水曜の米国株は、指数だけ見るとほとんど動いていない。S&P 500は0.21%高の7,707.98、ナスダックは0.16%高の26,331.09である。
しかし中身はかなり入れ替わった。ヘルスケアが2.21%高となる一方で、情報技術は0.30%安。同じ日に逆を向いている。
きっかけは、一社の発表だった。
モデルナが176.97%高、一日で株価が3倍近くに
モデルナは176.97%高の$174.38で引けた。前日の終値は$62.96である。
一日で3倍近い。大型の医薬品会社としては、めったに起きない動き方だ。
発表されたのは、皮膚がんの一種であるメラノーマ向けワクチンの試験結果だった。
1,137人の試験で、再発までの期間が延びた
試験の名前はINTerpath-001。手術でがんを取り切った後の患者1,137人が参加した。
比べたのは二つの組み合わせだ。メルクの既存薬キイトルーダだけを使う群と、そこにモデルナのワクチンを足す群である。
途中経過を見た独立の委員会が、足した方が再発までの期間を有意に延ばしたと判定した。がんが他の部位へ広がる割合も下がっている。
1人ずつ設計する薬として、初めての成功
このワクチンは、患者ごとに違うものを作る。手術で取ったがんを調べ、その人のがんにだけある目印を狙って設計する。
一人ひとりに合わせて作るこの種の薬が最終段階の試験を通ったのは、これが初めてだ。mRNAを使ったがん治療としても初になる。
なぜ株価がここまで動いたのか。理由は、技術そのものが「効く」と示された点にある。
メルクは12.60%高、同じ技術の会社も買われた
組んで開発したメルクは12.60%高の$152.20となった。
同じmRNAを扱うバイオンテックは21.96%高。遺伝子を編集するインテリアは14.48%高、クリスパーは12.91%高である。
遺伝子を合成するツイストは22.64%高、がんの検査を手がけるテンパスは24.09%高だった。一社の結果が、周辺の会社の見通しまで押し上げている。
半導体は逆に売られ、シーゲイト7.87%安
一方で、これまで買われてきた半導体は売られた。
ラムリサーチは6.33%安、シーゲイトは7.87%安、ウエスタンデジタルは6.87%安である。ブロードコムも4.61%安となった。
指数が動かない日でも、資金は止まっていない。片方を売って片方を買う動きが、この日ははっきり出ている。
30年債の利回りは5.19%へ低下
もう一つ、相場の下地が変わった。30年国債の利回りが0.09下がって5.19%になっている。
財務省が、残存期間の長い国債の買い戻しを1回あたり$2Bから$4B以上へ倍増すると発表したためだ。9月9日から11月4日まで実施される。
前日には30年債の利回りが5.33%を超え、2007年6月以来の高さになっていた。そこに歯止めがかかった形になる。
深掘り
- 指数がほぼ動かない日でも、その裏で業種をまたいだ資金の移動が起きていることがある
- 薬の株価が大きく動くのは、目先の売上ではなく「技術が効くと確かめられたか」で見通しが変わるため
- 長期金利が下がると、遠い将来の利益で評価される会社ほど買われやすくなる
