会社を狙うネット上の攻撃は、景気が良くても悪くても増え続けている。だから企業や政府は、守りへの支出をなかなか削れない。この「攻撃が増えるほど注文が増える」構図が、サイバーセキュリティ株が注目される理由だ。
ただし「サイバーセキュリティ株」とひとくくりにすると、大事な違いが見えなくなる。同じ業界でも、会社によって守る場所がまるで違うからだ。守る場所で整理してみる。
出入口を守る会社
会社のネットワークの出入口に「門番」を置いて、怪しい通信を遮断する会社だ。この門番はファイアウォールと呼ばれ、パロアルトネットワークス (PANW)、フォーティネット (FTNT)、チェック・ポイント (CHKP)が代表格になる。同じ門番でも、パロアルトが防御の仕組みを一式まとめて売る路線なのに対し、フォーティネットは自社設計の専用チップで「同じ値段なら速い」を売りにするなど、性格は分かれる。
門番を会社に据え付けるのではなく、クラウド上の検問所に通信を通して確かめるのがジースケーラー (ZS)だ。クラウドフレア (NET)も攻撃の遮断を看板にするが、サイトの高速配信など守り以外の事業も大きく、純粋なセキュリティ専業ではない。
端末を守る会社
パソコンやサーバーそのものに小さな見張りソフトを入れ、ウイルスや侵入の兆候をAIが見つけて止める会社だ。クラウドストライク (CRWD)とセンチネルワン (S)がこの型で、真正面からぶつかるライバル同士になる。端末の防御を入口に、クラウドの防御や記録の監視といった追加機能を同じ土台に載せて単価を上げていく商売だ。
本人確認を守る会社
システムに入ろうとしているのが本人かどうかを確かめる、いわば「受付」の会社だ。オクタ (OKTA)はログイン時の本人確認を、セイルポイント (SAIL)は「誰がどのデータに触れてよいか」という権限の台帳を担う。地味だが、ここが破られると全部が破られる急所でもある。
弱点を探す会社・データを守る会社
攻撃される前に自社の「穴」を点検して回るのがテナブル (TENB)とクオリス (QLYS)で、点検に加えて24時間の監視代行を請け負うのがラピッドセブン (RPD)だ。バロニス (VRNS)は社内に散らばるファイルを見張り、怪しい持ち出しを見つける。少し毛色が違うのがジェン・デジタル (GEN)で、ノートンやライフロックを個人・家庭向けに売る消費者相手の商売になる。
稼ぎ方はよく似ている
守る場所は違っても、稼ぎ方には共通点がある。多くが年間契約の継続課金で、一度組み込まれると簡単には外せない。守りの仕組みを入れ替えるのは手間もリスクも大きいからだ。この「解約されにくさ」が、業界全体の底堅さを支えている。
例外は機器を売る会社だ。フォーティネットやチェック・ポイントは門番の機器そのものも売るため、顧客の買い替えの波に業績が揺れる。この違いは、次に見る崩れ方の違いにつながる。
崩れ方には型がある
底堅い商売のわりに、株価の値動きは荒い。崩れ方には3つの型がある。
第一に、見通しの引き下げで崩れる。株価に高い成長期待が織り込まれているため、業績が良くても先行きが少し物足りないだけで売られる。パロアルトネットワークスは2024年2月、受注見通しの下方修正だけで1週間に約25%下げた。ジースケーラーも2026年5月、翌年度の控えめな見通しに幹部の退職が重なり、1日で31%下げている。
第二に、守る側が事故を起こすと崩れる。クラウドストライクは2024年7月、自社ソフトの欠陥更新で世界中のパソコンを止めてしまい、株価は事故前から3割超下げた。本人確認のオクタも、過去に自社への侵入が公表されるたびに売られている。守りを売る会社にとって、自社の事故は商品への信用そのものを傷つける。
第三に、買い替えの一巡で崩れる。機器を売るフォーティネットは2025年8月、決算自体は良かったのに「買い替え需要の多くは消化済み」と会社が明かした途端、1日で2割超下げた。継続課金の会社には起きにくい、機器型に固有の崩れ方だ。
銘柄で読み比べる
主要銘柄の顔ぶれはサイバーセキュリティ銘柄のまとめで一覧できる。ライバル同士の性格の違いは、クラウドストライクとパロアルトネットワークス、クラウドストライクとセンチネルワン、フォーティネットとパロアルトネットワークス、ジースケーラーとクラウドフレアの読み比べで並べて確かめられる。数字ではなく崩れ方の癖から銘柄を絞りたいときは、性格で探すも使える。
本記事は仕組みの解説であり、特定の銘柄の購入をすすめるものではない。
