごく小さい。2027年に20台まで増えたとしても、既存の供給を置き換える規模ではない。
実際、中国の装置は性能や信頼性でまだ見劣りし、量産と呼べるかは検証が要るという指摘も同時に出ている。
それでも株価がこれだけ動いたのは、独占が崩れる可能性そのものに値段が付いていたからだ。露光装置は長く1社が握ってきた分野で、その前提の上に装置メーカーもメモリメーカーも値付けされてきた。前提が揺れれば、実際の台数が小さくても評価は動く。
答えが出るには時間がかかる。5台が本当に量産と呼べる品質で動くのか、20台に増えるのか、そこから作られたメモリが値段を崩すのか。どれも今日は分からない。分からないまま、市場は先に売った。震源が海外にあり、しかも確認に時間がかかる話であるほど、株価は事実より先に動く。
