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Micron Technology · MUプロ経営者

サンジェイ・メロートラ

Sanjay Mehrotra

会長・CEO生年 1958/ インド・カーンプル

赤字続きの記憶装置屋がAIで化けた

半導体メモリという値崩れの激しい商売を30年以上見てきた技術者。2023年度に過去最大の赤字を出した会社が、AI向け需要でわずか3年後に四半期利益$28Bを叩き出すまでを率いた。

2026.08.264 分で読める

半導体 · メモリ · AI

裏にいる会社を辿る → 裏に 6 社

経営の型

在任 2017.05〜現在 / 集計 FY2018〜2025・8 期 (在任外の 4 期は除外)
市況連動型

売上が相場や需要の波 (一時的な特需を含む) で大きく振れる会社を運転している。数字の振れは本人の手腕より外の環境。

この人を通して見る数字。見るのは波の底での手元資金と、好況期に投資をやり過ぎていないか。いまが波のどこかを先に確かめる。

売上の伸び振れ 大
中央値
+11.0%
ブレ
±36.9pp
前年割れ
3 回
利益率振れ 大
営業利益率 平均
17.9%
ブレ
±24.1pp
資本配分まちまち
設備投資/売上
41.7%
配当を出した年
67%
連続増配
4 年

良い・悪いを表す点数ではありません。業界の構造、景気、市況、会社の成熟度も同じ数字に映ります。型は本人の期間の決算から機械的に読んだもの (基準: 成長率のブレ 20pp 以上、売上が前年割れの年 2 回以上)。出典は SEC EDGAR の年次報告。

この記事の流れ(全5章)
  1. 01インドで生まれ、記憶装置一筋の技術者に
  2. 02AIが飲み込む記憶装置
  3. 03市場混乱を知る経営者の一手
  4. 04好況の裏にある不安
  5. 05この人を通して数字を読むなら

2023 年度、マイクロンは 1 年で $5.8B の赤字を出した。その 3 年後、同じ会社が 1 四半期だけで $28.2B の利益を稼いだ。両方の局面でCEOの椅子に座っていたのが、サンジェイ・メロートラである。

数字で読む

CEO 在任
9年2017 年 5 月に就任
時価総額
$1.05T2026 年 8 月時点
直近四半期売上
$41.5B前年同期比 +346%
直近四半期純利益
$28.2B前年同期は $1.9B
01

インドで生まれ、記憶装置一筋の技術者に

メロートラは 1958 年、インド北部の街カーンプルに生まれた。4 人きょうだいの末っ子で、父の仕事の都合で 10 歳のときニューデリーに移った。

18 歳で単身渡米し、カリフォルニア大学バークレー校に編入。電気工学とコンピューター科学で学士・修士を取った。

その後、半導体メーカー各社で回路設計に携わり、1988 年、仲間とサンディスクを共同創業する。まだ珍しかったフラッシュメモリの会社である。

サンディスクでは技術畑を歩み、2011 年に社長兼CEOに就任。2016 年にウエスタンデジタルに買収されるまでその職にあった。

2017 年、マイクロンの前任CEOデュルカンの退任にともないCEOに指名される。メモリという、価格が数か月で半分にも倍にもなる商売の市場混乱を、30 年以上見てきた技術者だった。

  1. 1958
    インド・カーンプルで生まれる
  2. 1976
    18 歳で渡米、UCバークレーに編入
  3. 1988
    サンディスクを共同創業
  4. 2011
    サンディスク社長兼CEOに就任
  5. 2016
    サンディスクがウエスタンデジタルに買収され退任
  6. 2017
    マイクロンCEOに就任
  7. 2023
    通期で $5.8B の赤字
    メモリ不況、会社史上最大の赤字
  8. 2026年6月
    四半期売上 $41.5B、純利益 $28.2B
    前年同期はそれぞれ $9.3B・$1.9B
  9. 2026年8月
    社長職を新設し経営体制を刷新
    本人はCEOに専念
02

AIが飲み込む記憶装置

マイクロンが作るのは、データを覚えておくための半導体である。パソコンやスマホに載る一般的な記憶装置が長く主力だった。

AIの学習や推論には、計算装置のすぐそばで大量のデータを高速にやり取りする特殊な記憶装置が要る。HBM(広帯域幅メモリ)と呼ばれる製品である。

1年でここまで変わった四半期売上
1年前(2025年5月期第3四半期)$9.3B
直近(2026年5月期第3四半期)$41.5B
1年で4.5倍
いずれも会社発表。2026年5月期第3四半期の実績

粗利率も一変した。1 年前は 37.7%、直近は 84.6%。作るほど利益が出る商品に変わったということである。

この 1 四半期の純利益 $28.2B は、2025 年度通期の利益 $8.5B をはるかに超える。会社の稼ぎ方の桁がまるごと変わった。

03

市場混乱を知る経営者の一手

メモリの商売には長い歴史がある。作りすぎれば値崩れし、各社が赤字に沈む。マイクロンも 2023 年度、$5.8B の赤字でそれを経験したばかりだった。

複数年にわたる戦略的顧客契約が、当社の業績の持続性と予測可能性を大きく高める

— サンジェイ・メロートラ

メロートラが今回力を入れているのは、大口顧客と複数年契約を結び、値崩れの波を和らげる仕組みづくりである。値段より先に、量と期間を約束させる発想だ。

値崩れ商売から抜け出す一手
大口顧客と複数年で契約
数量と価格を先に固定
工場への投資判断がしやすくなる
作りすぎ・作らなすぎを防ぐ
急な値崩れが起きにくくなる
業績の振れ幅を抑える
AI向け記憶装置は設計から量産まで顧客との調整が要るため、この仕組みが機能しやすい

2026 年 8 月 26 日、経営陣も刷新した。事業運営を担う人物とプロダクト開発を担う人物、それぞれに新しく「社長」の肩書を与え、自身は会長・CEOとして戦略に集中する体制にした。

04

好況の裏にある不安

いまの利益はAI向け記憶装置の品薄が支えている。競合のサムスン電子やSKハイニックスも同じ好機を見ており、増産に動けば数年後には供給が積み上がる。

メモリ市場は歴史的に、好況の翌年に深い不況が来る癖がある。メロートラ自身、2023 年度の赤字でその癖を直近に経験したばかりである。

もう一つの懸念は顧客の集中だ。AI向け半導体を作る少数の企業への依存度が高まっており、その企業の投資計画が緩めば売上への影響は大きい。

複数年契約という仕組みは、この波を完全には消せない。あくまで振れ幅を抑える工夫であり、需要そのものが消えることへの備えにはならない。

05

この人を通して数字を読むなら

メロートラは発明家でも夢想家でもない。値崩れの商売を何度も生き延びてきた、地味だが実務に強い経営者である。

だからこの会社の株を見るときは、四半期の利益の大きさそのものより、複数年契約の積み上がりと、競合の増産計画の両方を見るとよい。

いまは記憶装置が足りない側に振れている。振り子がいつ反対側に振れるかは、メロートラ自身が一番よく知っている経営者かもしれない。

出典:

  • Micron Technology, Inc., "Micron Technology, Inc. Reports Record Results for the Third Quarter of Fiscal 2026"(2026年6月24日)— https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/723125/000072312526000013/a2026q3ex991-pressrelease.htm
  • Micron Technology, Inc., Form 8-K(2026年8月26日、経営体制刷新の発表)— https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/723125/000110465926101067/tm2624017d1_8k.htm
  • U.S. Securities and Exchange Commission, XBRL Company Facts(Micron Technology, Inc., NetIncomeLoss)— https://data.sec.gov/api/xbrl/companyconcept/CIK0000723125/us-gaap/NetIncomeLoss.json
  • Wikipedia, "Sanjay Mehrotra" — https://en.wikipedia.org/wiki/Sanjay_Mehrotra
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